異世界無宿

ゆきねる

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第三章 無宿人の宿命

第三十三話 旅の再開

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原初魔族のルノさんが飛び去ってから約1時間、なんとも言えない脱力感が俺の身体を包んでいた。
カレンが夕御飯を作ってくれていたらしく、鍋の煮立つ音が耳に心地良い。

俺はミグルン町にいるフレイルに魔法通信を繫いだ。
町での一件がどうなっているのかを聞く為だ。

「魔獣化の原因は、帝国が作った薬の可能性が濃厚と報告が出ている」

帝国が兵士達の戦意高揚の為に生み出したと言う薬があるらしく、それを過去に接種していた結果オーガは魔獣化して暴走に至った。

これがオーガ騒ぎの報告だった。
俺に攻撃を仕掛けて来た連中については、ギルドをクビになった奴等が俺を捕まえて手柄にしようと目論んでの犯行として処理されたそうだ。

「分かった。色々とありがとう」

俺は魔法通信を切ってからカレンのいる焚火まで向かう。

「カレン。明日、森を出発でもするか?」

そろそろ大丈夫だろうと判断し、カレンの故郷へ行こうと思ったのだ。

カレンと一緒にマスタングに乗り込み、カレンの故郷を探してもらう。
この洞窟からだと、馬車での移動換算で約1ヶ月半程かかるらしい。

道中の町や村で補給をしつつの旅路になる。
そこで、ふと金を稼ぐ方法を持っていない事を思い出した。

手持ちの金は、襲撃して奪ったものだからな…
俺達は賊では無いのだから、しっかりとクリーンに金を稼ぐ必要がある。

そろそろ心許無いしな…
マスタングの能力は隠しておきたいし、冒険者ギルドのような仕事をするのは波風が立ちそうだ。

賞金稼ぎとか用心棒とか、そんな稼ぎ方しか思い浮かばなかった。
行き当たりばったりで旅をするのが性に合っているのかもしれない。

そう自分に言い聞かせて、カレンに話を投げた。

「商人や貴族の護衛とかであれば、冒険者ギルドでなくても仕事の依頼はありますよ?」

…最初からカレンに相談すれば良かった。


翌朝、俺はカレンが起きる前にマスタングを洞窟から出してやり、焚火を準備した。
昨日の鍋を温めつつ、マスタングの新機能を確認しておく。

「マスタング、特殊な機能の調子を見ておきたい」

そう言うとマスタングは返事をしてくれた。

「マスター、モニターをご確認下さい」

言われた通りに車内に乗り込みモニターを確認すると、コンソールボックス内にトグルスイッチが追加されたと表示されていた。

開いてみるとスイッチが2個付いている。
右側のスイッチ下には「Gun」、左側には「Fire」と書いてある。
スイッチが奥に倒れていると安全状態で、手前に倒すと攻撃可能状態になるようだ。
手動で攻撃をする際は各トグルスイッチに対応したボタンを押し続けている間は連続で攻撃が可能らしい。

試しにスイッチを中央に切り替えて車外に出て様子を見ると、内側の丸目ヘッドライトがあった所からガトリングガンが飛び出していた。
勿論、その原理は分からない。
トランク側を見ると、特徴的なマークのあった場所から火炎放射器のノズルが出ていた。
質量保存の法則は適応外なのだろうか?

「自動操縦の際の攻撃は可能なのか?」

マスタングからの回答は『可能』だった。
本当に心強い相棒だ。

カレンが起きてきたので武器スイッチを安全状態に戻し、一緒に朝食を取って出発の準備を始める。
焚火をしていた場所をしっかりと現状回復して、使えそうな炭はカレンが布袋に仕舞った。

「じゃ、出発しますか」

マスタングのナビにはカレンの故郷までの間にある、食料等を補給出来る町から小さな集落までピンが刺さっていた。
その中から、今回は1番近い場所を目的地に設定した。

「目的地をロウガ村に設定しました」

ロウガ村はこじんまりとした農村らしい。
取り敢えずは昼過ぎに到着出来るように、移動速度を計算しつつまったり走る事にした。
そんなに急ぐ必要もない旅だ。


腕時計を確認すると、午後の1時間半を過ぎた所だった。

ロウガ村は寂れた農村と言っても良いだろう村だった。
掘っ立て小屋と牛と馬の小屋、残りは畑と言った具合だ。

村の入口付近に駐車して、近くを軽く散策する。
小さな村でも宿屋を兼業で営んでいたりすると、カレンから聞いていたからだ。

カレンが宿屋と書いてある小屋を見つけてくれたので、早速扉を叩いてみた。
遠くから声が聞こえ、次第に足音が近付いて来た。

「おやおや、宿泊かい?」

一泊と水や食料を頼んだ所すんなりと話が通ったので、冒険者や商人も同じようなスタイルで旅をしているのだろう。

俺は銀貨を3枚渡してから、マスタングを宿屋の隣に持って来た。
案内された部屋は簡素な作りであったが、ベッドや武器掛けが置いてあった。

近くにあると説明された井戸に水を汲みに向かう途中で、聞き慣れない動物の声を耳にした。

「カレン。今の声は動物か?」

カレンは声のした方角を見つめている。

「これは…凶暴化した魔獣ですね」

魔獣にも大きく分けて二種類存在しているそうだ。
意思疎通が可能か否か、らしい。
通常の魔獣であれば意思疎通が出来て、農作物を荒らさないで欲しいとか此処の作物は食べても良いとか、共生が出来るそうだ。

意思疎通が出来ない魔獣は魔力が暴走して制御が効かない為、魔族でもエルフ族でも平和的な対処が出来ないのだと言う。

俺はマスタングからレバーアクション式のライフルを取り出して、声のした方へと歩いて行く。
そこでは村人達が魔獣を追い払おうと奮闘していた。

村人達に声をかけた。
すると、村の偉い人だろう方が手を振ってくれた。

「魔獣が出たのか」

俺はライフルを肩にかけて話しかける。

「そうだ。最近は大事な農作物を狙ってきて困っておるのだ」

凶暴化した魔獣は人間も亜人もエルフも関係なく襲うらしく、どの町でも村であっても悩みの種になっているそうだ。

俺は一度カレンの方を見る。
カレンは凶暴化した魔獣を見つめ、静かに首を振った。
意思疎通は叶わなかったのだ。

目の前の男に確認を取る。

「凶暴化した魔獣は、あの一匹だけか?」

男は頷いた。
確認出来ている魔獣は、今いる一匹だけのようだ。

「魔獣の駆除はギルドに頼んでいるのだが、一匹や二匹程度では大した稼ぎにならなくてな」

聞くと魔獣駆除の仕事は何処にでもあるようだが、ギルドのある町から移動して狩るとなると、割に合わないのだと言う。

相場は一匹当たりで、おおよそ銀貨2枚。
大型の魔獣であれば、もっと報酬は上がるそうだ。

凶暴化した魔獣の狩人…これは旅の肩書になるような気がした。
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