異世界無宿

ゆきねる

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第二十五章 オブリビアダンジョン

第四百四十四話 特別ゲスト来たる

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「来ちゃいました。ギムレットを頂こうかしら」

それは光の女神だった。
部屋にいる全員が言葉を失い、目の前に広がる状況を理解しようと努めているが、誰も理解しきれていない。

「…言ったろう、手を打ったと」

女神の膝の上で丸まっている野良猫が、欠伸をしながらイズミに言った。

「もう少し丁寧と言うか、それとなくな動きだと思っていたんだ。ゴリ押しとは」

「1番手っ取り早いだろ。ケーキ以外のお菓子をくれ」

野良猫の存在に気付いたテレジア達が、我に返ったのか声を荒げた。

「あぁ!昨日の精霊様だ」

「御子諸君、昨日ぶりだな」

どうやら野良猫と御子達は知り合いではあるようだ。

「どういうご関係で?」

「ええと、昨夜メダルを使った祈りの練習を皆でしていた際に、精霊様がそのお姿でお見えになられまして。聖魔法の特訓をして頂いたのです」

イズミが野良猫に顔を向けると、光の女神に尻尾の付け根を軽く叩かれていた。

「お主らの練度ではオブリビアで少々苦労しそうだったのでな、軽くコツを教えたのだ」

「軽く?」

野良猫の言葉に疑問形で返したのはロレッタだった。
彼女基準では野良猫の特訓が軽くの領域を逸脱していると感じているのかもしれないが、この場ではそれ以上の発言はしなかった。

「御子の皆さんと直接会うのは初めてね。私は…この精霊の保護者みたいなものよ」

光の女神は自らの名を名乗りはしなかったが、その圧倒的な魔力を感じ取った御子達は無意識に悟っていた。

テレジア達は椅子から立ち上がると、綺麗かつ丁寧な礼をする。

「お初お目にかかれて光栄で御座います」

「テレジア、セリーヌ、ロレッタ。そんなに硬くならなくても良いわよ…ここは教会ではありません」

「しかし…」

女神は顔を上げた御子達が身に付けているメダルを見つけると、表情が柔らかくなった。

「イズミ、あのメダルは私の横顔を模したのかしら?」

「元々はジェヴェドール王国に居た時にお世話になったエレナ・ブロズムナード嬢が魔法で作り上げた、女神様の氷像をモデルにしています」

「うーん…出来れば正面からのレイアウトで微笑んでいる方が、ご利益があるように感じませんか?この様なイメージで」

女神はガラス製に見えるペンとインクと羊皮紙を実体化すると、スラスラと女神が思い描くメダルのイメージを描いてイズミに見せた。
非常に緻密に描かれている。

我が道を行く女神様に苦笑しつつ、イズミはメガネをかけてマスタングにイメージ図をスキャンしてもらう。

「確認しました。実体化しますか?」

「よろしく頼む…ベリア、すまないがマスタングから荷物を回収して来てくれないか?礼はカクテルのサービスでどうだ」

「任されよう!」

ベリアは凄まじいスピードで部屋を出ると、全速力でマスタングへと向かって走り出した。

女神が描いたイメージ図をイズミは受け取らず、テレジア達に渡すように頼むと、女神は羊皮紙の空白部分に魔法陣と何かの文字を書いてからテレジアに手渡した。

「イズミ!回収して来た」

「早いな」

「お菓子と、カクテルな!」

目の前に美味しい餌があると、人は限界を超えた能力を発揮出来る事もあると聞いた事があるが、ここで発揮するものなのだろうか。
疑問に感じつつメダルを受け取ると、女神様のチェックが入った。

「どれとれ…流石は我の眷属が拵えただけの事はある、完璧ね」

わざとらしく言葉にした女神は、メダルを3人に直接手渡した。

「ありがとう御座います!有難き幸せ」

「私、今までで1番感動していますわ!」

「温かい…母に抱擁された時の温もりと安らぎに似たものを感じます」

三者三様の感想を述べているが、大切な事がまだ始まっていない。

「ええと皆様、席にお座り下さい」

イズミが皆に落ち着いてもらうと、改めて菓子の用意をする。
ちゃんとこの部屋に居る人数分と野良猫分である。

「この場を作った理由は…忘れちったな、取り敢えずオブリビア調査前のお茶会を始めるとしましょう!お酒は少々お待ちを」

こうして突然のゲストを含めたお茶会が始まった。
皆は用意されたお菓子…イチゴのショートケーキ、マカロン、数種類のクッキー…を真剣な表情で見ていたがベリアと女神は迷わずクッキーに手を伸ばしている。

イズミは全員分の水と紅茶を用意して渡し終えると、カクテル作りに取りかかる。
ジンとライムジュースと、今回はシロップも入れてシェイクする。

ジンは特級品のドワーフ酒、ライムジュースはカクテルセットの物を使い、シロップはヒュミトールの酒屋で見つけた、トロミのある砂糖水で代用した。
アイテムボックスは非常に便利で氷も溶けずに保管が出来るようなので、今後も何かと活用出来そうである。

シェイカーに僅かに残ったギムレットを手の甲に乗せて口へ運び、完成度を確かめる…自分で作るにしては上出来だろう。

「お待たせしました、ギムレットです」

突然シェイクを始めたイズミに驚きつつも、テレジア達は女神様とベリアに渡されるカクテルから目が離せずにいた。
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