異世界無宿

ゆきねる

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第十七章 臨時の同盟

第二百四十六話 緊急時道具セット

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「…大事な話って?」

扉が閉まるのを確認したソフィアが声を上げると、イズミは部屋内に変な物は無いかどうかをメガネを使いマスタングに確認してもらう。
問題は無いとの事だったので、ショルダーバッグから一冊の本を取り出して机に置いた。

「備えあれば憂いなし、緊急時に便利な道具セットだ」

本を開き道具を全て見せてから、各々の道具の説明を始める。

「まずこの小瓶だが、中身は魔力補給薬だ。全く美味しく無いが効果はある…控えめに言っても非常に不味い」

ソフィアの前に小瓶を置くと、手にとって瓶を揺らして中身を確認していた。
茶色の小瓶が珍しいのか、中で揺れる液体をまじまじと見ていた。

「お次は万能鍵のセットだ。こっちのシンプル鍵の形をしている方が物理用で、真ん中にガラスの筒みたいになっているのが魔法用だ。鍵の形をしている方が魔力を込めて鍵の掛かった扉の錠前に挿し込めば、ガラスのヤツは魔法のかかった扉に触れさせるだけで動作する」

キーリングに指をかけてクルクルと回してから、ゆっくりと机に置いた。
ソフィアは真剣な表情で鍵セットを観察していた。

「後で試してみても?」

「そうだな…信頼出来る者達と小規模に試すのが良いかと」

この世界では見慣れない静電気防止グッズの見た目をした道具を手に取り、何の魔法もかかっていない扉に当てる動作をする。
勿論動作はしないが、使い方はそれだけである。

「魔法がかかった扉で使うと、ガラスの筒の中にある装置が光るはずだ」

「目で見て分かるのは便利ね」

机に置いたのを確認したイズミが最後の道具、小型のオートマチックについて説明を始めた。

「最後のヤツは特に極秘で頼む」

「…そんな凄い道具なの?」

「あぁ、使う場面が無い事を祈るばかりだ」

弾倉を取り出してソフィアに手渡し、両手で強く握り魔力を込める用に指示を出した。

「…こんな感じかしら?」

返して貰った弾倉を見ると、弾倉内にある魔石だろう部分が淡く光っている。

「大丈夫だ」

声を潜めて取り扱いの説明をする。
セイフティの掛け方、撃ち終えた後の片付け方を教えてから、実際の撃ち方の説明に移る。

「使い方は単純。まず利き手で握って、この凹み部分が一直線になるように構える。直線の先に攻撃をしたい相手の胸辺りに狙いをつけるイメージをすると分かりが良いと思う」

「かなり小さいわね、狙いをつけるのも慣れが必要そう」

「それは小型故の仕様だな…実際に攻撃をする時は事前にこの弾倉を挿し込んで魔力を込めるだけだ。その後でこの引き金ってパーツを人差し指で引くんだ。今は弾倉は外してあるから、引き金を引いても大丈夫だ」

言われるがままにソフィアが壁に向けて銃を構え、引き金に指をかける。
カチンとハンマーが落ちる音がする。

「引き金を引ききったら、指を伸ばして引き金を元の位置にまで戻す。それの繰り返しだ。簡単だろ?」

「さっきの弾倉?でしたっけ、アレに魔力を込めたのはどうして?」

何度か空撃ちをして、銃の使い方を確認したソフィアが尋ねる。

「特別仕様でな、ソフィア以外の者が使えないようにセッティングしたんだ」

「それなら安心ね。他の方がコレを奪って使ったらどうなるのかしら?」

「やっぱり知りたいか?」

イズミは声のトーンを落とし確認をすると、ソフィアはゆっくりと首を縦に振った。

「少し恐いけど、知っておいた方が良いかと」

「爆発する」

マスタングから聞いた通りに答えた途端、ソフィアの顔から血の気が引いたのが分かる。
ソフィアは右手に握りしめた拳銃を見つめてから、そっと机に置いた。

「非殺傷武器にはなるが、相手を一時的に無力化出来る優れものだ」

「非殺傷なのに?」

「喰らえば一時的に全身が麻痺と激痛に襲われる。良くて悶絶や気絶、悪くてショック死だ」

マスタングからの説明を思い出し、思わず背筋がブルッと震える。
考えたくもない痛みである。

「男なら直ぐに理解してくれる痛みだな…金的を本気で蹴り上げられた時の痛みが、和らぐ事無く半日とか丸一日持続する」

「私は女だから分かりにくいわね。ツォーネットに聞いてみるわね」

そんな事を唐突に質問されるツォーネットが気の毒ではあるが、それも彼の仕事の範囲内だと思う事にする。

「そんな武器だから、コイツだけは免状の返却時に返して貰うぞ」

「分かったわ」

イズミは銃を扱う時の注意事項を改めてソフィアに説明した。
誤射による悲劇や事故防止の為に、欠かす事の出来ない大切な話である。
最初に説明するのか最後にするのかは人によるだろうが、イズミは最後にしっかりと説明をした方が記憶に残ると判断したのだ。

拳銃を回収したイズミが弾倉を挿し込みセイフティを掛け、取り出していたセットを本に片付ける。

「この本は魔力を込めれば日記帳に擬装が出来て、そのまま日記帳としても利用も可能ですので上手く活用してください。では、私はこれから元々の旅路に戻ります。道中でこの件に関わる話があれば、連絡しますね」

「よろしく頼みますわ」

「疑問質問があれば、魔法通信で聞いて下さい」

イズミは簡単な挨拶をしてから本をソフィアに手渡して部屋を出て行った。
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