異世界無宿

ゆきねる

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第二十三章 独自の調査

第三百八十二話 いざオブリビアへ

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翌朝。
昨夜の夕食会で飲んだ酒も抜けきっており、スッキリとした目覚めである。

アヤとエレノアは今日から少しづつ職務量の調整が始まるらしく、別のラミア族へ引き継ぎがあると言って朝から忙しそうだ。

グラテミアは朝からイズミと共にマスタングの元へ来ており、白湯を飲むイズミの隣でマスタングと会話を楽しんでいる。

「マスタング様、イズミ様から戴きましたペンダントのお陰で、本当に毎日が元気で輝いておりますわ。マスタング様にも是非一度お礼をと」

「礼には及びません、マスターを助けて下さるグラテミア様の為を思えば、当然のことをしたまでです」

「あら嬉しいわ。そう言えばイズミ様の魔法通信は誰が追加を?」

「アーリア様です。マスターとの直通であれば一度アーリア様を呼ぶ必要がありますが、私とであれば問題ありません。車内モニターへ手を翳して、魔力を流して戴ければ即座に専用回線が構築出来ます」

「それは素敵ね、そうしましょう」

どうやらマスタングとグラテミアも良好な関係性を持ったようだ。

ベリアが冒険者ギルドから戻って来たので、グラテミアとマスタングのやり取りを終えてから、マスタングを馬車置き場から表へ出した。

「しばらくオブリビア近辺のスタンピード調査をするって事で、話を付けてきた。近くに村はあるけど冒険者ギルドの拠点も一応あるから、到着したら一声かけてくれって」

「無いよりはマシか…では行ってみますね」

2人がマスタングに乗り込むと、グラテミアが屋敷の門を開ける指示を出す。

「必ず戻って来て下さいませ。あの2人を悲しませるような、酷い御方では無いと信じております」

「いくら私が無宿人の旅人と言えども、そこまで無責任で酷い人間じゃないと自負しておりますよ。ベリアもマスタングも一緒ですから、五体満足かつ元気に戻って来ますよ」

そう言ってマスタングのアクセルを踏み込むと、屋敷から出てヒュミトールの外門まで走って行く。



「行ってしまいましたわ…あら?」

イズミ達を見送ったグラテミアが馬車置き場の扉を閉めようとした時、マスタングが停まっていた場所に何かが落ちている事に気が付いた。

「これは何でしょうか」

グラテミアが拾ったそれは、薄い金属で作られたカードの様な物だった。

「…グラテミア様、聞こえますか」

「その声は、マスタング様ですか?」

「グラテミア様と直通の魔法通信回線も繋がりましたので、マスターにも秘密で魔道具を置いたのですが、お手元にありますでしょうか」

「金属のカードのような物でしたら、今しがた拾いましたが」

カードの表裏を確認するが、特に気になる点はない。
模様や文字も見当たらない、単に金色のカードの用に見える。

「その魔道具の活用方法は2つあります。1つは双方向で出し入れ可能なアイテムボックス機能、もう1つは条件付きですが以前マスターがお渡ししたレシピ本の続編等を実体化する機能です」

「アイテムボックスと、レシピ本の続編」

「アイテムボックス機能は事後報告でマスターにもお伝えしますが、レシピ本の実体化は内密に願います」

グラテミアは静かに息を飲む。
アーティファクトの主であるイズミにも秘密で、破格の機能を持った魔道具を自分に渡す理由が見えない。
アイテムボックスは緊急時に融通が利くと言う意味で分かるが、レシピ本は皆目検討がつかないのだ。

「そのような魔道具を、何故私に」

「これも必要な事なのです」

マスタングの真意を掴みかねるが、手にした魔道具がもたらす知識は強大だ。
既にチーズケーキは休日前のご褒美として、美容クリームは屋敷で働く従者にとって必需品にまでなっている。

「条件付き…との事ですが」

「大変恐縮ではございますが、レシピとして実体化された書物の品が完成しましたら、奉納の儀で男神様や女神様への奉納をお願い致します」

「それは、つまり」

「グラテミア様の元にも天啓が来たかと存じますが、その裏の意味がコチラになります」

「あぁ…」

男神はともかく、女神は強かである。
きっとイズミとマスタングの関係性を理解した上で、この世界に異世界の知識を広める術を模索したのだろう。
その結界が転生者を経由し、女神の加護を授かっている者へ天啓として指示を出すに繋がったのだ。

納得したグラテミアはカードを胸元に仕舞うと自室へ戻り、他者には触れられないように魔法を掛けて収納する。

「手始めに美容クリームを奉納してみるとしましょうか」

グラテミアはフラウリアを呼び出すと美容クリームの完成品を数個受け取り、屋敷内にある祈りの祭壇に捧げてみる。
すると祭壇に祀られている銅鏡から眩い光が放たれ、それが落ち着いた時には捧げ物は消えていた。

それを確認したグラテミアの胸元にあるカードから、音声が流れてくる。

『新規レシピが解禁されました、実体化しますか?』

「お願いしますわ」

『新規レシピを実体化しました』

ポンと実体化されたレシピを確認したグラテミアは、やっと美容クリームの量産計画をまとめ終えたばかりのフラウリアを捕まえる。

「フラウリア、このレシピにある品は作れるかしら?」

「叔母様、恐らく作れはしますが…コレは何ですか」

「日焼け止めクリームよ。完成したら南方の同胞達の元へ送ります」

「日焼け止め」

疲れ切ったフラウリアの肩を叩くと、グラテミアは早速指示を出した。

「先ずは10日間の休暇を与えます。休暇を終えたら、速やかにレシピの研究に入る事。今日の予定が無ければ、今日を含めて11日間の休暇でも構いません。分かりましたね」

「…分かりました」

休暇は貰えたがその後の忙しさが想像してしまったのか、大きなため息をついたフラウリアはグラテミアの部屋を後にした。

イズミの全く知らない所で新たな商品開発が始まったが、それに気付くのは暫く先の事である。
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