異世界無宿

ゆきねる

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第十四章 運び屋稼業も楽じゃない

第百七十八話 まずは公爵領へ

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イズミ達はブロズムナード辺境伯領から出て数日、昼前に出会ったハーピー族のカーネリアを乗せてガブリオレ公爵領の領内の平原を走っている。

まだこの世界では他の貴族との領地の境界線上に目印になる厳格な物は無い。
まったりと走っていると、日が傾くよりも前に町が見えて来た。

「ガブリオレ公爵領内で初めての町だな」

「さて…入領は3人で良いのか?」

イズミは卵をどう説明するのか悩んでいた。

「何処かで競り落とした商品です、とか嘘をつくべきか?」

「この大きさだと怪しまれるか…」

「正直に話をしても信じて貰える確証も無いか。魔族との関係悪化はもう避けられないが、放置した馬車の話はしたい所だしな」

ベリアも一緒に考えてくれたものの、結局隠し事は厄介事をややこしくすると考え、町へ入る事に決めた。
大事なのは、カーネリアと卵を確実にハルハンディアまで届ける事である。

「よし、町へ入ったら冒険者ギルドに直行だ」

イズミは遠くに見える町を眺め、マスタングのステアリングを握り直した。


ガブリオレ公爵領にある門番の居る町の入口に到着し、入領申請を行う際に銀貨を数枚を渡す。

「大急ぎで冒険者ギルドに報告と相談をしなければならない事案がある」

イズミの代わりにベリアが冒険者ギルドの登録者証を見せ、門番に話をしてくれた。

「奥に座っているのは…魔族!?」

カーネリアが門番に部分的に魔法を解いて羽根を見せると、変化の魔法を使っている魔族と理解した門番が剣を構えようとする。
その瞬間、イズミがホルスターからマグナムを抜き門番の動きを止める。

「おっと、そんな物騒な物を取り出すな…ここで事態が複雑化するのは避けたい」

「わ、分かった。我々で冒険者ギルドの担当者を呼ぶから、入領は暫し待ってはくれないか?」

「構わん」

イズミは冒険者ギルドの人間がやって来るまで、門番への注意を怠らなかった。


町の通りから衛兵と一緒に男が近付いて来た。
白髪交じりの男で、身なりも整っている。

「冒険者ギルドへ緊急の話とは、どの様な内容でしょうかな?魔族と一緒とは怪しいものです」

男はイズミ達が自己紹介をするより先に、疑いの目を向けている。

「アタイはAランク冒険者のベリアだ。この町へ来る途中、魔族に襲われている馬車ががあってな…馬車を守る兵士がアタイ達にも攻撃をして来たから対応したんだ」

「ほぅ…そんな事が」

「馬車の積み荷は何だと思う?幾つか回収したから、一度見てくれ」

ベリアの言葉を聞いたイズミが、マスタングのトランクから悪趣味な剣を取り出し冒険者ギルドの担当者へ投げ渡す。

「他にもあるが、取り敢えずコレだな」

「これは中々…分かりました。ギルドで話を聞きましょう」

正式に入領が認められたイズミ達は、担当者の案内で冒険者ギルドの建物へと進みだした。
到着したギルドの建物はやはり大きく、ベリアも息が溢れている。

「領地の端の町でも、この大きさか」

「マスタング、警戒モードだ。何かあれば暴れてくれて構わん。カーネリアと卵の安全を優先してくれ」

「かしこまりました」

マスタングをギルドの馬車置場に停めさせて貰い、カーネリアと卵を車内に残し建物へと入る。
少しは建物の内装を見ておきたいが、そんな余裕は無かった。

「お連れしました」

担当者が部屋へ案内をしてくれた。

「うむご苦労…私がこの町の冒険者ギルド長のメンビルと申します。早速ですが、詳しい話をお聞かせ戴けないでしょうか?」

動きやすそうな身軽な服装、綺麗にまとまっている髪を見るに、確かな品の良さを感じる。

「アタイはベリアでAランクの冒険者だ。こっちは旅人のイズミで、魔族を目的地へお送りする仕事を任された男です」

「どうも」

イズミは腕を組み、右手はそっとマグナムのグリップを何時でも握れる位置に置いている。

「馬車が魔族に襲撃されていたそうですが」

「はい。馬車に乗っていた商人は魔族の拠点へ連行されましたが、積み荷のいくつかは回収してます」

イズミはギルドの従業員に応援を頼み、回収して来た物を部屋へ運び込む。
その品々を見たギルド長の表情が青褪めるのが分かる。

「これは…大分前に窃盗があった品々です。運んでいた馬車はまだ現場にありますか?」

「あるはずだ…何者かが証拠隠滅に動いていなければな。金貨の類もあったが触れてない」

「分かりました。直ぐに調査をさせます」

後の話はベリアに任せ、イズミはマスタングへと戻ると告げて部屋を後にした。
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