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「……読心魔法は禁帯出本を漁れば載ってると思う」
(もし人の心が読めるなら、どうしてエドが俺を避けるのか、その原因がわかるかもしれない)
それがまるで神から受けた啓示のように思えた。
「ただ実際にできるかどうかは……、いや……ロイに聞くか。いや流石にそれは……」
「あら、あんたにしては名案じゃない?」
ロイとは二人と同い年の従弟のロイの事だ。魔法学校始まって以来の天才と名高く、成人前の優秀な魔法使いに与えられる希少な『青の鍵』まで授与されている。だけどちょっと浮世離れして猪突猛進なところがあり、それが周りを巻き込んで大騒動を起こしてしまうのだ。
「いや。流石にロイまで巻き込めない。むしろ大ごとになりそうだ。自分でどうにかする」
「そんな生意気なこと言って、読心なんて高度な魔法をお前が使えるの?」
「自分で頼んだくせに、何て言い草だよ。俺だって姉さんと違って上位の鍵持ちだからな」
ふふんっとたまにはやりこめてやろうと強く出たら、姉はすぐに目を怒らせて言い返してきた。
「本当に生意気! うまく行かなかったら、お前なんて『キャンキャン』の刑に処してやるんだからね」
「なっ!」
キャンキャンとは犬の鳴き声でしか喋れなくなる魔法のことだ。姉が使うとんでもないお仕置き魔法を思い出してぶるぶるっと身体を震わせた。
「ふざけんな。あれやられたら卒業まで人の言葉が喋れなくなるだろ!」
まだ姉が今よりはひねくれていなかった頃、ユーディアを苛めた相手に仕返しの為にかけたりしていた。ユーディア自身も姉弟喧嘩の末、癇癪を起した姉にかけられてしまったことがある。その時は両親に叱られてたものの姉は解呪するまでの魔法のセンスがなくユーディアは効力が薄れるまでひと月あまりも不便を強いられた。
「それが嫌なら、せいぜい頑張りなさいよ。ダンスの授業が始まるまでに。絶対よ」
姉の執念深さは異常だから、やるといったら必ずやるだろう。
(残りの学校生活が大部分『キャンキャン』になるなんて、あれだけは二度とごめんだ)
ユーディアは苦悩の表情で頭に手を当てると、また「はあ」っと一際大きく溜息をついた。
※※※
数日後。ユーディアが寮へと続く花苑脇の道を歩いている時、休憩用の椅子に腰かける華奢な人影を目にして手を振った。
「ローイ! 帰ったのか? アズールは元気だったか?」
ロイは本を閉じるとひらひらと可愛らしくこちらに手を振る。
百年に一人の天才とまで謳われたロイだが、性格は気さくで好きなことには一直線、それで失敗もするが少しも憎めない。それはきっと飛び切りの笑顔と、この愛嬌溢れる大きなタレ目のせいだろう。
彼は昨年の秋にとある伝説を作った。
未成年の魔法学校の学生は試験に合格し鍵を得るまで、一人で他国に行くことを禁じられている。
だがロイは全学科満点という稀に見る優秀な成績を叩きだすと、感動した学長から青い鍵を特別に授与された。
だがロイはその後直ちに一人国境を越え、隣国に帰った恋人に愛を伝えに行ったのだ。
そこでひと騒動起こして謹慎処分を食らったが、学生たちは皆恋の為なら危険もいとわぬその姿勢と勇気を英雄として褒めたたえた。
ユーディアが近づくとロイの濃紺のローブを彩る鳥を模したブローチが「ピピピ」と歓迎するように鳴いた。
優美な金の小鳥はロイの異国の恋人からのプレゼントだ。ユーディアは小鳥の頭を撫ぜると、自分もロイの隣に腰かけた。
(もし人の心が読めるなら、どうしてエドが俺を避けるのか、その原因がわかるかもしれない)
それがまるで神から受けた啓示のように思えた。
「ただ実際にできるかどうかは……、いや……ロイに聞くか。いや流石にそれは……」
「あら、あんたにしては名案じゃない?」
ロイとは二人と同い年の従弟のロイの事だ。魔法学校始まって以来の天才と名高く、成人前の優秀な魔法使いに与えられる希少な『青の鍵』まで授与されている。だけどちょっと浮世離れして猪突猛進なところがあり、それが周りを巻き込んで大騒動を起こしてしまうのだ。
「いや。流石にロイまで巻き込めない。むしろ大ごとになりそうだ。自分でどうにかする」
「そんな生意気なこと言って、読心なんて高度な魔法をお前が使えるの?」
「自分で頼んだくせに、何て言い草だよ。俺だって姉さんと違って上位の鍵持ちだからな」
ふふんっとたまにはやりこめてやろうと強く出たら、姉はすぐに目を怒らせて言い返してきた。
「本当に生意気! うまく行かなかったら、お前なんて『キャンキャン』の刑に処してやるんだからね」
「なっ!」
キャンキャンとは犬の鳴き声でしか喋れなくなる魔法のことだ。姉が使うとんでもないお仕置き魔法を思い出してぶるぶるっと身体を震わせた。
「ふざけんな。あれやられたら卒業まで人の言葉が喋れなくなるだろ!」
まだ姉が今よりはひねくれていなかった頃、ユーディアを苛めた相手に仕返しの為にかけたりしていた。ユーディア自身も姉弟喧嘩の末、癇癪を起した姉にかけられてしまったことがある。その時は両親に叱られてたものの姉は解呪するまでの魔法のセンスがなくユーディアは効力が薄れるまでひと月あまりも不便を強いられた。
「それが嫌なら、せいぜい頑張りなさいよ。ダンスの授業が始まるまでに。絶対よ」
姉の執念深さは異常だから、やるといったら必ずやるだろう。
(残りの学校生活が大部分『キャンキャン』になるなんて、あれだけは二度とごめんだ)
ユーディアは苦悩の表情で頭に手を当てると、また「はあ」っと一際大きく溜息をついた。
※※※
数日後。ユーディアが寮へと続く花苑脇の道を歩いている時、休憩用の椅子に腰かける華奢な人影を目にして手を振った。
「ローイ! 帰ったのか? アズールは元気だったか?」
ロイは本を閉じるとひらひらと可愛らしくこちらに手を振る。
百年に一人の天才とまで謳われたロイだが、性格は気さくで好きなことには一直線、それで失敗もするが少しも憎めない。それはきっと飛び切りの笑顔と、この愛嬌溢れる大きなタレ目のせいだろう。
彼は昨年の秋にとある伝説を作った。
未成年の魔法学校の学生は試験に合格し鍵を得るまで、一人で他国に行くことを禁じられている。
だがロイは全学科満点という稀に見る優秀な成績を叩きだすと、感動した学長から青い鍵を特別に授与された。
だがロイはその後直ちに一人国境を越え、隣国に帰った恋人に愛を伝えに行ったのだ。
そこでひと騒動起こして謹慎処分を食らったが、学生たちは皆恋の為なら危険もいとわぬその姿勢と勇気を英雄として褒めたたえた。
ユーディアが近づくとロイの濃紺のローブを彩る鳥を模したブローチが「ピピピ」と歓迎するように鳴いた。
優美な金の小鳥はロイの異国の恋人からのプレゼントだ。ユーディアは小鳥の頭を撫ぜると、自分もロイの隣に腰かけた。
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