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「元気だったよ。上花会の前にはこちらに来てくれるから、ユーディアも交えて一緒に食事でもしようって言ってたよ」
「そうか。ありがとう。今でも信じられないな。ロイがあんな大胆なことをしでかしたなんて。努力して青い鍵まで手に入れて、アズールに会いたい一心を見事に貫き通した。お前って本当にすごい奴だな。従弟として鼻が高いよ」
照れて頭をかいた優男は、とても豪胆で情熱的な男にはみえない。だが代わりに恋人への愛情から零れんばかりの笑顔を浮かべている。
「だって好きな人の傍に居たくて頑張る気持ちに勝る勇気はないもん。そうだ、ユーディア。お手紙ありがとう。頼まれてたこれ、ちょうど君に渡そうと思ってたんだ」
「え、まさかあれ、本当にできたのか?」
「できたよ。はい」
ロイは手を出すようにユーディアに促すと、下げていた布袋から小さなものを二つ取り出し掌に載せてきた。
「ちっさいな」
「そうそう。口の中に入れるから小さく作ったの。竜の唾液を中に入れて泰氷樹(たいひょうじゅ)の樹液で固めたもの。だから魔石っていうか正確には樹脂の塊なんだけど。竜同士は飛行中、仲間と心の声で喋るから読心魔法の素材に最適なのは納得だね。ちなみにこの魔石を作る手法は白き民といわれた一族の出であり魔石研究の第一人者である……」
「分かった、細かい話はいいから。ほんと、お前って天才! この年で魔石の錬成ができるし、そもそも竜の唾液なんて身内に竜医がいるロイしか手に入らないよ。ほんと、助かる。これを口の中に忍ばせた状態で、相手の身体に触れると心が読めるのか。飲み込まないように気を付けないと」
「万が一飲み込んでもそのうちお腹から出るから大丈夫。流石に二度と使えないけどね」
ちょっとロイで試させてもらおうかと思ったがすぐに諦めた。率直すぎて裏表がないことでは定評のある彼の心を読んだとて、あまり効果が感じられるとは思えなかったからだ。
(これでエドの気持ちが分かる)
「もう一つ、小瓶に入ってる魔法薬が人の心と行動を操れるやつだよ。これは本当に禁忌中の禁忌薬だけど、精度は怪しいかも。飲ませて耳元で「リリールーを上花会に誘って」と言えばいい、はず」
「はずって。怖いなあ。人に飲ませんの」
「でもいいの? エドゥアルドにこんなもの使って」
「……こっちは出来れば使いたくないけど。でも上手くいかないと、俺また姉さんにキャンキャン魔法かけられる」
「キャンキャン! あれは最悪だ。あのトンチキ魔法、僕にも解呪できないんだ。一度じっくり調べてみたいな。でもさあ、そもそもエドゥアルドがリリールーを誘うなんてこと自体、ありえなくない? 幾ら婚約者だって、彼は……」
重たい前髪の間からロイが何か言いたげに見上げてきたけど、ユーディアはむっと唇を尖らせた。
「なんだよ。元はといえは君んとこの兄さんがリリーの事ふったから、初恋拗らせておかしくなってるだろ。あそこまで捻くれた人じゃなかったのに、国一番の高嶺の花になってロッド従兄さんを見返してやるんだって」
「リリールーが兄さんに告白したのって三年も前でしょ? 兄さんその時もう竜医で働いてたもん。成人前の子に告白されて頷けるわけないじゃん。いくら従妹が可愛くても許されることじゃないし。成人した今なら分からないけど」
「それって脈はあるってこと?」
「脈は知らないけど、兄さんは何時でも竜が恋人で彼女いないし。でも君もリリールーも王都のおじい様のお気に入りだ。早々に諦められた僕や兄さんと違って、例えエドゥアルドとうまく行かなかったとしても、これからもどんどんお祖父様の目に叶う相手との縁談を押し付けられるよ」
「元気だったよ。上花会の前にはこちらに来てくれるから、ユーディアも交えて一緒に食事でもしようって言ってたよ」
「そうか。ありがとう。今でも信じられないな。ロイがあんな大胆なことをしでかしたなんて。努力して青い鍵まで手に入れて、アズールに会いたい一心を見事に貫き通した。お前って本当にすごい奴だな。従弟として鼻が高いよ」
照れて頭をかいた優男は、とても豪胆で情熱的な男にはみえない。だが代わりに恋人への愛情から零れんばかりの笑顔を浮かべている。
「だって好きな人の傍に居たくて頑張る気持ちに勝る勇気はないもん。そうだ、ユーディア。お手紙ありがとう。頼まれてたこれ、ちょうど君に渡そうと思ってたんだ」
「え、まさかあれ、本当にできたのか?」
「できたよ。はい」
ロイは手を出すようにユーディアに促すと、下げていた布袋から小さなものを二つ取り出し掌に載せてきた。
「ちっさいな」
「そうそう。口の中に入れるから小さく作ったの。竜の唾液を中に入れて泰氷樹(たいひょうじゅ)の樹液で固めたもの。だから魔石っていうか正確には樹脂の塊なんだけど。竜同士は飛行中、仲間と心の声で喋るから読心魔法の素材に最適なのは納得だね。ちなみにこの魔石を作る手法は白き民といわれた一族の出であり魔石研究の第一人者である……」
「分かった、細かい話はいいから。ほんと、お前って天才! この年で魔石の錬成ができるし、そもそも竜の唾液なんて身内に竜医がいるロイしか手に入らないよ。ほんと、助かる。これを口の中に忍ばせた状態で、相手の身体に触れると心が読めるのか。飲み込まないように気を付けないと」
「万が一飲み込んでもそのうちお腹から出るから大丈夫。流石に二度と使えないけどね」
ちょっとロイで試させてもらおうかと思ったがすぐに諦めた。率直すぎて裏表がないことでは定評のある彼の心を読んだとて、あまり効果が感じられるとは思えなかったからだ。
(これでエドの気持ちが分かる)
「もう一つ、小瓶に入ってる魔法薬が人の心と行動を操れるやつだよ。これは本当に禁忌中の禁忌薬だけど、精度は怪しいかも。飲ませて耳元で「リリールーを上花会に誘って」と言えばいい、はず」
「はずって。怖いなあ。人に飲ませんの」
「でもいいの? エドゥアルドにこんなもの使って」
「……こっちは出来れば使いたくないけど。でも上手くいかないと、俺また姉さんにキャンキャン魔法かけられる」
「キャンキャン! あれは最悪だ。あのトンチキ魔法、僕にも解呪できないんだ。一度じっくり調べてみたいな。でもさあ、そもそもエドゥアルドがリリールーを誘うなんてこと自体、ありえなくない? 幾ら婚約者だって、彼は……」
重たい前髪の間からロイが何か言いたげに見上げてきたけど、ユーディアはむっと唇を尖らせた。
「なんだよ。元はといえは君んとこの兄さんがリリーの事ふったから、初恋拗らせておかしくなってるだろ。あそこまで捻くれた人じゃなかったのに、国一番の高嶺の花になってロッド従兄さんを見返してやるんだって」
「リリールーが兄さんに告白したのって三年も前でしょ? 兄さんその時もう竜医で働いてたもん。成人前の子に告白されて頷けるわけないじゃん。いくら従妹が可愛くても許されることじゃないし。成人した今なら分からないけど」
「それって脈はあるってこと?」
「脈は知らないけど、兄さんは何時でも竜が恋人で彼女いないし。でも君もリリールーも王都のおじい様のお気に入りだ。早々に諦められた僕や兄さんと違って、例えエドゥアルドとうまく行かなかったとしても、これからもどんどんお祖父様の目に叶う相手との縁談を押し付けられるよ」
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