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青年編
第70話 神殿送り
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時は戻り現在
王都からヒナが帰ってきた。
無事にエントリーが終わり、クロウリー公爵とともに帰宅をするとダリアが出迎えた。
「父上、ヒナ!おかえりなさいませ。」
出迎えたダリアが違和感を覚えた。
ヒナの表情が暗いのだ。
すると公爵が重い口を開く。
「ヒナはこの後、神殿籠もりを1年間行うこととなった。」
「は?」
「聖女候補選抜をエントリーできたといっても半分が魔力を持たぬ平民の血だ。来たる日までに浄化を行う必要がある。」
<神殿籠もり>とは。
その身に付いた穢れを落とすために神殿にて特別な処置を行うことである。
一見お祓いのようなものに思えるが実際は日中の間は神殿の浴槽で洗われ続け、一日の食事として出されるのは一杯の重湯のみ。(重湯とはお粥のような食べ物のこと。)
不純行為をしたものや罪を犯したものの罰することが難しい貴族に行われる。
このことを<神殿送り>という。
「そんなことをしたら我が家名に傷がつくのでは?」
冷静に言葉を発するもののダリアは内心怒りと焦りを感じていた。
しかし怒りを感じることについてはダリア自身も不思議に思っていた。
「お前が候補選抜に出ないのだ、ヒナがこうなることもわかっていただろう?」
公爵のは別にヒナを陥れようとしている訳ではなく、合理的に考えれば至極真っ当なことを考えて実行しているに違いなかった。
だからこそ焦っているのだ。
ダリアにこれ以上父親の考えを改めさせるような手札が手元に残っていないからだ。
すると背後からコツコツとヒールの音が聞こえ始めると凛とした声が公爵たちの会話を止ませる。
「それでは、わたくしが代わりに神殿へ篭もりましょう。」
皆がいっせいに振り向き声の主を視界に入れる。
そこにはダリアと引けを取らない美しく身なりを整えたアメリアがウンディーネと共にこちらに向かっていた。
「お前がダリアのお眼鏡にかなった伯爵令嬢か。ククッおもしろい。ダリア、最近はお前のせいで没落しそうな貴族から娘を紹介されることが一気に増えたぞ。」
ダリアはアメリアの姿を見てさらに動揺をする。
「なっ、、、、」
そんなダリアをチラリとみると、公爵は納得したかのように口角を上げる。
「だが、この娘の提案は予想外のものだったらしいな。」
「お初にお目にかかります、公爵閣下。この度はわたくしの身を引き取って頂き誠にありがとうございます。」
「ふむ、平民の出のヒナとは違い品格のある出で立ちだな。よかろう、お前の話を聞いてやろうでは無いか。」
「ありがとうございます。わたくしは没落した貴族の身、そんなわたくしを引き取ってくださった閣下のお役に立ちたいと思い提案させていただきます。聖女候補として選ばれクロウリー家に誉れを。」
決意あるアメリアの姿にダリアはただ黙って見ているしか無かった。
(せめてアメリアが神殿送りにならないように話しを持っていかなければ。)
「アメリアが代わりにエントリーするなら神殿送りにしなくとも、、、」
「いえ、閣下がお望みならば神殿篭もりも喜んでお受け致します。」
「?!」
公爵はアメリアの態度に満足気にしながらダリアに同意を求めた。
「急なエントリー変更も神殿篭もりさえ受け入れれば神殿側も文句はないだろう。そうだろう?ダリア。」
「仰せの、、、ままに。」
こうしてアメリアの<神殿送り>が決まった。
ダリアはその後共を付けずに独り夜の庭で佇んでいた。
「誰もついてくるな。」
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
王都からヒナが帰ってきた。
無事にエントリーが終わり、クロウリー公爵とともに帰宅をするとダリアが出迎えた。
「父上、ヒナ!おかえりなさいませ。」
出迎えたダリアが違和感を覚えた。
ヒナの表情が暗いのだ。
すると公爵が重い口を開く。
「ヒナはこの後、神殿籠もりを1年間行うこととなった。」
「は?」
「聖女候補選抜をエントリーできたといっても半分が魔力を持たぬ平民の血だ。来たる日までに浄化を行う必要がある。」
<神殿籠もり>とは。
その身に付いた穢れを落とすために神殿にて特別な処置を行うことである。
一見お祓いのようなものに思えるが実際は日中の間は神殿の浴槽で洗われ続け、一日の食事として出されるのは一杯の重湯のみ。(重湯とはお粥のような食べ物のこと。)
不純行為をしたものや罪を犯したものの罰することが難しい貴族に行われる。
このことを<神殿送り>という。
「そんなことをしたら我が家名に傷がつくのでは?」
冷静に言葉を発するもののダリアは内心怒りと焦りを感じていた。
しかし怒りを感じることについてはダリア自身も不思議に思っていた。
「お前が候補選抜に出ないのだ、ヒナがこうなることもわかっていただろう?」
公爵のは別にヒナを陥れようとしている訳ではなく、合理的に考えれば至極真っ当なことを考えて実行しているに違いなかった。
だからこそ焦っているのだ。
ダリアにこれ以上父親の考えを改めさせるような手札が手元に残っていないからだ。
すると背後からコツコツとヒールの音が聞こえ始めると凛とした声が公爵たちの会話を止ませる。
「それでは、わたくしが代わりに神殿へ篭もりましょう。」
皆がいっせいに振り向き声の主を視界に入れる。
そこにはダリアと引けを取らない美しく身なりを整えたアメリアがウンディーネと共にこちらに向かっていた。
「お前がダリアのお眼鏡にかなった伯爵令嬢か。ククッおもしろい。ダリア、最近はお前のせいで没落しそうな貴族から娘を紹介されることが一気に増えたぞ。」
ダリアはアメリアの姿を見てさらに動揺をする。
「なっ、、、、」
そんなダリアをチラリとみると、公爵は納得したかのように口角を上げる。
「だが、この娘の提案は予想外のものだったらしいな。」
「お初にお目にかかります、公爵閣下。この度はわたくしの身を引き取って頂き誠にありがとうございます。」
「ふむ、平民の出のヒナとは違い品格のある出で立ちだな。よかろう、お前の話を聞いてやろうでは無いか。」
「ありがとうございます。わたくしは没落した貴族の身、そんなわたくしを引き取ってくださった閣下のお役に立ちたいと思い提案させていただきます。聖女候補として選ばれクロウリー家に誉れを。」
決意あるアメリアの姿にダリアはただ黙って見ているしか無かった。
(せめてアメリアが神殿送りにならないように話しを持っていかなければ。)
「アメリアが代わりにエントリーするなら神殿送りにしなくとも、、、」
「いえ、閣下がお望みならば神殿篭もりも喜んでお受け致します。」
「?!」
公爵はアメリアの態度に満足気にしながらダリアに同意を求めた。
「急なエントリー変更も神殿篭もりさえ受け入れれば神殿側も文句はないだろう。そうだろう?ダリア。」
「仰せの、、、ままに。」
こうしてアメリアの<神殿送り>が決まった。
ダリアはその後共を付けずに独り夜の庭で佇んでいた。
「誰もついてくるな。」
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