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『栄光』3
しおりを挟む「よぉ!」
「……!?」
俺が来てるのは『栄光』のビルの前でコイツがくるのを待っていた。
「腹の具合はどうだ?」
「……私に何の用ですか?」
「は?俺らを殺しに来といて、何の用だと?」
俺は殺気を放つと羽島千草は素早く後退するが、腹が痛むのか膝をつく。
「……なぜ私だと?」
「あ?『鑑定玉』だ。これでだれかわかるからな」
『鑑定玉』……触れたものを鑑定する。
これは試作で作っていたが、声を聞いたことあるし、チグサだけあの二人と違ったから使っておいたら、やっぱり知っていた奴だった。
「クソッ!」
「やめとけよ、まだ腹の傷が治ってないんだろ?」
それにここは人が多すぎる。
「とりあえず話をしないか?」
「クッ……わかりました」
近くの喫茶店に一緒に行くと、とりあえず注文をしてからなぜあんなことをしたのか聞いてみる。
「……私は、あの人には逆らえないんです」
「なぜ?別に何かあるのか?」
真剣な顔のチグサだが、汗をかいている。
「それよりもお前、まだポーションは飲んでないのか?」
「……はい」
「何故だ?」
チグサは口籠る。
「まぁいい、これを飲め」
とポーションを出す。
「……私はあなたを殺そうとしたんですよ?」
「言われて動いたんだろ?それに話ができる状態じゃないだろ?」
チグサは辺りを見回すとポーションを飲み干す。
「わ、私の母親は病気で入院しています。高額な医療費が必要なんです」
だから逆らえないのか。
「他に手はないのか?」
「『栄光』ですよ?治療費まで出してもらい、気に入ってもらってるうちになんとかしようと」
「それで死ねば誰が親を見るんだ?」
「……」
仕方ないか。
「俺なら治せるぞ?」
「……嘘つくな!そうやってまた」
「行こうじゃないか。お前の親のとこに」
俺が立ち上がると、
「……」
「行かないのか?治せるチャンスだぞ?」
「……分かった」
と言ってついてくる。
国立病院に着くとチグサが先に歩きついて行く。
個室に入ると母親の手を握り、
「母さん、来たよ」
「……」
と目で合図するほどもう弱っている。
ここまで来たらあと数ヶ月待てばいい方だろうな。
「どうだ?治せるのか?」
「あぁ、これを飲ませろ」
金色に光る瓶を渡す。
「これは?」
「エリクサーだ。一本しかないからな」
あれからもう一本だけ作っておいた。
「本当なのか?嘘だったら」
「それよりも早く飲ませてやれ」
母親に瓶の蓋を外してゆっくりと飲ませる。
頬に赤みがさしてくるのがわかる。
「母さん?」
「……」
流石に体力も落ちてるのだ、すぐに話すことはできないだろ。
だが、しっかりと握るその手は力が込められている。
「病院は移したほうがいいだろうな。もう治療の必要はないが」
「あぁ、少し時間をくれるか」
「分かった、それじゃな」
チグサを置いて病室から出る。
「あいつはこんなことでチグサを操っていたのか」
怒りだけが残る。
国立病院を出るとマンションに戻る。
「おかえり、『栄光』はどうするの?」
「まぁ、種は蒔いたからそのうちだな」
とカグヤと話す。
「マー坊達は?」
「星5ダンジョンに行ってるわ」
「そっか」
マー坊達はダンジョンか、俺らも行きたいところだが、
「とりあえずは、いつこのクランハウスに向かってくるかもわからないから待機だな」
「はぁ、そうね。ここを空けるわけにはいかないわね」
まぁ、ゆっくりするか。
会議室という名の井戸端会議をする場所になっている部屋ではヒナ達がみんなでテレビを見ているようだし、シオンは鍛冶場に行っている。
俺は買い出しに出かけると、ポーションを大量に買っておく。
また作っておく必要があるからな。
「はぁ、『栄光』か、」
名前だけ立派なハリボテ集団だったらいいんだがな。
腐っても星5ダンジョンに行くパーティーがいるんだから一筋縄では行かないだろう。
それから1週間後、『栄光』のリーダーである内藤光の訃報がテレビで報じられた。
なんでも、星5ダンジョンを攻略中の事故だったらしく、葬儀には数百人が集まっているそうだ。
『栄光』はNo.2がリーダーになり、存続するようだが、他のパーティーメンバーは抜ける奴も多いそうだ。
「やぁ、後腐れなく辞めてきた。私をここに入れてくれないか?」
とチグサがロビーでそう言う。
「……お前がやったのか?」
俺にはそうとしか思えないが。
「いや、星5ダンジョンで荒れたアイツがモンスターに突っ込んで行っただけだ。モンスターはなんとか倒したが、ポーションしかなくて傷が塞がりきらずに命を落とした」
「本当のところは?」
「いや、これは本当だ。できれば俺の手で殺してやりたかったが、最後はあっけないもんだな」
それは本当にあっけないな。
『栄光』のNo.2は他のパーティーメンバーを引き留めたが全員、『栄光』から手を引いたらしい。
「私のジョブはアサシンだ。恩返しをさせてくれないか?」
「……はぁ、まぁいいだろ。その代わり裏切るなよ?」
「あぁ、アイツにこき使われて汚れた手だが、『朱』の一員になれるよう頑張りたい」
本気のようだな。
「分かった、よろしく頼むぞ?」
「あぁ!こちらこそ!」
嬉しそうに笑うチグサは握手をすると、親が回復していってると楽しそうに話す。
『朱』もこれからはダンジョンに気兼ねなくいけるな。
それにしても『栄光』のリーダーの死はテレビで連日放送され、それだけ有名だったことがわかる。
他のメンバーもそれなりにアイツに借りがあったようだし、抜けるのも無理ないか。
『栄光』も縮小されて行くだろうな。
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