異世界無宿

ゆきねる

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第二十三章 独自の調査

第三百八十五話 新たな腕時計

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「それとマスター、新たな腕時計を実体化しました。こちらに付け替えをお願いします」

マスタングがグローブボックスを開けたので確認をすると、金属製のミリタリーウォッチが入っていた。

「マスターは魔王様より戴いたタイプの腕時計を戦闘時以外は着けたがらないようですので、別のモデルをご用意しました」

「コッチの時計の方が思い入れがあるんだ。マスタングが俺の為に実体化してくれた、俺に取って大切な宝物だからな」

曜日も日付も無いシンプルなアナログ三針のモデルであり、とにかく小型軽量で特に効果が付与されている訳では無い、正に使い捨て腕時計のような見た目ではあるが、非常に気に入っているのだ。

「新しいのは…ナビゲーターか」

メーカーロゴは無く、バーインデックスはカプセル式で時針と分針にもカプセルが付いている。
秒針には付いていなかったが、先端が赤く塗られており確認がしやすくなっている。
この異世界では死ぬ迄見ることは無いだろう放射能マークとH3の文字が何処か懐かしい。

左右非対称で竜頭を守るようなデザインに両方向に回転するベゼル、黒文字盤に白文字の24時間表記と視認性の良い配色だ。
4時と5時のインデックスの間にはデイト表示用の小窓、しかし日付は表示されておらず文字盤と同化する黒一色となっている。

裏側を確認する為に引き通しのナイロンバンドを外してみると、嵌め込み式のパネルに電池交換用のハッチが付いている。
クォーツ式を踏襲しているようだ。

「何か機能は?」

「通常状態では時間が分かるのみです。能力付与は3種類です」

「機械式じゃないようだが」

「クォーツ式を踏襲する事で機能を追加する余裕が出来ました」

モニターに表示された機能を確認すると、魔法返しと呪い返しのセットに探知機能、そしてカウントダウンタイマーと書かれている。
魔法返しと呪い返しは試作品よりは能力値が少し低くなってるようだ。

「過去の戦闘経験を加味し、魔法返しと呪い返しの能力値を抑え、他の機能を追加しております」

「抑えても大丈夫という判断か…いざと言う時は付け替えれば良いだけの話だし、別に問題は無いのか」

モニターに表示されている探知機能には、2種類の使い方があった。
1つはマスタングが設定したポイントへのナビゲーションで、回転ベゼルを竜頭の位置へ回し竜頭を一度引いて戻す動作をすると、目的地へ到着するまで秒針がその方向を指し示し続けると言うものだ。

もう1つは自分で設定した場所を指し示す機能だった。
回転ベゼルを竜頭の位置まで回転させるのは一緒だが、この機能を使う場合はそのまま竜頭を引き抜く必要がある。
竜頭がビーコンの役割を担い、それを腕時計が探知し秒針が竜頭のセットされた方向を指し示す仕組みになっている。

「これは重宝しそうな機能だな。正にナビゲーターって感じだ」

「竜頭を外した状態でも腕時計としての基本性能は保護されておりますが、他の機能は使えません」

次に普通のアナログ式腕時計には無い機能である、カウントダウンタイマーを確認する。

「まず回転ベゼルをデイト表示窓の位置に合わせて、竜頭を1段階引く」

手元の腕時計の竜頭のねじ込みを解除して試してみると、黒かった日付部分が動き白文字盤に黒文字の、馴染みのある日付表示に切り替わった。
そこには30と書かれている。
試しに竜頭を操作すると31日は存在せず1日目になり、それ以外は普通に見える。

「マスター、カウントダウンタイマー機能は緊急時以外使用しない事を推奨致します」

「そう言うって事は、只のタイマー機能では無いんだな」

「マスターの好きな映画的表現ですと『そのアラームはかなりうるさい』です」

「アラーム…成る程ね」

好きなアクション映画のワンシーンを思い出したイズミは、直ぐにカウントダウンタイマー機能の用途を理解した。

「デイト表示が動いてカウントダウンをするのか、面白いな」

「竜頭を動かしてタイマーをセットをします。使用する際はそのまま竜頭を引き抜けばカウントダウンが開始されます。カウントは最長で30秒ですので、起動後は速やかに移動して下さい」

「最短は?」

「5秒ですがお勧めは出来ません」

元々着けていた腕時計はグローブボックスは収納し、新たな腕時計を左手に巻き付ける。

「…思ったより装着感も良いな、暗闇でもぼんやりと時間が確認出来るのも良い」

普通に使えばクォーツ式のミリタリーウォッチなので、この旅路でも活躍してくれるだろう。

「明日は早いから、今日はもう寝るよ」

「お休みなさいませ」

「…有難うな」

マスタングのルーフを撫で馬車置き場を後にしたイズミは、部屋に戻る途中にある井戸で水を汲み桶に入れて部屋に戻る。
身体の汗や汚れを落とすと、サッパリとした気分でベッドに入り、そのまま眠りについた。
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