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第三章 無宿人の宿命
第三十二話 魔族とお茶会
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魔獣の森に身を隠して5日目の事。
俺は洗車しようと思いたち、朝一番でマスタングを洞窟の前へ出して、川の水を汲んでは流して布で拭いてを繰り返していた。
洗車をしつつ今後の旅路や戦闘の事を考える。
武器のレパートリーが少ないと、戦闘の幅が狭まってしまう。
今の装備は肩からぶら下げたリボルバーと、近距離用のソードオフショットガン。
そしてメインのショットガンだ。
ライフルも実体化させたが、現在はマスタングが何処かに保管しているのか実体は手元には無い。
原理は分からん。
「なあマスタング、今後はどんな装備を準備しておいた方が良いと思うか?」
実体化には俺の魔力を消費する。
ならば身を隠している今のうちに、色々と準備をしておくのが利口だと思ったのだ。
マスタングからの返事が来た。
「ライフルやマシンガンのデータがあります」
モニターをご確認下さい。との事で早速確認をする。
見覚えのある銃が映し出されていた。
ライフルはレバーアクション式が映っていた。
使うのは44マグナム弾、肩からぶら下げているリボルバーと同じ弾だ。
マシンガンは筋肉モリモリマッチョマンがカカシ共から奪って腰だめで撃ちまくっていたアレだ。
「これは便利かもしれません」
映し出されたのは単発式のグレネードランチャーとガトリングガンだ。
「グレネードは便利そうだが…ガトリングガンは使い道あるのか?」
ガトリングガン以外の銃の実体化処理ボタンを押しつつ聞く。
「マスターからの情報に、ヘッドライト部からガトリングガンを出して銃撃を行う車がありました」
…あの有名映画の諜報部員が愛する車か。
ならばバックファイヤーとかも出来そうだな。
その前に、そんな特殊な機能が備えられるのか?
「実体化には相当量の魔力を消費しますが可能です」
一度でも実体化処理を行えば、次からの魔力の消費は弾だけになるらしい。
マスタング単体での攻撃手段があるのも良いだろう。
相手を轢くだけでは不便だしな。
俺はカレンに一言声をかける。
「カレン、マスタングに魔力を使わせるから暫く動けなくなる」
カレンの返事が聞こえたので、実体化処理を頼んだ。
気がついた時、太陽が真上にいた。
実体化処理は正常に完了しました、とモニターに表示されていたので確認する。
バックファイヤーまで追加されていた。
俺は無性に腹が減っているのを感じた。
実体化で魔力を大量に消費したからかもしれない。
車から降りてカレンが作ってくれた鍋料理を食べると、自然と力が漲ってきた。
「ごちそうさまでした。カレンのお陰で元気になったよ」
俺はカレンにお礼を言ってから、マスタングを洞窟の奥へ駐車した。
午後はカレンがクロスボウの練習をしたいと言うので、俺が焚火の番をする。
焚火を眺めていたら、元いた世界で見ていたキャンプ動画を思い出した。
肉を焼いたり米を炊いたり、その音を楽しんでいたな…
そんな記憶を懐かしんでいたら、マスタングから連絡が入ってきた。
「警告、強力な魔力を持った個体が接近中です」
俺はすぐに詳細な情報を入手する為、魔法での探知を依頼した。
「…1時方向上空より接近中、現在の速度で通過まで5分です」
カレンに魔法通信をして、至急洞窟まで戻って来てもらう。
「イズミさん…物凄い魔力を持った者が来てます。敵意は無さそうですが」
この森に住んでいる魔族が、マスタングへの魔力を注ぎ込んだ際の魔力反応を調べに来ているのでは?
カレンが説明してくれた。
俺は臨戦態勢を取るべきか悩んだが、カレンはクロスボウを置いてコーヒーを淹れ始めたので、俺もリボルバーを仕舞ってコーヒーを飲む事に決めた。
洞窟入口で空を見ていたら、大きな羽根を生やした何者かが急降下して来た。
少し離れた所に降り立ったので、まずは観察する事にした。
背の低めな女性だった。
肌は健康的な白さで髪は赤い。
羽根は生えていたが、地面に降り立ってから消えてしまっている。
服装は高そうな黒のロングドレスだ。
「あら、こんな所にダークエルフ族と人間族のお二人ですか」
ぽわぽわしていると言うか、どこか間延びしたような声が聞こえた。
「この辺りで大きな魔法反応があったのですが、お二人に関係していると言う認識で間違い無いでしょうか?」
俺は素直に頷いた。
今の所、嘘をつく理由は無いからな。
「そうだ。車に魔力を注ぎ込んだのでね」
そう答えて目の前の女性に、洞窟の奥に佇むマスタングの存在を教えた。
マスタングはフォグランプを点灯して合図を返してくれた。
そうなのですね。
そう言って目の前の女性は、俺達と車を確認した。
俺達の説明に偽りが無いと判断したのだろうか、表情が柔らかくなったように見える。
「申し遅れました。私、魔獣の森の管理をしております、ルノと申します」
ルノさんは原初魔族と呼ばれるこの世界に生まれた最初期の種族であり、魔法や文明の基礎を亜人族や人間族に授けた、偉大な種族の出身らしい。
原初魔族の子孫とか、そういった類いなのだろうか?
「その考え方は少し違いますね。私は原初魔族そのものと言って問題ありません」
…俺の考えが読まれているようだ。
コーヒーを淹れ終えたカレンが焚火の元へ、ルノさんを招いてコーヒーを渡してくれた。
コーヒーを飲み雑談をするルノさんとカレンを尻目に、俺はアーリアに魔法通信を繫いだ。
「アーリア…今、大丈夫か?」
アーリアに今の状況を説明すると、地を這うような低い声が返って来た。
「丁重なおもてなしをしなさい」
原初魔族の方と話せるだけでも非常に光栄な事らしく、無礼な真似をして一晩で国が滅ぼされた事もあるそうだ。
「分かった。誠心誠意の対応を心がけるよ」
胃でも痛めそうなアーリアと魔法通信を切り、カレン達の居る焚火の前に座った。
カレンの淹れたコーヒーが気に入ったようで、ルノさんはご機嫌で話を聞いていた。
どうやら今はミグルン町での話で盛り上がっていたらしい。
「魔獣化したオーガの足止めをしたのですね」
ルノさんが俺の方を向いて、笑みを浮かべている。
俺はそのルノさんの目に、良い知れぬ恐怖のような物を感じた。
「貴方、転移者なのね」
俺は返事に詰まってしまった。
ルノさんには、話してもいないのに素性がバレているのだ。
「転移者は過去に何人かいたので分かります」
そのほとんどが魔獣に食べられたり亜人族のテリトリーに入って殺されたりと、一週間も経たずに死んでいるらしいが。
俺はカレンから渡されたコーヒーを飲んだ。
苦味が強く酸味は控えめだ。
このコーヒーに合う、ちょっとしか甘味が欲しい。
マスタングに頼んで、過去に実体化させたクッキーを出してもらった。
「コーヒーだけでは少し物足りないでしょう」
俺のいた世界のお菓子と説明して、カレンはとルノさんに渡した。
まずは俺が食べる…サクサクで程良い甘さが身に沁みる。
それを見た二人も口にする。
様子を見る限り、お気に召したようだ。
「このクッキーの出来は素晴らしいですね」
こっちの世界にあるクッキーは今の所、甘過ぎるだけの物らしい。
最初に行った村のエルフ達もそう言っていたな。
そんな他愛のない話をしつつ、突然開かれたお茶会は終わりを迎えた。
「魔法反応については把握出来ましたので、私はこれで失礼しますね」
ルノさんはコーヒーとクッキーのお礼を言って飛び去ろうとしたので、俺は咄嗟に引き止めた。
アーリアから言われたら台詞…
おもてなし、光栄な事、それらを加味して贈り物の1つはしておかねばならないと思ったからだ。
「ルノさん、お酒は飲めますか?」
ルノさんに確認をした。
頷いたので、俺が好きで飲んでいた酒を実体化させようとマスタングに向かう。
俺は甘くて度数のある酒をイメージした。
バニラと果物の香りがして、口に含むとそこまで甘ったるくない。
海賊の絵が描かれているラム酒だ。
マスタングから実体化されたと言われたので、トランクを開けた。
独特なボトルデザインの酒が鎮座していた。
俺も飲みたい気分だが、何かあってマスタングを走らせる可能性があるので止めておく。
「御足労おかけしまして」
ルノさんにラム酒を一瓶渡した。
受け取ったルノさんは、まじまじと瓶を観察してから何処かへ収納した。
俺は羽根を出して飛び去るルノさんを見送ると、緊張が解けたのか膝から崩れ落ちてしまった。
俺は洗車しようと思いたち、朝一番でマスタングを洞窟の前へ出して、川の水を汲んでは流して布で拭いてを繰り返していた。
洗車をしつつ今後の旅路や戦闘の事を考える。
武器のレパートリーが少ないと、戦闘の幅が狭まってしまう。
今の装備は肩からぶら下げたリボルバーと、近距離用のソードオフショットガン。
そしてメインのショットガンだ。
ライフルも実体化させたが、現在はマスタングが何処かに保管しているのか実体は手元には無い。
原理は分からん。
「なあマスタング、今後はどんな装備を準備しておいた方が良いと思うか?」
実体化には俺の魔力を消費する。
ならば身を隠している今のうちに、色々と準備をしておくのが利口だと思ったのだ。
マスタングからの返事が来た。
「ライフルやマシンガンのデータがあります」
モニターをご確認下さい。との事で早速確認をする。
見覚えのある銃が映し出されていた。
ライフルはレバーアクション式が映っていた。
使うのは44マグナム弾、肩からぶら下げているリボルバーと同じ弾だ。
マシンガンは筋肉モリモリマッチョマンがカカシ共から奪って腰だめで撃ちまくっていたアレだ。
「これは便利かもしれません」
映し出されたのは単発式のグレネードランチャーとガトリングガンだ。
「グレネードは便利そうだが…ガトリングガンは使い道あるのか?」
ガトリングガン以外の銃の実体化処理ボタンを押しつつ聞く。
「マスターからの情報に、ヘッドライト部からガトリングガンを出して銃撃を行う車がありました」
…あの有名映画の諜報部員が愛する車か。
ならばバックファイヤーとかも出来そうだな。
その前に、そんな特殊な機能が備えられるのか?
「実体化には相当量の魔力を消費しますが可能です」
一度でも実体化処理を行えば、次からの魔力の消費は弾だけになるらしい。
マスタング単体での攻撃手段があるのも良いだろう。
相手を轢くだけでは不便だしな。
俺はカレンに一言声をかける。
「カレン、マスタングに魔力を使わせるから暫く動けなくなる」
カレンの返事が聞こえたので、実体化処理を頼んだ。
気がついた時、太陽が真上にいた。
実体化処理は正常に完了しました、とモニターに表示されていたので確認する。
バックファイヤーまで追加されていた。
俺は無性に腹が減っているのを感じた。
実体化で魔力を大量に消費したからかもしれない。
車から降りてカレンが作ってくれた鍋料理を食べると、自然と力が漲ってきた。
「ごちそうさまでした。カレンのお陰で元気になったよ」
俺はカレンにお礼を言ってから、マスタングを洞窟の奥へ駐車した。
午後はカレンがクロスボウの練習をしたいと言うので、俺が焚火の番をする。
焚火を眺めていたら、元いた世界で見ていたキャンプ動画を思い出した。
肉を焼いたり米を炊いたり、その音を楽しんでいたな…
そんな記憶を懐かしんでいたら、マスタングから連絡が入ってきた。
「警告、強力な魔力を持った個体が接近中です」
俺はすぐに詳細な情報を入手する為、魔法での探知を依頼した。
「…1時方向上空より接近中、現在の速度で通過まで5分です」
カレンに魔法通信をして、至急洞窟まで戻って来てもらう。
「イズミさん…物凄い魔力を持った者が来てます。敵意は無さそうですが」
この森に住んでいる魔族が、マスタングへの魔力を注ぎ込んだ際の魔力反応を調べに来ているのでは?
カレンが説明してくれた。
俺は臨戦態勢を取るべきか悩んだが、カレンはクロスボウを置いてコーヒーを淹れ始めたので、俺もリボルバーを仕舞ってコーヒーを飲む事に決めた。
洞窟入口で空を見ていたら、大きな羽根を生やした何者かが急降下して来た。
少し離れた所に降り立ったので、まずは観察する事にした。
背の低めな女性だった。
肌は健康的な白さで髪は赤い。
羽根は生えていたが、地面に降り立ってから消えてしまっている。
服装は高そうな黒のロングドレスだ。
「あら、こんな所にダークエルフ族と人間族のお二人ですか」
ぽわぽわしていると言うか、どこか間延びしたような声が聞こえた。
「この辺りで大きな魔法反応があったのですが、お二人に関係していると言う認識で間違い無いでしょうか?」
俺は素直に頷いた。
今の所、嘘をつく理由は無いからな。
「そうだ。車に魔力を注ぎ込んだのでね」
そう答えて目の前の女性に、洞窟の奥に佇むマスタングの存在を教えた。
マスタングはフォグランプを点灯して合図を返してくれた。
そうなのですね。
そう言って目の前の女性は、俺達と車を確認した。
俺達の説明に偽りが無いと判断したのだろうか、表情が柔らかくなったように見える。
「申し遅れました。私、魔獣の森の管理をしております、ルノと申します」
ルノさんは原初魔族と呼ばれるこの世界に生まれた最初期の種族であり、魔法や文明の基礎を亜人族や人間族に授けた、偉大な種族の出身らしい。
原初魔族の子孫とか、そういった類いなのだろうか?
「その考え方は少し違いますね。私は原初魔族そのものと言って問題ありません」
…俺の考えが読まれているようだ。
コーヒーを淹れ終えたカレンが焚火の元へ、ルノさんを招いてコーヒーを渡してくれた。
コーヒーを飲み雑談をするルノさんとカレンを尻目に、俺はアーリアに魔法通信を繫いだ。
「アーリア…今、大丈夫か?」
アーリアに今の状況を説明すると、地を這うような低い声が返って来た。
「丁重なおもてなしをしなさい」
原初魔族の方と話せるだけでも非常に光栄な事らしく、無礼な真似をして一晩で国が滅ぼされた事もあるそうだ。
「分かった。誠心誠意の対応を心がけるよ」
胃でも痛めそうなアーリアと魔法通信を切り、カレン達の居る焚火の前に座った。
カレンの淹れたコーヒーが気に入ったようで、ルノさんはご機嫌で話を聞いていた。
どうやら今はミグルン町での話で盛り上がっていたらしい。
「魔獣化したオーガの足止めをしたのですね」
ルノさんが俺の方を向いて、笑みを浮かべている。
俺はそのルノさんの目に、良い知れぬ恐怖のような物を感じた。
「貴方、転移者なのね」
俺は返事に詰まってしまった。
ルノさんには、話してもいないのに素性がバレているのだ。
「転移者は過去に何人かいたので分かります」
そのほとんどが魔獣に食べられたり亜人族のテリトリーに入って殺されたりと、一週間も経たずに死んでいるらしいが。
俺はカレンから渡されたコーヒーを飲んだ。
苦味が強く酸味は控えめだ。
このコーヒーに合う、ちょっとしか甘味が欲しい。
マスタングに頼んで、過去に実体化させたクッキーを出してもらった。
「コーヒーだけでは少し物足りないでしょう」
俺のいた世界のお菓子と説明して、カレンはとルノさんに渡した。
まずは俺が食べる…サクサクで程良い甘さが身に沁みる。
それを見た二人も口にする。
様子を見る限り、お気に召したようだ。
「このクッキーの出来は素晴らしいですね」
こっちの世界にあるクッキーは今の所、甘過ぎるだけの物らしい。
最初に行った村のエルフ達もそう言っていたな。
そんな他愛のない話をしつつ、突然開かれたお茶会は終わりを迎えた。
「魔法反応については把握出来ましたので、私はこれで失礼しますね」
ルノさんはコーヒーとクッキーのお礼を言って飛び去ろうとしたので、俺は咄嗟に引き止めた。
アーリアから言われたら台詞…
おもてなし、光栄な事、それらを加味して贈り物の1つはしておかねばならないと思ったからだ。
「ルノさん、お酒は飲めますか?」
ルノさんに確認をした。
頷いたので、俺が好きで飲んでいた酒を実体化させようとマスタングに向かう。
俺は甘くて度数のある酒をイメージした。
バニラと果物の香りがして、口に含むとそこまで甘ったるくない。
海賊の絵が描かれているラム酒だ。
マスタングから実体化されたと言われたので、トランクを開けた。
独特なボトルデザインの酒が鎮座していた。
俺も飲みたい気分だが、何かあってマスタングを走らせる可能性があるので止めておく。
「御足労おかけしまして」
ルノさんにラム酒を一瓶渡した。
受け取ったルノさんは、まじまじと瓶を観察してから何処かへ収納した。
俺は羽根を出して飛び去るルノさんを見送ると、緊張が解けたのか膝から崩れ落ちてしまった。
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