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青年編
第58話 憔悴した心
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夕はダリアにホムンクルスに魂を宿すように促した。
しかしダリアはなかなか首を縦に振らない。
「ねぇ、夕。そんなもの早く壊してちょうだい。」
ダリアの言葉に夕の表情から笑みが消えた。
「なんだって?」
「ホムンクルスを作ること、それを人間に見立てて世に出すこと。一体どんな危険なことをしているのかわかっているの?あなたは私のためだと言ってくれるけどあなたが私にそんなことをする義理なんてどこにも無いのよ。」
夕は口を震わせながら強く、弱々しくダリアに問い詰める。
「君だって、、、君だって愛されてもいない男のために大罪を犯しただろう!一体何が違うんだ!」
初めて声を荒らげる夕にダリアは言葉を失った。
「ゆ、、、夕?落ち着いて。私はただ、、」
「君は私が何も分かってないと言うけれど分かっていないのは君の方だ!ここは私の世界じゃない!君がいるべき世界だ!呼び戻して何が悪い。
、、、君にここで初めて会えた時、とても嬉しかった。同じ境遇に立つ者に出会えたからだ。それだけじゃない。君のことを君として過ごしながら少しずつ知っていく度に君自身と言葉を交わせないことを酷く悔やんだ。」
「ダリア、、、この世界で本当の私を理解してくれるのは君だけなんだ。」
「、、、、」
ダリアはそれ以上反論することは出来なかった。
ダリア自身も夕の存在に救われたからだ。
「君の目覚めを待っている。それが返事だと思おう。待ってるよ、、、ダリア。」
(我ながら勝手な願いを言ってしまった。前世にあんな記憶があるのに戻りたいなんて、、、思うわけないだろ。)
夕はダリアに瓜二つのホムンクルスを密かにベルメール領にある城に運んでいた。
美しいシルクのドレスを着せられベッドに寝かされている姿はまるで眠れる森の美女のようだった。
部屋のバルコニーで足を組みながら書類に目を通す夕の目はどこか虚ろになっていた。
銀のトレーの上にはいくつもの手紙が乗っており、おもむろに1番上の封筒を手に取るとふぅっとため息を着く。
[ダリアお姉様、ご気分はいかがでしょうか。アメリア様も未だ床に伏せっておられるとの事でヒナはとても心配です。王都では既に聖女候補選抜に参加されるお嬢様方が既に集まりつつあるとの事です。わたくしもエントリーするために後日お父様と王都に行ってまいります。お姉様の顔に泥を塗らぬよう務めて参りますのでアメリアお嬢様のお早いご回復とお姉様のお早いお帰りを。 ヒナより]
「王都、、か。もうそんな時期になったんだな。」
(私がこの世界で目覚めた時はただ生き延びることだけを考え、婚約解消をした。だが彼女と交信することができたときから私の中で何かが変わったんだ。
きっとこの変化は良くないことの方が大きいんだろうな。)
その時空からレイヴンが鴉の姿でバルコニーに降り立った。
口にくわえている小さな巻かれた手紙をレイヴンから受け取ると素早く開いて内容を確認した。
「、、、神殿への侵入経路を探し当てたか。」
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
しかしダリアはなかなか首を縦に振らない。
「ねぇ、夕。そんなもの早く壊してちょうだい。」
ダリアの言葉に夕の表情から笑みが消えた。
「なんだって?」
「ホムンクルスを作ること、それを人間に見立てて世に出すこと。一体どんな危険なことをしているのかわかっているの?あなたは私のためだと言ってくれるけどあなたが私にそんなことをする義理なんてどこにも無いのよ。」
夕は口を震わせながら強く、弱々しくダリアに問い詰める。
「君だって、、、君だって愛されてもいない男のために大罪を犯しただろう!一体何が違うんだ!」
初めて声を荒らげる夕にダリアは言葉を失った。
「ゆ、、、夕?落ち着いて。私はただ、、」
「君は私が何も分かってないと言うけれど分かっていないのは君の方だ!ここは私の世界じゃない!君がいるべき世界だ!呼び戻して何が悪い。
、、、君にここで初めて会えた時、とても嬉しかった。同じ境遇に立つ者に出会えたからだ。それだけじゃない。君のことを君として過ごしながら少しずつ知っていく度に君自身と言葉を交わせないことを酷く悔やんだ。」
「ダリア、、、この世界で本当の私を理解してくれるのは君だけなんだ。」
「、、、、」
ダリアはそれ以上反論することは出来なかった。
ダリア自身も夕の存在に救われたからだ。
「君の目覚めを待っている。それが返事だと思おう。待ってるよ、、、ダリア。」
(我ながら勝手な願いを言ってしまった。前世にあんな記憶があるのに戻りたいなんて、、、思うわけないだろ。)
夕はダリアに瓜二つのホムンクルスを密かにベルメール領にある城に運んでいた。
美しいシルクのドレスを着せられベッドに寝かされている姿はまるで眠れる森の美女のようだった。
部屋のバルコニーで足を組みながら書類に目を通す夕の目はどこか虚ろになっていた。
銀のトレーの上にはいくつもの手紙が乗っており、おもむろに1番上の封筒を手に取るとふぅっとため息を着く。
[ダリアお姉様、ご気分はいかがでしょうか。アメリア様も未だ床に伏せっておられるとの事でヒナはとても心配です。王都では既に聖女候補選抜に参加されるお嬢様方が既に集まりつつあるとの事です。わたくしもエントリーするために後日お父様と王都に行ってまいります。お姉様の顔に泥を塗らぬよう務めて参りますのでアメリアお嬢様のお早いご回復とお姉様のお早いお帰りを。 ヒナより]
「王都、、か。もうそんな時期になったんだな。」
(私がこの世界で目覚めた時はただ生き延びることだけを考え、婚約解消をした。だが彼女と交信することができたときから私の中で何かが変わったんだ。
きっとこの変化は良くないことの方が大きいんだろうな。)
その時空からレイヴンが鴉の姿でバルコニーに降り立った。
口にくわえている小さな巻かれた手紙をレイヴンから受け取ると素早く開いて内容を確認した。
「、、、神殿への侵入経路を探し当てたか。」
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