157 / 625
第十二章 辺境伯領にて
第百五十三話 辺境伯の屋敷にて
しおりを挟む
まず敷地内に入ったイズミは、マスタングを停める駐車場へと案内された。
屋敷本館の隣にある、屋根のある大きな馬車置場だった。
マスタングから降りる際、念の為に周囲の警戒を頼んでおいた。
メイドの案内で屋敷本館へと入ると、アレクセイが階段を下ってきた所だった。
「イズミ殿。ようこそ私の屋敷へ」
「ご招待戴きまして、誠にありがとう御座います」
イズミは思いつく限りの挨拶をしてから、広い部屋へと入って行った。
「エレナは魔法の勉強をしてましてね…どうぞこちらへ」
大きな窓から町並みが見える部屋で、イズミ達は質の良い椅子に腰を下ろす。
「王都では本当にありがとう。まさか娘と砂浜を歩ける日が来るとは」
「それはエレナさんの努力の賜物です」
アレクセイとイズミの話がイマイチ分かっていないベリアだが、緊張していても笑顔が張り付いていたので大丈夫だろう。
「…それでだ。イズミの耳に入れておくべき話がある」
アレクセイがメイド達を部屋から出るように指示を出す。
扉が閉まったのを確認してから、話を再開した。
「エレナが歩けるようになった事で、思わぬ事態が発生したのだ」
まずは貴族としてのイザコザである。
エレナは下半身不随だったので、貴族間での競争にも似た争い事は無縁であった。
しかし、歩けるようになれば話が変わる。
社交会にも参加出来るし、結婚話だって持ち上がる。
エレナ個人はリハビリ中なのでまだそこまで考えてもいないらしいが、アレクセイの元には既に話が来ているそうだ。
「王家もイズミの存在を認知している」
「…第三王子と会いましたよ。第三王子としては、特に動きはしないみたいです」
イズミがこの領内で第三王子に会った事を伝えると、アレクセイは苦笑いを浮かべていた。
「4ヶ月後に行われる王家主催のパーティーに、私とエレナが招待された」
ため息をついたアレクセイに対して、イズミは目を細めた。
「王家主催のパーティーか…結婚話や派閥争いとかありそうですな」
「エレナの魔法適性も影響してな、第四王子の妻候補にエレナが急浮上したのだ」
「…あぁ。嫌がらせと言うか、妨害工作とかはありそう」
マスタングの実験的な意味合いもあったが、イズミが魔法適性追加を実行させた事もあり、ろくな返事が出来なかった。
気の重くなる話をしていたら、扉をノックする音が響いた。
「主様、エレナお嬢様です」
従者が扉を開けると、エレナが部屋へ入って来た。
「魔法の練習はどうだい?」
「まだ慣れませんね。やっとグラス1つ分の水を凍らせる事が出来ました」
アレクセイの質問にエレナが答えた。
イズミは魔法適性が無いので、氷魔法の価値観が分からずにいたが、エレナが教えてくれた。
「氷魔法は、適性持ちが極端に少ないのです」
「そうなのか…水が手元に無いと氷を作れないのか?」
イズミは純粋な質問をした。
空気中にも水分はあるから、それを氷に出来たら何かと便利だと思ったのである。
「練習を続ければ、水を用意せずとも氷を作れる…らしいです」
「何事もまずは練習、ですね」
イズミは自分の射撃スタイルを思い返しつつ、笑顔を作っておいた。
屋敷本館の隣にある、屋根のある大きな馬車置場だった。
マスタングから降りる際、念の為に周囲の警戒を頼んでおいた。
メイドの案内で屋敷本館へと入ると、アレクセイが階段を下ってきた所だった。
「イズミ殿。ようこそ私の屋敷へ」
「ご招待戴きまして、誠にありがとう御座います」
イズミは思いつく限りの挨拶をしてから、広い部屋へと入って行った。
「エレナは魔法の勉強をしてましてね…どうぞこちらへ」
大きな窓から町並みが見える部屋で、イズミ達は質の良い椅子に腰を下ろす。
「王都では本当にありがとう。まさか娘と砂浜を歩ける日が来るとは」
「それはエレナさんの努力の賜物です」
アレクセイとイズミの話がイマイチ分かっていないベリアだが、緊張していても笑顔が張り付いていたので大丈夫だろう。
「…それでだ。イズミの耳に入れておくべき話がある」
アレクセイがメイド達を部屋から出るように指示を出す。
扉が閉まったのを確認してから、話を再開した。
「エレナが歩けるようになった事で、思わぬ事態が発生したのだ」
まずは貴族としてのイザコザである。
エレナは下半身不随だったので、貴族間での競争にも似た争い事は無縁であった。
しかし、歩けるようになれば話が変わる。
社交会にも参加出来るし、結婚話だって持ち上がる。
エレナ個人はリハビリ中なのでまだそこまで考えてもいないらしいが、アレクセイの元には既に話が来ているそうだ。
「王家もイズミの存在を認知している」
「…第三王子と会いましたよ。第三王子としては、特に動きはしないみたいです」
イズミがこの領内で第三王子に会った事を伝えると、アレクセイは苦笑いを浮かべていた。
「4ヶ月後に行われる王家主催のパーティーに、私とエレナが招待された」
ため息をついたアレクセイに対して、イズミは目を細めた。
「王家主催のパーティーか…結婚話や派閥争いとかありそうですな」
「エレナの魔法適性も影響してな、第四王子の妻候補にエレナが急浮上したのだ」
「…あぁ。嫌がらせと言うか、妨害工作とかはありそう」
マスタングの実験的な意味合いもあったが、イズミが魔法適性追加を実行させた事もあり、ろくな返事が出来なかった。
気の重くなる話をしていたら、扉をノックする音が響いた。
「主様、エレナお嬢様です」
従者が扉を開けると、エレナが部屋へ入って来た。
「魔法の練習はどうだい?」
「まだ慣れませんね。やっとグラス1つ分の水を凍らせる事が出来ました」
アレクセイの質問にエレナが答えた。
イズミは魔法適性が無いので、氷魔法の価値観が分からずにいたが、エレナが教えてくれた。
「氷魔法は、適性持ちが極端に少ないのです」
「そうなのか…水が手元に無いと氷を作れないのか?」
イズミは純粋な質問をした。
空気中にも水分はあるから、それを氷に出来たら何かと便利だと思ったのである。
「練習を続ければ、水を用意せずとも氷を作れる…らしいです」
「何事もまずは練習、ですね」
イズミは自分の射撃スタイルを思い返しつつ、笑顔を作っておいた。
51
あなたにおすすめの小説
彼に勇者は似合わない!
プリン伯爵
ファンタジー
連日の残業で終電帰りのサラリーマン、神無月無名21歳。
ある夜、突然足元の光に包まれ異世界へと召喚されてしまう。
そこは豪華絢爛な王宮。
第一王女ラクティスは、彼を含む男女5人を「勇者」として召喚したと告げる。
元の世界では時間がほぼ止まっているという説明を受け、半ば強制的に魔国との戦いに協力することになった無名たち。
発現した無名の紋章は歴代でも最高クラスを示し万能の勇者と称され、周囲を驚愕させる。
元の世界への帰還を条件に口頭で協力を約束する勇者たちだが、無名だけは王家に対し警戒心を抱き、王に元の世界への帰還とこの世界で得た力を持ち帰ることを書面で約束させる。
協調性がないと周囲から思われながらも、己の最適解を優先する無名は、果たして他の勇者たちと協力し、魔国を打ち倒して元の世界へ帰ることができるのか。
それぞれの思惑が交錯する中、勇者たちの戦いが幕を開ける。
これは社会不適合者が歩む成長の物語。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
龍と旅する。
水無月
ファンタジー
治安が良くない島々や国を龍と旅する物語。
主人公たちが探すのは「龍の卵」。だがそれを狙うのは彼らだけではなく、「龍狩り」や貴族とも争うことになる。
出会いと別れを繰り返して、ロッドとレリスは大海原を渡る。
・海龍 ロッド……最強。頼りになる。こいつ一人でいいんじゃないかと思われるが、とある理由からレリスと行動している。威厳のある話し方をするが、中身は幼い男の子。
・人間 レリス……男性。人間基準で言えば強いが、あくまで人間の枠組みの中でのこと。お人好し。
※注意
〇喧嘩しまくりの異種族同士ですが、彼らはお互いを家族だと認識しています。家族愛です。
〇レリスが生まれ持った性質のせいで「龍の卵」なみに狙われる時があります。徐々に巻き込まれヒロインみたいになります。
〇上記のふたつが無理な方はお気を付けください。表紙と挿絵は手描きです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる