異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
247 / 701
第十七章 臨時の同盟

第二百四十話 対人特化型です

ベリアが地面まで飛んでイズミを降ろすと、両腕を軽く回してからストレッチを始める。
聞くところによると筋肉痛対策らしいが、効果があるのかは分からなかった。

「これで一件落着か?」

マスタングに索敵を頼むと、現時点では魔法反応も無いとの事だった。
一旦は落ち着けると判断したイズミは、欠伸をしながらソフィアとツォーネットの居る場所まで歩いて行く。

「終わったぞ」

「…あの距離で正確に頭を攻撃するとは」

どうやって攻撃したのか分からない以上、ツォーネットはイズミの戦闘スタイルを掴みきれていない。
しかし、今回の戦闘で2つのヒントを与えてしまっている。

1つは、ワイバーンを落とせる攻撃力を持っている事。
もう1つは、遠距離でも精密な攻撃が出来る事だ。

「見事でしたわ」

ソフィアがイズミへと近付き、狙撃に関して話を切り出す。

「あのような技術を身に付けるには、かなりの時間を費やしたとお見受けします。是非ともお話をお聞かせ頂きたいですわ」

「…無宿人の生きる術ですので、申し訳ありませんがお話は出来ません」

イズミは丁重に断ると、ベリアと共に宿屋へと帰って行く。
その後ろ姿を静かに見ていたソフィアだったが、目付きが鋭く変わり魔法通信で誰かに連絡を取り出した。

「セラス、イズミと言う旅人とベリアと言う冒険者について急ぎで調べて。特にイズミと言う男に関しては徹底的に」

「御意に」

魔法通信を切ると、ツォーネットに命じる。

「ツォーネット、貴方が把握しているあの2人の情報を渡しなさい。私の公務に関わる重大な事項よ」

「…かしこまりました」

ソフィアとツォーネットは、遠くに見えるイズミとベリアの背中を目で追うと、冒険者ギルドの建物へと歩き出した。


宿屋に向かう道中で、ベリアがくしゃみをする。

「ヴェッくしょい!誰かアタイの噂でもしてるのか?」

「一度に5体のワイバーンを倒したんだ、噂にもなるだろう」

ベリアはククリナイフに右手を置くと、得意気に語り出した。

「あの時ナイフを構えたらさ、自分の魔力とナイフの魔力が1つになった気がしたんだ!そしたらさ、急にワイバーンの周りの風が視えたんだ。だからナイフを振り落とす時に、その風がワイバーンを斬る想像をしたらさ、一気にスパッとワイバーンを倒せたって感じ!」

ベリア自身も興奮気味である。
クラーケン討伐時は日々の鬱憤やら以前の冒険者パーティーへの不満や怒りを原動力にしていたが、今回はそんな感情とは関係無しにナイフの持つ魔力を引き出した攻撃が出来たようだ。

「あの一撃は凄かった!あれは俺では出来ないな」

「そうなのか?」

「俺の攻撃手段は基本的に、同時に複数を相手にするのが苦手なんだ」

特定の状況を作れば例外はあるが、基本はベリアに説明した通りなのだ。

「へぇ~、そんな風には見えないけどな」

「ある程度の魔物にも対応は手出来るけど、俺の戦闘スタイルは対人特化型だと思ってる」

ここ数日は戦闘をしているので、そろそろガッツリと身体を休めたい。
火山地帯にあると言う温泉に思いを馳せながら、イズミは小さなため息をついた。


場所は変わり、冒険者ギルドでは。

「彼の相棒は彼女が2人目なのね。1人目は?」

「エルフ族の女性で、名をカレンと言います。現在は隣国の故郷にて新たに発見されたダンジョンの運営と管理を担当しているようです」

「そのカレンと言う方は、冒険者ギルドの登録者?」

「仮登録ですね。帝国との戦闘にて故郷が壊され、復興している最中との事です」

「…新規登録に関する規定ね」

ソフィアは従者が用意した紅茶を口にすると、テーブルに並べられた資料の1つを手に取った。

「どれどれ、肝心の彼は?最初の記録は冒険者ギルドへの登録申請と不可判定ね…不可判定?」

「彼の出自に関する情報を確認出来なかったのです。国も生まれも家族構成も全て真偽不明、彼を知る者自体が居ないのです」

「で、確認出来る彼の功績は…コレ、本当なの?」

「信じ難いですが、事実です」

資料には冒険者ギルドがカレンへ聴取した話がまとめられている。

「王国の貴族とも関わりがあるのね」

「はい。王都の冒険者ギルド本部の者が確認しております」

「ブロズムナード辺境伯のご令嬢との面識あり…」

資料をめくっているソフィアの手が止まる。

「…これも本当なの?」

冒険者ギルド本部の報告資料には、エレナとイズミの魔法適性の診断結果が書いてある。

『エレナ嬢の鑑定では、魔法適性の増加を確認』

『イズミと言う男の鑑定を行った結果、水晶は何一つ反応せず。魔法適性無し』

ツォーネットも資料を確認するが、報告者の直筆サインが事実を物語っている。

「イズミ殿は冒険者ギルドに良い感情を持っておりませんので、簡単な事は答えてくれますが…冒険者ギルドには非協力的と言わざるをえません。これについて聞いたとしても、答えてはくれないかと」

「でしょうね。この資料を見ただけで、私なら即刻解雇を通達する者達ばかりよ。冒険者ギルドはカレンとベリアの2名に感謝する事ね」

ソフィアは紅茶をゆっくり飲むと、今後の立ち回りに関して思案し始める。
イズミも私と同じ者達を敵に回している。

どうにか同盟のようなものを組めないだろうか…
感想 25

あなたにおすすめの小説

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり
ファンタジー
 異世界に突然迷い込んだ主人公は、目の前にいた人物に何故かぶぶ漬け(お茶漬け)を勧められる。  そして、自身を神の補佐である天使というその人物(一応美少女)に、異世界について教わることに。  それから始まった異世界での生活は、様々な種族や立場の(個性的な)人に出会ったり、魔界に連れていかれたり、お城に招待されたり……。  そんな中、果たして主人公はどのような異世界生活を送るのだろうか。  異世界に迷い込んだ主人公が、現地の様々な人と交流をしたり、一緒に何かを作ったり、問題をなんとかしようと考えたりするお話です。  山も谷も大きくなく、話の内容も比較的のんびり進行です。 現在は火曜日と土曜日の朝7時半に投稿予定です。 感想等、何かありましたら気軽にコメントいただけますと嬉しいです! ※カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様にも投稿しています

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

W職業持ちの異世界スローライフ

Nowel
ファンタジー
ブラック企業の社畜、鈴木健一 ある日彼はトラックに轢かれ亡くなった。 そして、気付くと魂の姿になっていた。 橋の神様の提案で異世界転移をすることに。 橋を渡った先には扉があって…。