姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました

天埜鳩愛

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「それは、ロッド従兄さんとお前にはどんな困難でも跳ねのける実力があるからだろ。好きなように生きたって周りを黙らせて、唸らせる。でも俺は違う。魔力も実力も中途半端だ。たった一人で知らない街に来て、誰の力も借りずに自分の力だけで生きて行こうだなんて、エドみたいな覚悟もできない。俺なんて兄さんやお祖父様の威光の下でおこぼれを貰って、細々と生きるのが似合いなんだ」

 皮肉気に唇を歪めて笑うと、ユーディアは俯いた。
 ロイは真ん丸な目を細めて、慰めるようにユーディアの肩に手を置いてきた。

「確かにエドゥアルドは『ここで目的を叶えるまで故郷には戻らない。自分の力で必ずやり遂げたい』そう言ってたよな」
「そうだ」
「これからも傍に居続けたい人がいるからこそ、余計に自分の足で立ちたいんだろうと俺はおもうけどな」

 そうロイはごにょごにょと続けて小さく呟き、フードの影の奥に潜むユーディアの優美な顔を見上げた。だがユーディアはお決まりの物思いに浸ってしまったようで聞いていないようだ。

(かっこいいよな、エドゥアルド。故郷を離れてこっちに来て、王都で自分の力を試して生きて行こうとしてる。ああいうとこ、すごく憧れる)

 眩しい存在だった彼の傍に居られなかったこの半年、寂しくて切なくて堪らなかった。だけど自分から彼の元へ出向く勇気も出なかった。構内で見かけると目で追ってしまい、食堂では常に彼が目に入る位置に後から座った。だけど声はかけられなかった。

(嫌いだって態度をはっきり取られたら、流石に凹んで立ち直れない)
「……とりあえずリリーはエドを誘って上花会で華々しく踊れればいいみたいだから、それとなく誘導してみる。あんな人だけど、一応姉だからさ。リリーには明るく幸せにしていて欲しいんだよ。機嫌悪いと怖いし。色々ありがとう。エドを探しに行ってくる」
「エドゥアルドなら多分、温室にいるかも。僕ちょっと前に、温室に向かう彼に会ったんだよね。育ててた希少な花が咲そうだから一晩見守るって」
「花が、咲く……」

 ユーディアはその言葉を噛み締めるように呟くと何かを決心した顔つきになった。

「俺、差し入れ持って行ってみる」
「ユーディア、あのさあ」

 言うないなや、話を最後まで聞くこともなく、ユーディアはフードが取れるほど勢いよく立ち上がると、細い白金の巻き毛をフワフワさせながら走り去って行った。

「エドゥアルドの家系って歴史を紐解くと凄い反転魔法の使い手なんだけど、そういう相手に読心魔法使うとどうなるんだろう。すごく興味深い」

※※※
 
(食堂のおばさんにミートパイと果物と果実酒分けて貰えた)

 ユーディアは日頃、金属をピカピカに磨きあげる得意の魔法で、食堂のおばさん達にとても重宝されている。その感謝の印が焼きたてのパイに変身した。食欲をそそる香りの立てる籠を手に意気揚々と歩いて来たが、日が傾き薄暗くなった植物園の前に来ると緊張から足が止まってしまった。

(なんて声掛けよ、久しぶりすぎて。もし、歓迎されなかったら……)

 愛想がいい方ではないエドゥアルドは、ユーディア以外には不機嫌なのかと疑われるほどにこりともしない。だからこそ彼が自分を特別扱いしてくれているようで、内心嬉しくてしょうがなかった。
 だが今、けんもほろろに追い返されたら、寂しくて途方もなく落ち込んでしまうだろう。ひっそり泣いてしまうかもしれない。ユーディアは中に入ろうか入るまいかこの期に及んで逡巡しながらブラブラと籠を振り回していた。
 すると後ろから優しくぽんっと肩を叩かれた。

「ひやっ!」 
「すまん。やはりユーディアか。ここで何してる?」
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