異世界無宿

ゆきねる

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第十七章 臨時の同盟

第二百三十九話 狙撃は得意じゃないけれど

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ツォーネットが指揮する冒険者のパーティーが、魔術師を捕らえる為に戦闘を始める。

防衛魔法を張って魔術師からの攻撃を防ぎながら先端が丸くなったロングボウを放ち、生け捕りにする為に木製のこん棒や鞘に納めたままの剣で文字通りぶっ叩いての戦闘だった。

「あそこまでやると、リンチに見えるな」

無事?に生け捕りとなった魔術師8名が冒険者ギルドへ連行されて行く。
残りは残念ながら息が無かったようだ。

ベリアが屋根から降りて来ると、腕を軽く回しながら笑顔で声をかけていた。

「イズミ!さっきの攻撃、見てくれたか?」

「あぁ、見事な手際の良さだった」

自分でもベリアの攻撃のように効率的な戦闘は難しいと告げると、ベリアは気恥ずかしそうにしていた。

「さて、避難誘導と警戒をしてる方を見てきますか」

イズミがそう話していると、マスタングから連絡が入った。

「マスター。町の表通りにて小規模ながら戦闘が発生しています」

「向こうでも動きがあったのか」

話はツォーネットにも届いているようで、手の空いている者達は表通りへと急行する。

到着した時には兵士達が制圧出来ているように見えたが、敵の1人が町の子供を人質にしていると言う。

「…迂闊には近づけませんな」

ツォーネットも他の冒険者達も、子供を盾にする敵に有効打を与える自信は無いようで、どうにか接近出来ないものかと思案している。

「ツォーネット、ご無事で何よりです」

ソフィアも無事だったようで、ツォーネット達と合流する。

「あの男以外は私の兵士で確保しました」

イズミがメガネをかけて確認すると、男はローブで顔を隠している。

「…アイツがローブの奴だな」

拳銃弾が命中していれば多少なりとも負傷しているはずだが、見る限り身体を庇っているようには見えなかった。

「マスター。コチラをお使い下さい」

マスタングが実体化したのは、1発のライフル弾だった。

「これは?」

「5.56mmソフトポイント弾です」

「…これで撃てって事か」

イズミは手にしたライフル弾をポケットに入れると、ツォーネット達に確認を取る。

「あの男は生け捕りじゃ無くても良いか?」

「理想は無論生け捕りだが、あの様子では難しいな」

交渉の余地が有るかも分からない相手を前に、冒険者ギルドとしても中々に動きにくいのだろう。

「人質になっている子供には怖い思いをさせてしまうが、倒す事なら出来る。それでも良いか?」

「…やむを得ないですな」

苦渋の決断で、ツォーネットが頷いた。
ソフィアにも確認を取り、イズミはベリアを呼んだ。

「ベリア、済まないが俺を…冒険者ギルドの屋根まで運んでくれないか?」

「屋根?分かった」

ベリアはイズミを抱きかかえると、ヒョイっとジャンプして屋根まで登ってしまった。

「…っと。これで良いか?」

「ありがとう。助かったよ」

イズミは屋根の上から男を狙えるか確かめると、アサルトライフルを取り出した。

装填済みのマガジンから弾を抜き取り、1発のソフトポイント弾を込めライフルに挿し込む。
深呼吸をしてからチャージングハンドルを引き、初弾を装填する。
スコープを覗き込み、男の姿を捉えた。

「マスター。ターゲットとの距離は120mです」

「スコープのゼロインは確か…」

「200mです」

「近いのか」

イズミはスコープ越しに男の動きを観察し、撃てるタイミングを探る。
射撃姿勢を取り、スコープと弾道の差を考慮して狙いを付けた。

男が子供に向けていたナイフを近付こうとした兵士に向け、何かを言っているタイミングで男の頭の動きが一瞬止まる。
その瞬間、イズミは引き金を引いた。

ソフトポイント弾は吸い込まれるように男の頭に命中し、その身体を重力に任せて地面へ倒れ込む。

「…上手くいったな」

「凄い武器だよなぁ。あのナイフを持った手を狙えたら、生け捕りだって夢じゃないぞ」

「今の俺には無理だな。今度ベリアにも撃たせてやる」

「本当か!?」

ベリアの考えを満たせる実力があれば生け捕りも出来ただろうが、自分は超A級スナイパーでは無いのだ。
こればかりは、何処かでしっかりと訓練を積まないと無理だと分かっている。

尻尾を振って喜ぶベリアをよそに、イズミは近くに落ちた空薬莢を回収するとアサルトライフルと共にショルダーバッグへ仕舞った。

「ベリア、頼み事がある」

「何だ?」

「…地面まで降ろしてくれないか?」

屋根の上から地面までの高さを見てビビったイズミは、またベリアに抱きかかえられながら地面へ降りていった。
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