異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
27 / 624
第三章 無宿人の宿命

第二十七話 任意の聴取

しおりを挟む
朝の陽射しが部屋に入り込んで来る。
俺は眩しさで目を覚ました。
左に顔を傾けると、目と鼻の先にカレンの寝顔があった。

ベッドの側に寄せていたテーブルから腕時計を取って時間を確認した。

7時を過ぎた所だった。
約10時間は眠っていたのだろう。
カレンはと言うと俺の二の腕を枕にして、左手が俺の右胸の上にある。
少しくすぐったい。

カレンを起こさないようにゆっくりと身体を動かし、ベッドから抜け出して身支度を整える。

部屋を出て宿屋の主人に挨拶をする。
朝食は部屋で取れるらしく、朝食の入った包みを受け取って部屋に戻る。
カレンはまだ眠たそうにしているが、一緒に朝食を取る事にする。

包みを開けるとサンドイッチが入っていた。
マスタングの元へ向かいコーンポタージュを実体化させ、宿屋の主人にお湯を貰った。

「自前のスープかい?良い香りがするね」

宿屋の主人も気になるらしく、コーンポタージュを興味深げに見ていた。

「…主人も飲んでみるかい?」

俺は朝食のお礼がてら1杯渡す事にした。
どんな反応をするのか、見てみたくなったからだ。

コーンポタージュを受け取った主人は一口飲んだ途端、何か考え込み始めた。
俺はそんな宿屋の主人を背にして部屋に戻った。


「ごちそうさまでした」

カレンと一緒に朝食を取り終え、宿屋にもう一泊予約出来ないか相談した。
するとあっさりと契約が出来た。
その後カレンと一緒に町へ繰り出そうとしたら、見知らぬ男が2人がマスタングを吟味するように見ていた。

「物珍しいのは分かるが、人の物をジロジロと見るのは感心しないな」

俺はさり気なく右手をリボルバーに伸ばし、腕を組んで2人を睨む。
カレンも状況を察してか、周囲を確認してくれている。
男2人は俺に敵意があるのかを判断しているのか、腰にある剣に肘を乗せている。

「いや、すまない。ギルドから貴方を探すように頼まれたのだが…情報が異国情緒溢れる服装の男と、馬のいない馬車だったのでね」

冒険者ギルドか…
昨日のオーガ騒ぎで情報収集と言った所か。
俺の服もこっちの世界に沿った物を調達した方が良さそうだな。

「昨日のオーガ騒ぎで、貴方も協力してくれた所までは分かっている」

「ギルドにて詳しい話を聞かせて欲しい」

これは任意なのかそれとも…
俺にも今日やりたい予定がある。
それを崩されるのは、どうも気に食わない。

「私にも予定があってね。時間がかかりそうな話なら、是非夕方にでもお願いしたい」

否定の言葉から始めると印象が悪い。
ここは穏便に話をしつつ、こちらのペースに持っていきたい。
俺達にも予定がある事を告げて、相手の出方を伺う。

「大変申し訳無いが、その予定とやらを後ろ倒しにして、我々と一緒に来てはくれないか」

2人の男は一歩、俺へと踏み込んで来る。
彼等も仕事でわざわざ俺を探しているのだから、さっさと俺を連れて仕事を終わらせたいのだろう。

ギルドに非協力的だと、後々の立ち回りに面倒が起こるリスクがある。
目の前にいる2人に嫌味を言っても仕方がない。

取り敢えず、2人の案内に従う事に決めた。


昨日ぶりの冒険者ギルドだ。
登録を拒否された記憶しか無いので、良い印象を持ってはいないが。

後ろ倒しになった予定をちゃんと終わらせたいので手速く進めたいが、果たして上手く行くだろうか。

「…単刀直入に聞こう。オーガの足に重傷を負わせる攻撃をしたのは、お前だな?」

身のこなしからして剣士崩れの初老に見える男が、俺が小部屋の椅子に座ったの確認して聞いてきた。
回りくどい質問スタイルでは無いのが好印象だ。

「確かに、俺の攻撃だな」

悪い事をした訳では無いので、素直に答えておいた。
ついでに、オーガの状態も聞いておいた。

「彼は冒険者ギルドの登録者なんだ。ここしばらくは体調不良で休んでいたが」

「彼の怪我は魔法で回復はしたが、まだ全快とは言えないな。魔獣化については、まだ原因を特定出来ていない」

銃傷も魔法で回復出来る。
これは良い話を聞いた。
殺すなら頭か心臓を、殺さないならそれ以外を撃てば良いという事だ。
…俺にそんな腕前があれば、の話だが。

「どんな武器を使えばあんな傷を与えられるのか、是非とも教えて頂きたいものだ」

初老の男は俺が剣や弓を持っていないのを確認して、質問を続けた。
銃を見せれば面倒事が増えるのは確実だ。
調査の為に預かるとか言いかねない。

「俺の武器を見せろと?、手品の種を教えるのとは訳が違うぞ。御免だね」

俺は腕を組んで初老の男を睨みつける。
使う事にはならないだろうが、右手はリボルバーのグリップに触れておく。

「俺は何処にも属せぬ旅人だ。自分の身を守る大事な武器の紹介をするなんて…そんな危険な事は出来ない」

魔術師が自分の得意魔法を敵味方問わずベラベラ話さないだろ?
そんな例え話を交えて、銃は見せないような流れを作るように場を持っていく。

「それに…俺はあんたら冒険者ギルド側から、登録を拒否された無宿者だ。」

俺から見た冒険者ギルドの立ち位置をしれっと伝えつつ、明確に断りを入れた。

「あの攻撃は、確かに俺だ。後は自分達で考えな」


初老の男の事はもう無視して小部屋を出ると、近くはカレンとフレイルが居た。
フレイルもギルドに昨日の話をしに来たらしい。

「俺の話は終わったよ」

そう言ってカレンと商店街へと向かう。
背後でざわめきがあったが、俺の目の前に立ち塞がるのなら…それが冒険者ギルドの奴であっても撃つだけだ。
そんな馬鹿な奴らでは無いと信じて、ギルドの建物に別れを告げた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...