逆転の花嫁はヤンデレ王子に愛されすぎて困っています

蜂蜜あやね

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「ゆっくり挿れるから、力を抜いて。できる?」
 ――できない。そう言ったところで、きっとアシュレイはやめない。
 リリーは小さく頷き、アシュレイの首に腕を回して縋りついた。
 今から彼女に“初めての痛み”と“何か”を与えようとしているのは、この目の前のアシュレイなのに。
 それでもリリーが頼れるのは、彼しかいなかった。
 ぎゅっと噛みしめた歯の音が、リリーがまるで力を抜けていないことを物語っている。
「リリー、怖い?」
「こ、怖いよ。当たり前じゃない!?」
「うん……ごめんね。でも、やめてあげられない」
 想像していた通りの答えだった。
 アシュレイはその切っ先を、緊張で潤いを失ったリリーの入り口にそっと押し当てる。
 カチカチと歯の根が鳴る音が、二人の間に小さく響いた。
 怯えるリリーを可哀想に思いながらも、それ以上に「抱きたい」という熱が勝ってしまう。
 欲に濡れた瞳が、リリーのすべてを見つめていた。
 ふと、アシュレイは何かを思いついたようにリリーの片足を持ち上げ、横に割り開かせた。
 奥を晒されたリリーは反射的に足を閉じようとするが、それすらも許されない。
「やだ!……アシュレイ!?」
 何をされるのかと身を強ばらせるリリーの、柔らかな花芽にアシュレイの指が触れた。
 そっと捏ねられた瞬間、リリーの口から――驚きなのか快感なのか――
 甘く、切ない声が零れ落ちる。
 アシュレイはそのまま花芽を押し広げ、もう片方の手で優しく擦り上げた。
 敏感なそこを何度も弄られるたび、リリーの身体はびくびくと震える。
 それが快感なのかどうかも分からないほどの強烈な刺激に、
「あっ」「うっ」と途切れ途切れの声が漏れ出す。
 声を抑えようとしても、どうしても抑えられない。
 アシュレイの指が生み出す波に、意識が追いつかない。
「すごいね……リリー」
 自分がそうさせているくせに、アシュレイは感嘆の息を漏らす。
 それほどまでに、彼はリリーの乱れる姿に魅入られていた。
「あっ……あっ……ん……」
 潤いを取り戻したその奥に、今すぐにでも自分を埋めたい――
 王子ではなく、ひとりの男としての本能が、アシュレイの瞳に滾る。
 リリーが快感に飲み込まれそうになるその瞬間を見計らい、
 アシュレイは己の先端を、彼女の秘められた奥へとゆっくりと押し入れていった。
「きゃっ……ああ……っ」
 小さく悲鳴を上げたリリー。
 頭半分ほどが入ったところで一度止まり、アシュレイは息を吐く。
 狭くて熱い、リリーの内側が自分を拒むように締めつける。
「い、痛っ……」
 初めての痛みに涙をこぼすリリーを、アシュレイは抱きしめて宥めながらも、決して引かなかった。
「ごめんね、リリー。もうちょっとだけ、我慢して」
 そんな残酷な言葉を、どうしようもなく優しい声で告げる。
 涙に濡れたリリーの顔を見つめながら、アシュレイは思う。
 ――リリー。
 可哀想で、可愛い。


ようやく馴染んだと思ったところで、アシュレイはリリーの頭をそっと撫でてやった。
泣き腫らした目で見上げてくるリリーが、かすれた声で尋ねる。
「……満足なの? 私は、アシュレイのものになったの?」
その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。どれほど無理をさせてしまったのか、見ているだけで胸が締めつけられる。
それでも受け入れてくれた彼女が愛しくて、アシュレイは濡れた頬に何度も口づけを落とした。
「僕はリリーが好きだ。何度も言ってるよね。……リリーも、さすがにわかってるよね?」
リリーは小さく頷く。
何度も言われた。その想いが少し歪んでいたとしても、アシュレイの愛情だけは本物だと、もう否定できなかった。
「じゃあ、君は?」
アシュレイの声が静かに落ちる。
「僕は君をこうして抱いて、僕のものにしたつもりでいる。でも――君はどう思ってる?
 これは僕の独りよがりなの?」
その言葉に、リリーは言葉を失った。
アシュレイのことは――好きだ。
けれどそれは、彼を守りたい、支えたいという想いの延長であって、そういう“好き”なのだと思っていた。
幼い頃から抱いてきた“騎士になる”という夢は、リリーにとって生きる礎だった。
なのに今――こうして彼を中に受け入れてしまって、頭が混乱している。
「……私は、もう元には戻れないんだよね」
ノルティアの逆転を正転させる方法は、今のところ存在しない。
そう書かれていた。
どんなに望んでも、リリーはもう昔のリリーには戻れない。
それは、薄々感じていたことだった。
それなのに――目の前の銀の髪の王子は、それでいいと言う。
「完璧じゃないリリーのままでいてほしい」と。
「アシュレイ……あなたには、ずっと見せたくなかったの」
涙をこらえながら、リリーは微かに笑う。
「あなたの前では、かっこよくて、何でもできる私でいたかった。……だけど、もう戻れないの。
 私、かっこ悪いの。何もできない……それでも――」
「何回も言ってる。――それでもいいんだよ、リリー」
アシュレイが静かに笑い、彼女の頬を撫でる。
「かっこ悪い君も、何もできない君も、全部僕のものになって。……ずっとこのままでいて」
「アシュレイの役に立てないよ。もうあなたを守ることも、支えることもできない。
 騎士の夢だって……」
「言ったよね。――リリー、僕だけの騎士になってって。
 もう守ってくれなくていい。そばにいてくれるだけでいいから」
リリーは静かに目を閉じ、震える唇で囁く。
「それなら……アシュレイの騎士になるよ。
 もう、それしか私には残ってないもの」

 そう告げたリリーの瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。
もう――戻れない。
そして、もう――戻らない。
それは、かつての“完璧だった自分”への、静かな別れの涙のようだった。

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