異世界無宿

ゆきねる

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第三章 無宿人の宿命

第二十八話 ミグルン町での1日

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カレンと一緒に商店街へと向かうと、昼間だからか様々な種族の人で賑わっている。
この町の喧騒と言うのが割と心地良いと感じるのは、旅の移動中には無い音だからなのかもしれない。

カレンに俺の服を見てもらおうと思いつつ、まずは武器屋に顔を出す事にした。
ナイフのシースを肩がけに調整してもらう為だ。

「よう!何だ昨日今日と」

俺は挨拶はそこそこに、このドワーフの店主に相談を持ち掛けた。

「ナイフを肩からぶら下げたい?」

あまり聞かないオーダーなのだろう。
俺はカレンに店内を見てもらい、奥で店主に細かい話をする。

「どうも腰にナイフがあるのは移動に不便でね」

俺はジャケットを脱いで自分の装備を見せた。
左肩からぶら下げる武器、腰回りや座った時に物が干渉しないセッティングを説明した。

リボルバーの存在を悟られないように隠しつつ、ショルダーホルスターを脱いで店主にナイフを取り付けるイメージを話す。

「なるほど…ナイフを隠し持てるし、この大きさなら剣のようにしなくても実用性はあるのだな」

職人ならではの理解力に感謝しつつ、この処理に対する価格と時間を確認した。

「この程度なら二刻あれば出来るな。銀貨3枚でどうだ?」

変なオーダー対応でその枚数なら、お買い得なのだろうか?
よく分からん。
頷いてカスタムをお願いした。

「縫い合わせる前に、1つ聞いても良いか?」

ドワーフの店主が俺の顔を見ている。
特に昨日と変わった所は無いと思うが…

「その髭は何処で剃ったのだ?」

こっちの世界では小振りなナイフで剃るのが一般的だが、使いこなせる者は少なくて専門店で剃ってもらうのが一般的らしい。
そして、この町に居る職人の腕は微妙らしい。

「人間の髭ならまだしも、ドワーフ族の髭を綺麗に剃れる奴が居なくてな」

俺は宿屋に置いたままの髭剃りを思い出した。
ドワーフ族の髭に対応しているから分からないが、見せてみるのも有りだろう。

「殆どは自分で剃ったんだ。後で見せるよ」

俺は腕時計を確認する。
午後1時…カレンとランチにでも行くか。
そう考えつつジャケットを着て、リボルバーだけズボンに無理矢理ねじ込んだ。

カレンはクロスボウを見ていた。
俺もその横から除くと、魔力を使って連射が可能な物らしい。

「それが欲しいのか?」

俺が横にいた事に気付いていなかったのか、カレンが驚いた声をあげて飛び跳ねた。

「いえ…大きな町に行けば、良い武器が沢山売っていると両親に聞いてましたので」

そう言いつつ値札を見る。
『金貨10枚』
流石に買えないな…

取り敢えず武器屋を出て、昼食を摂る為に商店街へ向かった。
様々な種族が行き交う町だからこそ、エルフ族でも食べられる料理もしっかりと売っていて、容易に食事にありつけた。

昼食を取り終え、次は服を買うために服屋と防具屋を探す。
何ヶ所か覗いてみたが人間サイズの服は少なく、今回はジャケット代わりになりそうなローブだけ購入した。

宿屋に一度戻って髭剃りを銀貨が入っている袋に入れ、再度武器屋に向かった。
武器屋に入るとカスタムが終わっていたらしく、直ぐに奥の部屋へと案内された。

出来上がった物を手に取り、使い心地を確かめる。
簡単な動作を行い身体に干渉しないことを確認して、主人に銀貨を手渡した。

「良い感じだ。身体の動きにも干渉せず、素早い取り出しも出来る」

素直な感想を主人に伝えた。
それと同時に髭剃りを机に置いた。

「これで髭を剃ったんだ」

武器屋の主人が髭剃りを見ている隙に、リボルバーをホルスターに仕舞った。
簡単な使い方を教えると、自分の髭を剃りたいと言う店主に貸した。

「俺は明日にでも町を出るつもりだから、その時に返して貰うとするよ」

武器屋から出て宿屋に向かう途中、どうも誰かしらの視線を感じて何度か周囲を見渡した。
俺には気になる点は無かったが、カレンは違和感をしっかりと認識していた。

「イズミさん、誰かにつけられてます…今分かるのは1人です」

相手に戦意があるなら対応するが、そうでないなら無視しておくとしよう。
特に対応はせずに食料品等を購入してから宿屋に向かった。

「マスタング、お前が怪しいと思う奴が近付いて来たら…お前の判断で轢き殺せ」

マスタングの前を通り過ぎる直前に、小声で命令しておいた。
これで大丈夫だろう。

部屋へと戻って椅子に座ると、一気に疲れが出て来た。
町中を歩くだけでも疲れるな。
カレンも購入していた食料や消耗品を置いて、ベッドに腰を掛けていた。

夕食を取りに部屋を出ると、料理が出来ていると宿屋の人から案内があった。
パンと野菜を茹でたものだった。
スープも付いていたが、コーンスープに見える。

「お客さんから戴いたスープが美味しくてね、自分で作れないかと思ったのさ」

カレンと一緒に食べる。
俺としてはスープならありだが、もう少し食べている感じが欲しいと感じた。
カレンは美味しそうに飲んでいた。

片付けを済ませ、今日の汗を流す事に決めた。
またカレンから先に水浴びをしてもらい、俺は軽く筋トレをしてから銃を構える練習を始める。

今日は全弾撃ち尽くした後のリロードも練習に含め、何度も繰り返す。
スピードローダーを使ってみると、急ぎ過ぎると上手く入らない。
上手く入っても、今度はスピードローダーが外せなかったりした。

「戻りました」

カレンが戻って来たので、練習を切り上げる。

「分かった。俺も疲れてるから水浴びしたら寝ようかな」

俺はホルスターや腕時計を机に置いた。
準備を済ませて部屋の扉へ向かおうとした瞬間、カレンが足を躓き体勢が崩れる。
俺は転ばないように支えに入った。

「あ、ありがとうございます…っ!!」

カレンを支えに入った俺の胸にもたれ掛かる状態だった。
我に返ったカレンが、顔を赤くして離れる。

「疲れてるんだろう。先に休んでくれ」

俺はそう言って部屋を出た。
カレンが大きな溜め息をついた事に、俺は気付いていなかった。

水浴びを済ませて部屋に戻ると、カレンがベッドに座っていた。

「カレン?寝てなかったのか」

俺はホルスターからリボルバーを取り出して、ベッドから取り出しやすい場所に置く。
ベッドに座転がるとカレンが隣に来た。

「どうした?」

俺の声に答える事なく、カレンが密着してきた。
昨日と同じように俺の左腕を枕にして、顔は俺の方を向いている。

カレンの吐息が俺の身体を這う。
くすぐったさで変な声が出そうになるも、そっとカレンの頬を撫でる。
カレンから熱い吐息が溢れた。

「イズミさんの温かさが、とても落ち着くんです」

カレンは俺に抱き着く形で、眠りについてしまった。
俺はカレンに手を出さないように、明日の予定を組み立てつつ眠ろうと努力した。

睡魔は直ぐにはやって来なかった。
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