異世界無宿

ゆきねる

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第二十二章 一斉捜査

第三百三十九話 アレが欲しい

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モニターに映し出された映画を観てもらう為に、イズミは異世界でも使えるビデオデッキとモニターを実体化させようかと考える。

「ねぇ、観れるようになったの?」

「取り敢えずは、ですが」

ノルトはマスタングの助手席へすり抜けて乗り込んで来ると、映像の流れるモニターを凝視する。

「貴方の居た世界の景色かしら?」

「そうですね。私の居た世界でも、遠い異国ではありますが…勿論こんなモノクロではありませんよ」

「そうなのね」

イズミの返事には上の空の様子で、ノルトは映像をジッと呼吸を忘れているかのように見入っている。

「ちょっと、映像を止めて」

ノルトの声を聞いたマスタングが、映像を一時停止させる。

「どうかしました?」

「コレは何かしら」

ノルトが指差す先にある映像には、2人乗りしているスクーターがあった。

「スクーターですね。技術革新で生み出された、馬の変わりに乗るようになった乗り物です」

「スクーターって名前なの?」

「スクーターは種類名ですね。会社…こちらでは商会かな、そこが作ったスクーターと言う種類に該当する乗り物って感じです」

「では、名前は?」

「ベスパ」

ノルトは何度かうわ言のように記憶するように呟くと、ゆっくりと顔を動かしイズミの顔をジッと見つめた。

「面白そうね…イズミ。対価を決めたわ」

「私は面白いと思いますが。何か嫌な予感がしますね」

「アレが欲しい」

「やはりそうなりますか」

イズミはマスタングに実体化は可能か確かめる。

「マスター。実体化は可能なのですが、確認事項があります」

「確認事項?」

「1つは車体の完全トレースした物にするか、別モデルにするかです」

マスタングはモノクロの映像から、実体化可能なスクーターの映像に切り替える。
大きな違いはライトの位置だ。

モノクロ映画ではフェンダー上部にライトが付いていたが、実体化可能なモデルはハンドル部にライトが付いている。

「どちらがよろしいでしょうか?」

「俺ならハンドルにライトが付いてるタイプが好みだが…」

マスタングが比較用の資料をモニターに表示したので、ノルトと確認をする。

「どちらが好みですか?」

「そうね…右の方が良いわね」

右側…ハンドルにライトが付いている…を選んだので、それで話を進める。

「灯火類は如何致しますか」

「この世界ではウインカーは不要だと思うが、オミット出来るのか」

「可能です」

オミット前とオミット後の参考資料が表示されると、ノルトはオミットされた資料を選択した。

「不要なら無い方が良いけど、どんな機能なの?」

「道路での右左折をする際に、向かい側を走る馬車と後方を走る馬車に対して、事前に曲がる意思表示を合図として出す。そんなイメージですかね」

「ふーん…こういった乗り物が沢山走っているなら必要な装備だけど、私には不要ね」

そうやって確認を済ましていった結果、ヘッドライト以外の灯火類は全カットされた白いベスパがモニターに表示されている。

キックスタート式かつハンドチェンジが必要なベスパである。

「仕様は決まった訳だが、実体化に必要な魔力はどのくらいだ?」

「マスター、コチラをお飲み下さい」

グローブボックスが開き、中に小瓶が入っている。
あのクソ不味いドリンクである。

「またコレか…コレは結局、何の効果があるんだ」

「所謂エナジーブーストドリンク、気力と体力と魔力の前借りみたいなものです」

「俺の寿命が縮みそうだが」

「問題ありません」

そこまでハッキリと言われてしまうと、これ以上の反論が出来ない。
イズミは諦めてドリンクを一気に飲み干した。

「全く、この不味さはどうにかならないのか?吐きそうだ」

「より高い効果を得ようとすると、このような味になります」

イズミはマスタングから降りてトランクに両手を乗せる。
これで準備万端だ。

「ノルトさん、マスタングから降りて頂けませんか?これから魔法を使いますので」

「分かりました」

ノルトはスッとマスタングをすり抜けたので、本格的に実体化を始める。

「そうだ…コレをやると私は気を失う可能性が高いので、もし気を失った場合は屋敷の方を呼ぶとか、旅の仲間のベリアを呼んで下さい」

「分かりましたわ」

それだけ伝えると、マスタングが実体化を始める。
それと同時にイズミの意識は、遥か彼方へと吹っ飛んでしまった。
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