悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

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〜幼少期編〜

第7話 もう1人の悪役令嬢

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色んな貴族への挨拶回りも終わり、ようやく落ち着いた頃。
王子の方に視線を送りながらバルコニーへと向かった。
空を見上げるとまん丸の月が屋敷を明るく照らしていた。

あぁ、こんなにゆっくりと月見をするのはいつぶりだろうか。

たしか、、、あの時・・・も。

「ダリア嬢。」

突然声をかけられて弾けるように振り向くといつもの貼り付けたような笑顔で王子が立っていた。

「アルベルト様、お越しいただきありがとうございます。」

「2人きりで会いたいなんてどうしたんだい?」

主人公以外の女の子はみんなこの笑顔に騙されるんだよね。

「アルベルト様にご提案したいことがあってお呼びしました。あと、今は2人だけですから普段通りになさってください。」

いつも私といる時はつまらなそうに何を話しても「あぁ」しか言わない。
ダリアはそんな王子が笑顔になってくれるように、いや笑顔の王子をまた見たいと思って頑張っていた。

子供なりに。

王子も自分に心酔する人間の方が扱いやすいと思ってこの婚約の話を承諾したのだろう。
だが、愛する人を見つけた時。

ダリア・・・は邪魔な存在となった。

愛のためなら何でもすると思ったのだろうか。

ゲームの中の彼はダリアが事件を起こすことを望んでいたのではないだろうか。

記憶を取り戻して自分が処刑エンドを免れるためのことしか考えていなかったが改めてダリア・クロウリーについて考えると彼女もまた慈しまれるべき人なのだ。

彼女の行動は褒められるべきものではない、が。

「それは間違っているよ」と教えてくれる大人がいたのか。

親はもちろん、使用人も怯えるだけではなくこの娘に向き合おうとした人間はいなかったのか。

そう思うと彼女はずっと孤独だった。

6年間、、、たった6年間だけども私はダリア・クロウリーだった。その時の記憶も全てでは無いが覚えている。

彼女が物にあたって怒っている時。

メイドに怒っているわけじゃなかった。

「寂しい」という言葉を口に出来ずに藻掻いていたんだ。

水に溺れる子供のように、声にならない叫び声を上げて。

手足を懸命に動かして、誰かに気づいてもらいたくて。

だけど、そんなことは許されなくて。

誰も理解してくれなくて。

公爵家としてのプライドしか頼るものがなくて。

でも今度は大丈夫。 

私がいるから。

きみの寂しさは私が受け止めるから。

きみが言いたいことは私がハッキリと口に出すから。

だから、、、、、



「アルベルト様、私との婚約を破棄してください。」






もう、一人ぼっちだなんて思わないでくれ。









𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌃




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