異世界無宿

ゆきねる

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第二十一章 武器が出来るまで

第三百二十四話 仮定の話です

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「失礼、推理や想像事になるとつい熱が入ってしまってな…」

冷や汗をかいたグラントが、ハンカチのような物で汗を拭う。

「そんな能力を保有していると思わしき者が国内に居るならば、我々とて是非とも良い関係性を築きたい。無論ラミア族との関係が最優先なのは理解した上での事です」

「…私は只の旅人です。そんな大した人間ではありません」

イズミは静かに答えた。
彼等はイズミ個人ではなく、その背後に居るマスタングの能力が目当てであり、その能力を自分達にも使って貰う為のキーマンとして、自分を見ている。
それが見え見えなのだ。

「そう自己評価をしていても、周囲は違う評価をしている事は多々あります。だから儂よりも上が動いているのです…儂の領内であるが故に、まだ大きな動きを取っていないだけでね。横槍を入れられる前に関係構築が出来れば、その動きもある程度は抑えられる。ラミア族に賓客として迎えられているとしても、要らぬ横槍は無い方が良いに越したことはない」

上が…フラウリアが以前話をしいた元老院の事だろう…本腰を入れ始める前に関係構築に成功すれば、元老院はグラントを窓口にすれば良くなり余計な横槍を入れずに済み、大事になるリスクも軽減出来ると踏んだのだ。

部屋に静寂が訪れ、イズミは少し間を置いてから軽い口調で話し始めた。

「只の旅人に何を期待しているのかは存じ上げませんが、想像するような期待には応えられないかと」

「それはどうして」

「分からないからです」

グラントが食い気味に聞いて来たので、最初に答えを出して説明に入る。

「貴方はアーティファクトの秘められた能力と仰りましたが、厳密に言うならば謎です。仮にアーティファクトにそのような能力があるとして…何が出来て何が出来ないのか、能力の発動条件や効果範囲にその持続時間、能力発動の対価は何なのか、全て説明不可能であり謎です。誰も分からない」

イズミはそこまで言うと、一度周囲を確認する。
ここまでの内容は理解出来ているようだ。

「試しにやってみたら出来たが、それが何故出来たのか全く分からない。調べてみてもそれらしい理由が見当たらない。少しの理由すら分からない状態で、他人から頼まれた事を期待通りに出来るとは私は思えないし、保障も出来なければ責任も取れないからしたくない」

今まで出会って来た人達にやって来た事のほとんどは賭けに近いものであり、相手が僅かな可能性に賭ける事が出来た人間だったからこそ成立した事なのだ。
マスタングが出来ると言うならば自分は全幅の信頼を持って頼むが、他人から見たら怪しさ満点なのである。
他者から頼まれても、出来る保障も確証は無い。

実際の所は自分とマスタングの、その場のノリと勢いだけが基本的な原動力なのだが、それは言葉にしたら不味いだろう。

「全ての工程が自己完結するのであれば私は謎であっても気にしませんが、第三者が絡むと如何せん不確定要素が多過ぎる。おいそれと利用出来るとは考えられないのです」

「何か具体的な事例を上げられるかね」

「そうですね…先程の話にあった貴族の御令嬢に準えるなら。動かぬ足を自由に動かせるようにする魔法を依頼され、奇跡的にも対応出来たとしましょう。効果は御令嬢が死ぬまで持続し、他者が魔法妨害出来ない強固な物と仮定します。その魔法の対価は事前に確認は不可能で、魔法を使った後で対価はハルハンディア共和国にいる人間全員の魂でした…なんて結末でも文句は言えない訳です。何も分からないのですから」

イズミはかなり大袈裟な例え話をしてみせた。
有り得ないとは言い切れない、可能性はゼロでは無いのだから。
現実は自分が7回程ほぼ全ての魔力を吸収されてまともに動けない日々を送ったり、本当に不味い特製ドリンクを何度も飲まされたりした訳だが、そこまで話す義理は無い。

「そんな危うさを内包している可能性があると認識した上で友好的な関係性の構築をしたいと言うのならば…それこそ酔狂と思われても可怪しくありません。知っていて近付かれるのと知らずに近付かれるのでは、受け取り方も変わりますし」

そう話すイズミを見たフラウリアは、ラミア族としての対応を簡単に伝える。

「我々ラミア族は、イズミさんとベリアさんに大切な子供を助けて戴きました。その命の恩人にお礼をする為に、賓客として饗すと決定したのです。能力目的ではありませんわ」

自分の側に居てくれる者達は皆アーティファクトの能力ではなく、しっかりとイズミの事を見て判断しているように見える。

「何度も申しますが、私は只の旅人です。難しい事はせず自由気ままに旅をするのが目的の、普通の人間です」

普通の人間、そう言い切ったイズミは僅かに微笑むと相手の反応を観察した。
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