異世界無宿

ゆきねる

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第十二章 辺境伯領にて

第百五十四話 Sランク冒険者

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アレクセイが執務に戻る関係で話は一旦終わり、イズミ達はエレナの案内で敷地内を歩いていた。

町の少年達が木製の剣を持ち、教官だろう男から扱い方を学んでいる。
その教官の隣にいたもう一人の男が、エレナに気付いて駆け寄ってきた。

「エレナ様、体調はよろしいのですか?」

「大丈夫よゾルダ…紹介するわ。彼がイズミで、彼女がベリアよ」

エレナの仲介で挨拶をする。
ゾルダと呼ばれた男は、細身の長身で短く揃えた銀髪が渋く、目には戦士特有の鋭さがあった。

「ゾルダはSランク冒険者なの」

「…銀狼の騎士の再来とまで言われた、あの冒険者ですか!?」

ベリアが驚いた表情で声を上げた。
かなりの有名人なのかもしれない。

「銀狼の騎士とは縁もゆかりも無いですのですが、魔法適性がほぼ一緒なのでその様な通り名なのです…生まれがこの地でして、今は里帰りみたいなものです」

ゾルダがそう言いつつ、エレナに小声で何かを話している。

「あの…ゾルダがイズミさんと手合わせをしてみたいと言うのですが」

申し訳無さそうにエレナが伝えてきたので、イズミは少し考え込んだ。

「私は冒険者ではありませんし、そんな実力もありませんよ」

「サイクロプスを一緒に討伐した『暁と盃』の話をギルドで聞きました。是非とも一度手合わせ願いたい」

ゾルダが頭を下げて頼み込んで来たので、マスタングに相談して訓練用の非殺傷マグナム弾を実体化させた。

「マスター。非殺傷でもかなり痛いので、事前に伝えておいて下さい…それと、エレナ様の体調も確認したいです」

「ありがとう。ゾルダとの手合わせが終わったら、連れてくるよ」


イズミが準備を済ませると、ゾルダが相棒だろう男と少年達に声をかけた。

「みんな、これからほぼ実戦に近い戦いを見てもらう」

ゾルダが右手を上げると、空間から木剣が出て来た。
その木剣を腰に下げると、イズミを呼んだ。

「彼は旅人だが、かなり特殊な戦い方をして大型の魔物だって倒せるんだ。見ていて損は無いぞ」

そう言ってゾルダは距離を取った。
イズミは上着のボタンを外して、マグナムを抜けるようにする。

「ゾルダ。かなり痛いかもしれないが、当たったとしても後で怒らないでくれよ」

「私に1発でも当てられたら、大したものだよ」

ゾルダが体勢を少しだけ低くして木剣を構えた瞬間、イズミの右手が閃いてショルダーホルスターからマグナムを抜いた。
後ろ飛びをしてゾルダから距離を取るような状態から、1発目を撃ち込んだ。

ドゥ!
バキッ!

ゾルダは木剣で1発目を弾いたが、マグナム弾の威力に打ち負けて折れてしまった。
弾は弾道がズレて地面に着弾する。

「っ!」

ゾルダが素早く2本目の木剣を出すも、体勢を整えられる前にイズミが2発目を撃った。

これは木剣でも捌ききれず右肩に命中した。
それでも膝をつく事は無かったので、戦意はあると判断してすぐさま3発目を撃つ。

訓練であっても実戦であっても、油断はしない容赦はしない。
これがイズミの戦闘に関するルールとなりつつあった。

3発目は木剣で防がれたが、やはり折れてしまった。

「ふん!」

ゾルダは無詠唱で素早く氷魔法を使い剣と盾を作った。
木剣は品切れなのだろう。

接近戦に持ち込まれると勝ち目は無いので、残りの3発を連射した。

弾は氷の盾へ吸い込まれるように命中し、2発目で盾を割って貫通し威力の低下した弾がゾルダの腹部に当たる。

最後の1発は氷の剣で完全に防がれてしまった。
氷の剣に風魔法を纏わせたのか、弾が変な軌道を描いて地面に落ちた。

イズミは素早く弾込めをしたが、ゾルダの相棒だろう男が止めに入って来た。

「そこまで!…これは、イズミの勝ちだ」

「これが実戦だったら、私は重傷か死亡だな」

痛みに耐えつつゾルダが立ち上がると、少年達に向かって言った。

「Sランク冒険者であっても、一瞬の油断や判断ミスで負傷し、戦いに負けるのだ。それを覚えておいて欲しい…くぅ~、中々に痛いぞ!」

「だから怒らないでくれって言ったろ!」

イズミがそう返すと、少年の1人がゾルダに小瓶を手渡した。

「ありがとう…久し振りにポーションを飲んだが、美味しいとは言えないな」

イズミはゾルダの戦闘スタイルが気になったので、近くに来たベリアと一緒に話を聞いてみる事にした。

「ゾルダ。戦闘に関して色々聞きたい事があるのだが、大丈夫か?」

ゾルダは飲み終えたポーションの小瓶を少年の1人に渡してから、イズミ達へ向き直った。
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