46 / 232
第一章
電撃婚
しおりを挟む
他人に自分の内情を語るのは好きじゃない。
けれど背に腹は代えられないし、依舞稀には他人ではなく身内になってもらわねば困るのだ。
「事の発端は半年前だ」
遥翔は長い足を窮屈そうに組むと、溜め息交じりに語り始めた。
「一年前に、俺の父である社長から会長になったのは知ってるな?」
「もちろんです」
空席になった社長の椅子には副社長である遥翔が座るものだと誰しもが思っていたが、一年たった今も社長ポストは空いたままだ。
それ故に『副社長が社長になれないのには何か原因があるはずだ』と噂話が広がったものだ。
「半年前に、その会長から言われたんだ。そろそろ俺に社長を任せるってな」
「それは……おめでとうございます」
ルックスにも体格にも恵まれ、地位も名誉も、お金さえも持っているとは。
神様というのはどれだけ不公平なのだろうと思ったが、依舞稀は何とか堪えてお祝いの言葉を口にした。
「しかし、だ」
やっと社長職を任せられると喜んだのも束の間。
「就任には条件があると言いやがった」
経営を引退した会長に変わって引き継いだのは遥翔である。
もともと経営は会長である誠之助よりも遥翔の方がセンスが良かった。
ここ数年で一気に有名になったのも、遥翔の腕があったからだ。
それなのに今さら何の条件があるというのか。
今にも不服を口に出しそうな遥翔に対して、誠之助が出した条件とは。
「結婚して愛妻家になれ、ってな」
何とも冗談めいためちゃくちゃな条件だと思ったが、残念ながら誠之助は大真面目だったのだ。
けれど背に腹は代えられないし、依舞稀には他人ではなく身内になってもらわねば困るのだ。
「事の発端は半年前だ」
遥翔は長い足を窮屈そうに組むと、溜め息交じりに語り始めた。
「一年前に、俺の父である社長から会長になったのは知ってるな?」
「もちろんです」
空席になった社長の椅子には副社長である遥翔が座るものだと誰しもが思っていたが、一年たった今も社長ポストは空いたままだ。
それ故に『副社長が社長になれないのには何か原因があるはずだ』と噂話が広がったものだ。
「半年前に、その会長から言われたんだ。そろそろ俺に社長を任せるってな」
「それは……おめでとうございます」
ルックスにも体格にも恵まれ、地位も名誉も、お金さえも持っているとは。
神様というのはどれだけ不公平なのだろうと思ったが、依舞稀は何とか堪えてお祝いの言葉を口にした。
「しかし、だ」
やっと社長職を任せられると喜んだのも束の間。
「就任には条件があると言いやがった」
経営を引退した会長に変わって引き継いだのは遥翔である。
もともと経営は会長である誠之助よりも遥翔の方がセンスが良かった。
ここ数年で一気に有名になったのも、遥翔の腕があったからだ。
それなのに今さら何の条件があるというのか。
今にも不服を口に出しそうな遥翔に対して、誠之助が出した条件とは。
「結婚して愛妻家になれ、ってな」
何とも冗談めいためちゃくちゃな条件だと思ったが、残念ながら誠之助は大真面目だったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される
アルケミスト
恋愛
崔国の皇太子・龍仁に仕える女官の朱音は、人間と花仙との間に生まれた娘。
花仙が持つ〈伴侶の玉〉を龍仁に奪われたせいで彼の命令に逆らえなくなってしまった。
日々、龍仁のいじわるに耐えていた朱音は、龍仁が皇帝位を継いだ際に、妃候補の情報を探るために後宮に乗り込んだ。
だが、後宮に渦巻く、陰の気を感知した朱音は、龍仁と共に後宮の女性達をめぐる陰謀に巻き込まれて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる