異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
441 / 624
第二十四章 暴走を止めろ

第四百三十話 久し振りの

しおりを挟む
移動を始めて6日目。
余裕を取ったスケジュールだったが初日の戦闘以降は特に問題無くスムーズに進んでおり、9日目にはオブリンドに到着する可能性も見えてきた。

「マスター、2時方向5km先に魔法反応があります」

「敵か?」

「特定出来ません」

「久し振りだな…皆すまない、少し寄り道をさせてくれ」

特定の出来ない魔法反応をマスタングが感知するのは久し振りだったので、一度停車してモニターを確認する。
その後車内の皆に寄り道をしたいと声掛けをすると、ヴィラードから質問が来た。

「寄り道をするのは構わないが、急用でも出来たのか?」

「急用って程でもないが、無視するのもちょっとな」

皆が日程にも余裕があると理解してくれているので、寄り道がてらマスタングが表示する魔法反応の反応源へと走ってゆく。

目的地付近には特段目立つような物はなく、草原が広がっているだけだった。
メガネをかけたイズミがマスタングから降りると、魔法通信でより精密な反応源を探してゆく。

「ベリア殿、イズミ殿は一体何をしているのです?」

「さぁ。アタイには分からないけど、何かを探しているんじゃないかな」

のそりのそりと草原を彷徨くイズミの姿をマスタングの車内から眺めていたヴィラードがベリアに聞いてみるも、ベリア自身も上手く説明が出来ないので大雑把に答える。

「探し物?ベリア殿は手伝わなくて良いのか」

「呼ばれたら考えるかな。イズミがアタイを呼ばない時は、1人で色々と行動したい時だし」

「そうなのか」

ベリアの視線の先では、イズミが探していた場所を特定出来たのか目印にナイフを地面に刺している。
マスタングまで戻って来ると、トランクでゴソゴソと準備をしてナイフを刺した場所へ再度向かった。

「あの…私、イズミ様の行動に興味があります。近くに行ってもよろしいでしょうか?」

「どうなんだろう?」

テレジアの質問に返答を窮していると、マスタングが代わりに回答した。

「問題ありません。どうぞ」

マスタングが運転席側のシートを前に倒しドアを開けたので、テレジアは車から降りてイズミの元へ向かう。
その後をヴィラードも追いかけるようにして走ってゆく。

「マスタングさんや、あの2人をイズミへ近付けて本当に問題ないのか?」

「問題ありません。本来であれば、光の教会に属する者達が見えなければならないものです」

「…本当は特定出来てるんじゃないのか」

ベリアはジト目でマスタングのモニターを見つめる。

「出来てはおりません。例えるならば、ダンジョン内の宝箱みたいなものと考えて頂ければ」

「成る程。何かは入っているけど、中身の特定までは出来ないって事か。でもダンジョンの宝箱にはトラップだってあるぞ」

「もしトラップだった場合は、マスターに頑張って頂く他ありません」

「だよなぁ」

ベリアとマスタングがそんな会話をしているとは知らずに、イズミは簡素なミニテーブルを地面に置くと、お供え物を並べて両手を合わせて祈りを捧げる。

「イズミ様、少し見学をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

祈りを捧げているイズミの背後からテレジアが話しかける。

「構いませんが、面白くはありませんよ」

テレジアの見つめる先には、イズミの用意したお供え物がある。
丸皿の上に乗せられた黒パンには何かがタップリと塗られており、赤いベリーもゴロッと乗っている。
隣の小皿には見たことの無い菓子のような食べ物があり、グラスには白ワインだろう飲み物が注がれていた。

「これは…」

「出発する前に準備はしてたんだ。たまにこんな事があるのでね…テレジアさんも心当たりがあるでしょう?」

イズミはそれっぽい嘘を交えつつ祈りを捧げ終えると、少し時間を取る為に静かに立ち上がりマスタングの元へ向かう。

「心当たり…まさか、あの日と一緒なのですか」

「それは分かりませんね。好きでやってますので」

イズミの後ろ姿を見つめていたテレジアが、お供え物を改めて見つめる。
その目には淡い光がふわふわとお供え物の周囲に浮かんでいるのが見えた。

「テレジア様、どうかなさいましたか?」

ヴィラードもお供え物を見ているが、光は見えていないのか反応は薄い。

「いえ、私も祈りを捧げた方が良い気がしまして」

そう言ってお供え物の前に座ったテレジアが祈りを捧げる。
すると淡かった光が強くなり、お供え物を包み込むように輝いた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...