私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ

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第4話 知らなかったのは彼らだけ

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第4話 知らなかったのは、彼らだけ

王宮内では、混乱が日常になりつつあった。

「この書類、誰が担当していたんだ?」

「……エリシア様、です」

執務官の一人が、恐る恐る答える。

「では、こちらは?」

「それも……」

「こっちは?」

沈黙が落ちた。

やがて、誰かが絞り出すように口を開く。

「……すべて、エリシア様です」

室内が、しんと静まり返った。

外交文書、財務調整、各貴族家との折衝。
災害時の支援手配に、隣国との非公式交渉。

一つひとつは、取るに足らない仕事に見えていた。だが、それらはすべて、彼女が一人で“裏から”回していた歯車だった。

「……なぜ、誰も気づかなかった」

誰かの呟きに、答える者はいない。

彼女は、決して前に出なかった。功績を誇ることも、評価を求めることもなかった。

ただ――
「必要だから、やっていた」
それだけだった。

――そして今。

彼女がいない王宮は、自分たちの無能さを、否応なく突きつけられていた。

エリシアが担っていた執務の多くは、
一つひとつを見れば大したことがないように思える。だが、それらが積み重なれば、国全体に甚大な被害を及ぼす。

次は、どんな問題が起きるのか。

王太子は、気が気ではなかった。

(……こんなことなら)

胸の奥に、認めたくない思いが、かすかに浮かぶ。

(エリシアを、追放するべきではなかったのではないか)

そのときだった。

バタバタと、廊下を駆ける足音が響く。

今度は、どれほどの被害報告が届くのか。
そう考えるだけで、王太子の視界は暗くなった。
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