悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

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青年編

第64話 神殿からの手紙

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 4年前

 ヒナはダリアに呼び出されていた。
 いつになく真剣な面持ちでティーカップに口をつけるダリアにヒナはちょこんと向かいに座っている。

「あ、あの、、お兄様。」

「ヒナ」

 透き通ってはいるが威厳感じさせる声にヒナの方がビクリと揺れる。
 視線を上げると氷のように冷たい表情と瞳がヒナを見下ろしていた。

 そう、ダリアは年々公爵に似てきているのだ。

 冷酷無慈悲と謳われたクロウリー公爵。

 そんな彼と似た髪色に瞳、ヒナが萎縮するのも無理はなかった。

「はい、お兄様。」

「これをご覧。」

 ダリアは黒い封筒をヒナに差し出した。
 印には白百合の紋様がある。

「神殿からだ。」

「し、、神殿?」

「あぁ、聖女候補選抜のお誘いだ。勿論お前宛てだ。」

 いつになく不機嫌なダリアの様子を伺いながら封筒を開け中を読み進めていくとヒナの表情が凍りついた。

「な、なんですか?これは、、、」

「それが神殿の見解らしい。」


【ヒナ・クロウリー公爵令嬢

 この度は聖女候補選抜への参加をクロウリー公爵家の正当な後継者として是非して頂きたく、、、、】

「正当な、、、、後継者?」

 ヒナは手紙を力強く握りしめながらわなわなと震え始める。

「な、なんて無礼なっ!お兄様がどれだけ神殿への援助をなさったと!」

「構わないさ、元々こういう連中さ。それにお前を私生児だと甘く見ているからこそこのような手紙を送ってきたんだろうな。」

「なんてことを、、、」

恐る恐る顔を上げダリアの様子を伺うも当の本人は恐ろしいほど落ち着いていた。
それどころか静かな笑みを浮かべてヒナを見つめていた。

「ほ、本当に失礼な方々ですね!こんな手紙すぐに処分してしまいましょう!」

ヒナが手を出そうとした瞬間ダリアは人差しで抑えるとヒナの方へ差し出した。

「いいや、ヒナ。お前にはこの招待を受けてもらう。」

「お兄様?!」

困惑の色を隠せないヒナに対してダリアは至って冷静に話を続ける。

「いいさ、その辺の諸々の精算は後に行うとしよう。それに、この歳の子供に対して分かりやすく煽ってきたということは私が感情的になって動くことを狙ってのことだろう。そんなわかりやすい挑発に乗る義理はないよ。」

「ですが!お兄様のことをここまでバカにするなど許されるはずが。」

「そ、私も勿論許した訳では無い。だからお前にこの件は任せようと思うんだ。」

「わ、わたしに?」

「4年後、王都で選抜エントリー受付が始まる。そこにはもちろん神殿の連中の他に私たちを敵視する者がいるだろう。そう言った連中に対して我々が高尚な一族であることを示してくるんだ。聖なる政に関わるに相応しい人物なのだと。」

「わ、わたしに出来るでしょうか、、、」

「そのためにマナーも教養も身につけさせているんだ。クロウリー家として、私の妹として世間から認められるようにな。それとも、出来ないのか?」

鋭い瞳で見下ろすダリアにヒナは背中に汗を流しながら必死に肯定した。

「も、もちろん!もちろん出来ます!お兄様のお役に立てるのならなんでも致します!」

「そう、いい子だ。期待しているよ、ヒナ。」

ダリアは椅子から立ち上がりヒナの頭を人撫ですると瞳孔を光らせた。



𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌

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