異世界無宿

ゆきねる

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第二十八章 梅雨が明けるまで

第六百七話 今後の方針

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ミレイユ達の事情をある程度把握した所で、イズミはミレイユと精霊に今後の事について相談をする。
少し気が早い気もするが、ザックリとした説明はしておいた方が良いと思ったのだ。

「ではミレイユと…コルンでしたっけ?」

「うん」

「昨日はドタバタしていたので遅れましたが、自己紹介を」

イズミは旅の仲間を1人づつ紹介していくと、今後の旅の予定を話しておく。

「俺達は梅雨が明けたら、ジェヴェドール王国へ向かいます。ベリアが王国の式典に参加する事になっていてね」

「アタイがSランク冒険者になってな、それを国として祝うイベントだな」

「Sランクって、凄い冒険者なんですよね!パパが昔そう言ってた」

Sランク冒険者と言う単語を聞いたミレイユは、まだ疲労が溜まっているだろう身体ながら目を輝かせている。

「それはそれとしてだ、旅をするなら目標とか目的があった方が良い。ベリアは王国で式典に参加、俺は旅先で美味い飯に出会いたい、オリーは」

「アタシはイズミと一緒に旅をしたい」

「と言った感じで、各人目的を持ってるんだ。ミレイユはどうしたい?難しく考えなくて良いぞ、ザックリで」

イズミからの質問にミレイユは少し考えてから答えた。

「私、パンを作りたい。パパとママのパン屋は無くなっちゃったけど」

「いつかはパン屋をやりたい?」

「やりたい!」

ミレイユの言葉は力強かった。

「よし、なら最初に…元気になる事から始めようか」

イズミは手始めにミレイユの体力回復と健康状態の改善を目指すと告げる。
湯浴びをして身体を清潔にして、食事と睡眠をしっかりと取って、身体に蓄積された疲労を可能な限り取り除くのだ。

両親を失った心の傷は自分達には癒せないだろうけれども、身体が元気になったらパン作りも許可すると説明したらミレイユも納得してくれた。

「コルンも食事が必要なら用意しよう。流石に毎回あのクオリティは期待しないで欲しいし、この屋敷にいる時は屋敷の料理も食べて欲しい…グラテミアさん、それでも大丈夫です?」

「勿論ですわ」

コルンの食事も用意出来る確証を得たので、これで梅雨明けまでは何とかなるだろう。
そして次のステップだ。

「将来的にパン屋をやりたいなら、勉強しないといけない事が沢山あるぞ。それも元気になったらやる事になるけど、大丈夫かい?」

「手習いなら、やったことがある」

「上出来だ。だったらもっとハイレベルな問題も用意するとしよう…ちゃんと段階を踏んで用意するから、安心してくれ」

イズミはぼんやりとだが、ミレイユがパン屋を営む為の基礎知識を学ばせる環境を考え始める。
この世界ではどんな知識が必要なのか分かってはいないが、読み書き計算が出来れば取り敢えずは良いとしよう。
そうは言っても、兎に角最初は弱った身体を回復させて元気になる所からだ。
ここを急がせてはならない。

ミレイユの事は一旦オリヴィアと屋敷の従者に任せ、湯浴びの部屋へと移動してゆくのを見送るとイズミは小さくため息をついた。

「イズミさん、ミレイユと言う娘の目は素晴らしい…今にも力尽きかけている精霊の姿が見れて会話も出来るとは、光の協会の実力者の中でも数えられる人しか出来ない芸当です」

「グラテミアさんがそう仰るとは、相当なんですね」

「何かしらのギフトを持っていると考えて良いでしょう…後でミレイユと合意を取って、正式に鑑定をさせて頂きたいですわ」

「先ずは体力回復を優先でお願いしたいのですが」

「分かっております。今後イズミさんと旅をするのであれば、今の内から友好関係を築いておこうかと…例えば旅路で入手困難な素材や食材を確保する代わりに、精霊を見て会話する能力を発揮してもらうとか色々と」

「気が早くないです?」

「いえいえ…イズミさんの事ですから、必ずマスタングさんと協力して規格外の能力や便利な魔道具を供与すると思いますので」

グラテミアはにこやかな笑みを浮かべつつ、今後の事を思案しているイズミを見つめる。

「流石にいきなりドンと渡す事はしませんけど、幾つかの案はあります」

「お聞かせ願えないかしら」

「パンを作るのに便利な道具を渡して使い方まで教えるとか、段階を踏みつつ様々なパンのレシピを覚えてもらうとか、出来れば旅路でもパン作りが円滑に出来る方法も確立したい所ですが…まだ浮かんでません」

「パンだけでは勿体無いですね、普通の料理に加えてケーキや菓子も作れるように教育すべきです。特に菓子は精霊からの評判も良いのですし、食べれば精霊達の活力にもなります。作れて損は何一つありません」

現状でケーキ等のレシピ本はグラテミアの手元にしか無く、菓子担当の料理長がケーキ作りに奮闘している事は知っている。
そのケーキのレシピをミレイユに共有しても良いと示唆しているのは、その方がミレイユの利用価値が高まるからなのかもしれない。

「まだまだ時間はありますし、色々と考えてみますね」

イズミがテーブルへ視線を移すと精霊は姿を消しており、ミレイユ達と一緒に湯浴び部屋へと向かって行ったとグラテミアが教えてくれた。

「そうだ…グラテミアさん、例のブレスレットの納品がそろそろ出来ますので、後でお時間を作って頂きたいのですが」

「分かりました。では明後日の午後にいたしましょう」

納品のアポイントも取り終えテーブルに出していたジャムの瓶を回収しようとした所、屋敷の従者の皆さんからの熱い視線を感じたので振り向いてみる。

「ジャムって需要があるんですかね」

「甘い物には何時だって需要があるものですよ、イズミさん」

イズミは日ごろお世話になっているお礼も兼ねて、ジャムを3種類プレゼントする事にした。
イチゴとブルーベリーとリンゴの3種類で、それぞれ大きめな瓶で5個用意すると、それはそれは大喜びで感謝された。
後でグラテミアが教えてくれたのだが、どうもベリーのジャムはジェヴェドール王国にて今も大ブームらしく、その噂はヒュミトールにも来ているとの事だ。

因みにイズミも把握していなかったが、現在ジェヴェドール王国にて売られているジャムは赤ベリーと青ベリー…イチゴとブルーベリー…の2種類のみらしく、リンゴのジャムは何処で入手したのかとリンゴジャムの虜となった屋敷の従者達から詰められる事になる。
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