敵将を捕虜にしたら夫になって、気づけば家族までできていました

蜂蜜あやね

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久しぶりに、二人きりの屋敷へ戻った夜だった。
静けさは深く、まるで二人を包むためだけに用意された帳のように感じられた。
寝室へ向かう途中、イサナはふと足を止める。
かすかに震える声で呟いた。
「……待って。今日は……子供は……」
“できない日よ”と続けるはずだった。
その言葉が喉で止まったのは――
ソウガが彼女の手を迷いなく掴み、強く引き寄せたから。
次の瞬間、熱を帯びた唇が重なる。
「できなくてもいい」
「……お前を抱きたい。それだけだ」
低く落とした声に、イサナの背筋が小さく震えた。
戦場の“青狼”を知る者なら誰も知らない、男の顔だった。
寝台に押し倒され、見上げた先にあるのは――
抑え込んでいた欲を隠しきれず、荒く息を詰めるソウガの姿。
月に一度、ただ“義務として抱かれていた夜”とはまるで違う。
ソウガは声をくぐもらせ、鎧の留め具を乱暴なほどの勢いで外していく。
互いに武人。
装備の外し方は手慣れたものだが、今夜は明らかに様子が違った。
床に放り投げられた鎧が、金属音を響かせる。
ガシャン――。
二人の装備がすべて取り払われ、
イサナの身体には薄い衣が一枚だけとなった。
それを指先でつまみ上げると、布はあっけなく滑り落ちる。
胸元には、戦の邪魔にならぬようにと締められたサラシ。
焦れたソウガがその端を引き解くと――
手のひらにおさまりきるかどうか、そんな慎ましい双丘が、月灯りの下で静かに姿を現した。
「……いやっ……」
胸を押さえようとするイサナの手を、
ソウガはそのまま両手で固定し、
まるで寝台に縫い付けるようにして自由を奪う。
露わになった双丘の先、薄紅色の柔らかな突起が
ふるり……と震える。
恥じらうように、逃げ場を失ったまま。
イサナが身を縮めようとしても、
ソウガの大きな手に阻まれ、
二つの色づいた果実は男の眼前にさらされる。
(見ないで……)
そんな願いも虚しく、体の震えに合わせて小さく揺れた。
「…………っ」
何も言わず、ソウガは片方の果実にそっと口づける。
唇で挟み、ちゅ……と吸い上げる。
「あっ……んっ……」
胸だけでなく、声まで塞ぎたいのに、
両手は固定されたまま。
舌でつつかれ、やわらかく吸われるたび、
イサナの喉から甘い声が零れた。
「ここは……慣れてないな」
「だって……こんなの……初めて……」
途切れ途切れに押し出された声は、
胸の刺激に耐えきれないという告白にも似ていた。
月に一度の排卵日に抱かれていた“任務の夜”――
あの時は、こんなふうに触れられたことは一度もない。
抗議するようなイサナの瞳を、ソウガは熱く、
深く見つめ返す。
そして――
その小さな果実にやさしく噛みついた。
「やっ……あぁ……っ……」
背が跳ね、胸の先がきゅっと強張る。
「子供をつくるのに、胸は関係ないからな」
「今までは……最低限、お前を抱いていただけだ」
荒い呼吸の合間に、低い声が落ちる。
「だが――」
もう遠慮はしない。
黒い瞳が甘く、獲物を捉えるように輝いた。
その瞬間、イサナは悟る。
(この人は……今夜、本気だ)
その目に捕らえられた途端、
逃げ道も、言い訳もすべて奪われていくのだった。


本気を出した“青狼”は、夜に溶け込む闇色の髪を邪魔だと言わんばかりにかき上げた。
 その何気ない仕草だけでも胸がどきりと鳴り、イサナは慌てて視線をそらす。
 何度も刃を交え、体の線も動きも知っているはずの男――。
 けれど捕虜としてこの屋敷に置かれてなお衰えを知らない筋肉の重みと、肌から滲む色気に、正面から目を合わせられなかった。
 次の瞬間、その重みがイサナの上に覆いかぶさる。
 肩口がイサナの口元にまで迫り、息が苦しくなるほどの圧迫感にイサナは思わずソウガの背をドンドンと叩いた。
「重いのよ……」
「では、お前が乗るか?」
 え、という声が出るより早く、体勢はあっという間に入れ替えられた。
 寝台に仰向けになったソウガの上へと放り上げられ、イサナの身体は彼の分厚い胸板にしがみつく格好になる。
 まるで木から降りられなくなった子供が助けを求めるように。
「な、なに……?」
「今日は子供ができにくい日なのだろう? なら、こういうのも悪くないと思ってな。」
 大きな体の上に乗った状態で、下から見上げられる。
 真っ赤になったイサナの顔をソウガが食い入るように眺め、耐えきれなくなったイサナが俯くと、ソウガは彼女の髪を静かに手繰り寄せた。
 ――こっちへ来い、と言うように。
 普段は高く結い上げている、胸の下まである長い髪。
 その髪を優しく引かれれば、自然とイサナの上体は前へと傾き、ソウガの待つ位置へ導かれてしまう。
 傾いだイサナの身体を、ソウガは下からそっと受け止め、柔らかな口づけを落とした。
 下からすくい上げるような、深く甘いキス。
 繰り返されるたびにイサナの奥は柔らかく湿り、受け入れる準備を始めていく。
 ソウガはその変化を離さず感じ取り、さらに唇を寄せる。
 イサナの表情がとろんと溶けはじめた、その瞬間だった。
 ――ソウガの指が、潤んだ奥へと一本、そっと沈んだ。
 

ビクリと震えた腰を逃さぬよう、ソウガはもう一方の手でしっかりと押さえた。
 挿し入れた指はゆっくりと奥を探るように辿り、柔らかな壁をなぞるたびに、くちゅり、と濡れた音が響く。
 その音に重なるように、イサナの喉から甘い声が漏れた。
「こっちは慣れるのが早いな」
 何度か経験した“下への愛撫”には、イサナはすぐに順応してしまう。
 ソウガが決して乱暴に扱わず、必ず優しく抱いてくれると知っているからだ。
 奥は甘く疼き、期待に応えるようにとろりと湿り気を増していく。
「いつもは俺が上だが……今日はお前が上だ」
 そう言いながら、ソウガはイサナの腰を自分の位置に導いた。
 灼熱を帯びた切っ先が、イサナの入り口へぴたりと寄り添う。
「や、やだっ……こわ……っ」
「体を沈めろ。腰を落とせ……入る」
「で、できない……っ」
 ソウガの体の上で固まったイサナの腰を、宥めるように撫でる。
 逃げるな、ではない。ただ受け止めるような優しい圧。
「イサナ……
 お前が“俺を受け入れてくれている”と……感じたいんだ」
 その言葉は、胸の奥に熱く届いた。
 自分から沈むという行為に含まれた意味――
 それが“義務”ではなく、“愛”からのものだと囁かれているようで。
 イサナは短く逡巡し、震える息を吸い込むと、
 意を決したようにゆっくりと腰を落とし始めた。
 自らの動きでソウガを迎え入れるのは、これが初めてだった。
 ゆっくりと。
 瞳に涙を溜めながら。
 それでも確かに――深く、奥へ。
 ようやく半分ほどを受け入れた頃には、
 ソウガの胸は熱く焦がれる想いでいっぱいになっていた。
 目の前の女が涙を耐えながら、自分を招き入れてくれている。
 その事実だけで、胸の奥が張り裂けそうになる。
「イサナ……ありがとう……」
 堪えきれず、喉の奥で押し潰すように――
 愛している、と。
 その想いごと、
 自分のすべてを受け入れてほしいと願うように、
 ソウガはイサナの奥深くへと、ゆっくりと、入り込んでいった。


「あっ……ん……」
 完全にソウガを飲み込んだイサナの奥は、
 下から押し上げられる圧迫と、
 自らの重みで奥に触れてしまう感覚でいっぱいだった。
 力を入れて踏ん張っていなければ、
 そのまま“ずるり”と深くまで導いてしまう――。
 その怖さに、イサナは必死で歯を食いしばり、
 息を殺して溺れるのをこらえていた。
「動かないのか?
 お前が好きなように動いて構わない。」
 主導権を渡そうとするソウガに、
 イサナは首を横に振る。
 そんなもの望んでいない、と。
 どうしていいのか、本当にわからないのだ。
「動け……ない……のよ……。
 こわい……の……」
 すがるようにソウガの胸へ手を伸ばしかけたその瞬間――
 イサナを貫いていたソウガの楔が、
 ずるりと半分ほど抜けかけた。
「んっ……あ……っ」
 イサナは身体をすくませ、涙を浮かべてソウガを見上げる。
「ソウガ……
 動いて……よぉ……」
 女将軍であり、妻であるイサナのその顔。
 怯えと甘さと信頼が混ざった涙。
 ――そんなものを見せられて、
 耐えられる男がどこにいる。
 ましてや、
 その涙が自分だけに向けられていると知っている男が。
「……イサナ」
 名前を呼ぶ声は、
 理性が壊れる“寸前”の低さだった。
 次の瞬間、
 ソウガはイサナの腰をがっしり掴み、
 その身をひっくり返すようにして引き寄せた。
「離すと思うなよ……」
 低く荒い息が、イサナの耳元で震える。
 ゆっくりと抜けかけていた楔を、
 ソウガは逃すまいと
 奥へ――ずぶりと押し戻した。
「っ……ぁあっ……!」
 イサナの身体が跳ね、
 涙がこぼれ落ちる。
 ソウガの手は腰を固定したまま離さない。
 逃がす気など、初めからなかった。
「動かなくていい。
 ……お前が落ちるまで、俺が動いてやる」
 そう宣告すると同時に、
 ソウガは下から腰を押し上げ――
 イサナの深部をなぞるように擦り上げた。
 奥で触れた瞬間、
 イサナは声にならない声を洩らし、
 ソウガにしがみついた。
「っ……ソウガ……っ、や……っ、そこ……!」
「泣きながら頼んだのは……お前だ」
 ソウガは囁き、
 抜けかけた理性を完全に捨てて――
 イサナの腰ごと、自分に沈ませていった。
 


抱きしめられたまま、奥を深く抉られる。
 イサナの口がソウガの肩口にあたり、
 苦しげに息を吸い込むその様子に気づいたのか、
 ソウガはイサナを覆っていた上体を少し起こした。
 角度が変わり、浅い部分を擦るように動き始める。
 深いところを押し潰されるような感覚から一転、
 ほどけるような軽い刺激へと変わったことで、
 イサナは小さく眉を寄せた。
 その僅かな違和感に、ソウガの視線がすぐ反応する。
 イサナが上目づかいに見上げたその顔は、
 ほんの少し――欲しがる者の影を帯びていた。
 その表情を見逃さず、ソウガが小さく笑う。
「物足りなくなったか?」
「え……?」
「お前を抱くときは、大体“深い”からな。」
 その言葉に、イサナは胸の奥が跳ねる。
 子を成すことを前提に抱くなら──
 深く、奥を抉るように抱かれるのは当たり前だった。
 実際、ソウガはいつもイサナの最奥を捕らえる角度で、深く穿つように抱いてきた。
 それが今は、
 苦しいだろうと気遣って浅く突いている。
 イサナは指摘の意味を理解した瞬間、
 羞恥が一気に全身を駆け巡り、
 今日いちばん顔を真っ赤に染めた。
 その反応が、ソウガにはたまらなく愛おしい。
「まだ時間はたくさんある。
 ……お前の好きな抱かれ方を教えろ。
 いくらでも、お前に従う」
 そう囁き、ソウガはイサナの望みを確かめるように
 腰を両手でしっかり掴むと——
 彼女が欲しがった深さへ、迷いなく打ち込んだ。
「っ……あ、ぁあっ……!」
 小さな悲鳴が胸元で震え、
 ふたりの体がぶつかる音がいやらしく室内に響く。
 肉と肉が打ち合い、奥が叩かれるたび、
 イサナの内側が蕩けた蜜でソウガを迎え入れる。
 恥ずかしくて、悔しくて、
 それでも胸の奥にじわりと広がっていくむず痒い熱に、イサナはもう耐えきれなかった。
「っ……ソウガ……もう……っ!」
 叫ぶように名を呼ぶイサナの声を聞き、
 ソウガの動きはさらに深く、鋭くなる。
「……イサナ。
 欲しがるなら、遠慮するな」
 その一言が引き金だった。
 イサナは耐えられず、
 ソウガの肩に顔を押しつけたまま――
 その肩口に、強く噛みついた。
「っ……!」
 ソウガの喉から抑えきれない呻きが漏れる。
 痛みと快感が同時に走り、
 青狼の本能が喉奥で低く噛みつくように唸った。
 イサナの噛みつきは、
 拒絶ではなく、
 どうしようもなく求めている証だと分かるからこそ。
 ソウガはその小さな体を抱き寄せ、
 奥を深く貫いたまま低く笑う。
「……随分荒々しい妻だな。お前は……」
 


「今日はできない日だって言ったのに……」
 ぐったりと寝台に沈んだイサナは、拗ねたように頬を膨らませる。
 対してソウガは平然としていた。捕虜生活だったはずなのに、体力だけはまるで怪物だ。
「月に一度じゃ足りない。……もっと欲しがらせてくれ」
「な、何言ってるのよ!」
「“できるまで抱く”と言っただろう」
「今日は、その……できない日なの!」
「できなくても抱く。どちらにせよ変わらん」
「変わるのよ! 子供ができる前に私が死んじゃう!」
 涙目で抗議するイサナを、ソウガはまた抱き寄せようと腕を伸ばす。
「赤鷲将軍が、たかが数刻で“死ぬ”とは言わないだろう」
「言うわよ! もう動けないの!」
「……なら動かなくていい。抱えてやる」
「そうじゃないってば!!」
 必死に押し返すも力負けだ。
 ソウガは淡々と告げる。
「さっきみたいに泣いた顔を見せられたら……止まれん」
「っ……!」
 イサナは布に潜って真っ赤になる。
 その上からソウガがぽんと軽く叩いた。
「安心しろ。死ぬほど抱いても死なせはしない」
「意味が怖いのよ! 本当に化け物なんじゃないの!?」
「……お前がそう思うなら、そうだろう」
 わずかに口元を緩め、イサナを胸元へ引き寄せる。
「だが――“化け物”でも、お前の夫だ」
「……ほんと、重いんだから」
「お前にだけ重い。それでいい」
 イサナは再び布に潜った。
 文句を言いながらも、その声はどこか嬉しそうだった。
 

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