婚約破棄された俺をお前が好きだったなんて聞いてない

十山

文字の大きさ
11 / 12

10.婚約破棄されたオレをお前が好きだったなんて聞いてない

しおりを挟む
翌日のうちに密猟者たちは侯爵家に送られたが、元司教が絡んでいるため、弟は侯爵家から騎士を伴い、王都に罪人を連行する事となった。

慌ただしく王都に戻ることになった弟は、アトラ司教に挨拶が出来ないと残念がっており、オレが代わりに挨拶しておくからと見送った。
侯爵家から戻り、弟からの挨拶を伝える。

「エミリオくん、いい子だなぁ…」
「ほんとーに、お前はこの地に残るのか?お前ほどの実力なら、引く手数多だろうに…」
「言ったじゃないですか。僕はこの地に来たかったから、魔獣と親和性の高いアトラの名を継いだんですって」
「それは聞いたが…」
本当にこんな実力がある奴が、僻地に居ていいのだろうか…。

「…僕と、廊下で話したの覚えてますか?」
「うーん…内容はよく覚えてないが、オマエが光ってたのは覚えてる」
「そうでしたか…そりゃそうですよねぇ…」

ルキーニは緊張した面持ちから、ふう、とため息をついた。

「何がだ」
「あれは、ローレンス先輩と婚約破棄したって聞いて、僕にもチャンスがあるか聞きに行ったんです。先輩は、ローレンス先輩の事と思ったんでしょうが、あれは!僕がレオナルド先輩の恋人になれるチャンスがあるか聞いたんです!!」
「全くそんな風には思わなかったが…?」

あの日は婚約破棄されて、非常にムシャクシャしていたし、ルキーニが原因だと思いこんでたからな…。

「レオナルド先輩って、いつも僕を見てたじゃないですか…」

ルキーニは頬を染めて恥ずかしそうに言う。全く覚えがない。

「オレが、お前を?」
「ハイ…だって先輩、あんなにローレンス先輩がロドニーを気に掛けてたのに、相手が僕だと思ってたんでしょう?ローレンス先輩とロドニーと一緒に居たから見てたんだなって、今ならわかりますけど…僕はいつも先輩の視線を感じてドキドキして…ちょっとだけ、ちょっとだけ、期待して…それで、婚約破棄したと聞いて思い切ってチャンスがあるか聞きに行ったら両想いだって言うし、釣り合いが取れるように頑張らなきゃって…」
ルキーニは益々真っ赤になって恥ずかしそうに目を伏せた。
「それから接触の無いまま先輩は卒業して、おかしいなって思ったりもしたけど、先輩が結婚しない限りはチャンスはあるって励みにして、血反吐を吐きながら修練して…」

そういや言ってたな…今のままじゃ釣り合わないとかって。相手がオレとか、全く思わずに。

それにしても、オレが目で追いかけていたからだと…?!言われてみれば、近くに居たはずのロドニーは全く覚えてない。どうしたって、ルキーニに目がいっていた。たまに目が合って笑い掛けられると、不思議な気持ちになった。あのあざとい顔で他の奴を見てると顔を背けたくなって…。

「そういうわけで!学園に居た頃から好きなんです!結婚してください!」
「はぁっ?!」

ぐっと距離を詰めて、両手を握られる。顔を近付けて、背が俺より高いくせに上目遣いで見つめる瞳は潤んで輝いている。

「先輩、好きです…」
「あ、あざといんだよ…その顔やめろ…」
「僕の事、嫌ですか…?」
「ええと…」
「先輩…イエスならキスして」
「はぁっ?!いきなり?!」

じっと見つめられると、もうどうでもよくなってくる。なにより、オレはルキーニのこの顔に弱いようなのだ。
……………あの続きも、したい気もするし。

もうヤケだ。

ぎゅっと口を硬くして、唇に当てた。
「!」
ルキーニは、綻ぶように笑って、口付けてきた。オレの不器用なキスと違って、優しく啄むようなキスだ。
「嬉しいです…」
次第に深くなり、舌で咥内に侵入してくる。こんなのみっともないと思いながらも、お互いの唾液が混じり合い、舌を絡めると気持ちがいいなんて。

「先輩、結婚してくれるってことでいいんですよね?!」
「ああ…」
「やったぁーーーーー!!!」

ルキーニはキラキラと光を放つ。

「まぶしいぞ…」
「す、すみません!嬉しくて…」

ぎゅうぎゅうと巨体に抱き締められ、ため息をついた。
こいつには勝てない。このあざとい顔を見ると、かわいくて仕方ないと、認めるしかない。



というわけでトントン拍子に結婚することになった。
魔獣対策で、息子が婚期を逃してしまって申し訳ないと思っていたらしい両親は大喜びだった。
ルキーニは貴族ではないが、高位神官のために身分差は問題にならなかった。親には相手は平民でもいいと言われていたのだから、身分は関係無かっただろうが。

そして…

想像していた通りに、結婚式でルキーニは光輝いた。誓いのキスをした時に。まばゆい光を放ち、列席者に暖かい光が降り注ぎ、その神々しい様は伝説となったのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女が捨てた陰気で無口で野暮ったい彼は僕が貰います

卯藤ローレン
BL
「あなたとの婚約を、今日この場で破棄いたします!」――王宮の広間に突然響いた王女の決別宣言。その言葉は、舞踏会という場に全く相応しくない地味で暗い格好のセドリックへと向けられていた。それを見ていたウィリムは「じゃあ、僕が貰います!」と清々しく強奪宣言をした。誰もが一歩後ずさる陰気な雰囲気のセドリック、その婚約者になったウィリムだが徐々に誤算が生じていく。日に日に婚約者が激変していくのだ。身長は伸び、髪は整えられ、端正な顔立ちは輝き、声変わりまでしてしまった。かつての面影などなくなった婚約者に前のめりで「早く結婚したい」と迫られる日々が待っていようとは、ウィリムも誰も想像していなかった。 ◇地味→美男に変化した攻め×素直で恐いもの知らずな受け。

追放系治癒術師は今日も無能

リラックス@ピロー
BL
「エディ、お前もうパーティ抜けろ」ある夜、幼馴染でパーティを組むイーノックは唐突にそう言った。剣術に優れているわけでも、秀でた魔術が使える訳でもない。治癒術師を名乗っているが、それも実力が伴わない半人前。完全にパーティのお荷物。そんな俺では共に旅が出来るわけも無く。 追放されたその日から、俺の生活は一変した。しかし一人街に降りた先で出会ったのは、かつて俺とイーノックがパーティを組むきっかけとなった冒険者、グレアムだった。

契約結婚の裏側で

riiko
BL
潤は付き合って十年の恋人から、ある日「俺、結婚する」と言われた。 順調に愛を育てたはずなのに、彼は会社のために結婚することを一人で決めた。「契約結婚」の裏側で自分を愛し続けようとする恋人がわからない。心の底から愛する人の愛人になるという選択肢は絶対になかった。 だが、彼の決断の裏にはとんでもない事情があった。それを知ったとき、潤は…… 大人の男の十年愛を振り返りながら綴ります。 性描写の入るシーンには タイトルに※マークを入れているので、背後にはご注意くださいませ。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

【完結】逆転シンデレラ〜かわいい「姫」は、俺(王子)を甘やかしたいスパダリだった〜

粗々木くうね
BL
「本当はずっと、お姫様になりたかったんだ……」 周りから「王子様」と持て囃され、知らず知らずのうちにその役割を演じてきた大学二年生の王子 光希(おうじ みつき)。 しかし彼の本当の願いは、誰かを愛す“王子”ではなく、誰かに愛される“お姫様”になることだった。 そんな光希の前に現れたのは、学科のアイドルで「姫」と呼ばれる、かわいらしい同級生・姫川 楓(ひめかわ かえで)。 彼が光希に告げたのは、予想もしない言葉だった──。 「僕に……愛されてみない?」 “姫”の顔をした“王子様”に、心も身体も解きほぐされていく──。 “王子”が“お姫様”になる、逆転シンデレラストーリー。 【登場人物】 姫川 楓(ひめかわ かえで) ・ポジション…攻め ・3月3日生まれ 19歳 ・大学で建築を学ぶ2回生 ・身長170cm ・髪型:ミディアムショートにやわらかミルクティーブラウンカラー。ゆるいパーマをかけている ・目元:たれ目 ・下に2人妹がいる。長男。 ・人懐っこくて愛嬌がある。一見不真面目に見えるが、勉学に対して真面目に取り組んでいて要領もよく優秀。 ・可愛いものが好き。女友達が多いが男友達ともうまくやってる。 ・おしゃれが大好き。ネイルもカラフル。 ・王子とセットで「建築学科の姫」と呼ばれている ・かわいい見た目でペニスが大きい 王子 光希(おうじ みつき) ・ポジション…受け ・5月5日生まれ 20歳 ・大学で建築を学ぶ2回生 ・身長178cm ・髪型:センターパートのラフショート。ダークトーンのアッシュグレー ・目元:切れ長 ・空気が読める。一軍男子。学業もスポーツも割とよくできる。 ・上に姉と兄がいる。末っ子。 ・姫川とセットで「建築学科の王子」と呼ばれている ・「かっこいい・頼れる王子」像を求められるので、自然と演じて生きてきた。本当は甘えたいし愛されたい。家族には甘えられる。

パン屋の僕の勘違い【完】

おはぎ
BL
パン屋を営むミランは、毎朝、騎士団のためのパンを取りに来る副団長に恋心を抱いていた。だが、自分が空いてにされるはずないと、その気持ちに蓋をする日々。仲良くなった騎士のキトラと祭りに行くことになり、楽しみに出掛けた先で……。

ぼくが風になるまえに――

まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」 学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。 ――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。 精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。 「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」 異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。 切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。 ダレン×フロル どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...