ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい

藤谷 要

文字の大きさ
4 / 49
第1章 魔導学校入学

1-4 初等部一年生

しおりを挟む
 それから私は無事に魔導学校に入学して初等部の一年生から通うことになった。色々と予想外なことは起きたけど、私の下級魔導士計画はまだ順調なのでなによりだった。

 この学校には十歳から入学できる初等部以外に中等部、高等部があり、それぞれの部の卒業後の試験で、下級、中級、上級の魔導士資格が取得できる。飛び級も留年もできるから、クラスの年齢層は本当にバラバラだけど、十六歳での私の初等部入学は珍しかったみたい。

 最初、途中からの入学で注目を浴びたけど、同級生と色々と会話をして交流を増やしたら、知り合いも無事に増えて、今では数名の年下の女の子たちと一緒に行動して平穏に過ごしている。
 私の制服姿は、すっかり周囲と馴染んでいた。

 前世の子どものとき、私は魔導の習得だけ優先して、友人関係はバッサリと切り捨てていた。
 当時、魔導の資質だけが全てだと考えていたから、自分より劣る人間に興味がなかったのよね。
 残念ながら、昔は偏った考えでしか価値を測れない狭量な人間だった。
 今は魔導だけにこだわってないし、人それぞれ素敵なところがあるって分かっている。

 今日も昼休みに友人たちと一緒に食堂に来ていた。
 制服姿の生徒たちで溢れ、その中に私たちも混ざっていた。
 濃緑色のブレザーの上着と、同じ色を基調としたチェックのスカートが女子の制服姿だ。シャツの上にコルセットをつけている。

 卒業生の制服が中古で売っていたからお財布的に助かったわ。ちょっと胸のサイズが合わなくて苦しいけどね。

 学校の食堂は、関係者なら誰でも格安で利用できるようになっている。生徒たちに交じって先生たちの姿もたまに見かける。

 吹き抜けの開放的な空間で、天井近くまで贅沢なガラス張りになっている。
 今日みたいに天気がいい日だと、日がよく当たって明るかった。

 大きめなテーブルが均等に並び、早いもの順で好きな場所に座れるようになっている。
 私たちも固まって席を確保して、食事を始めている。
 メニューはたくさんあるから、この時間は一日の楽しみの一つになっている。

 サクスヘル校長も私から離れたテーブルで他の生徒たちと食事をしている。
 彼は生徒の名前を憶えているようで、気さくに話しかけていた。

 彼は毎朝学校の校門前で生徒たちを出迎え、長い休憩時間には校内を散策して生徒たちと触れ合っている。

 特に新入生に対して、学校に馴染めるように気遣っているようで、廊下で彼をよく見かける。
 すれ違いざまに好意的ではない、意味深な視線を向けられるけど。正直に言えよっていう、無言の圧力のようだった。

「あっ!」

 突然、悲鳴とともにガチャンと食器が落ちる衝撃音が食堂内に響く。
 振り返ればトレイから食事の皿を落とした生徒がいた。
 床には食べ物が無惨に散らばっている。

 落とした子は私と同級生の女の子だ。私と違って最少年の十歳で入学したのか、まだ小さな子どもだった。
 惨状を見て泣きそうになっている。
 酷い有様なので、片付けるにしても大変だよね。
 手伝ったほうがいいのかなと思い、腰を浮かしかけたその時だ。

「大丈夫ですか? 火傷はしてませんか?」

 素早く近寄って優しく声をかけたのは校長だ。
 彼は女の子に何も汁がかかってないことを確認すると、魔導を使って素早く床の汚れを消し去った。
 あっという間に何事もなかったかのようになる。
 そんな彼の巧みな仕業を見て、周囲の生徒たちから「すごーい」と歓声が上がる。

「ここはもう大丈夫だから、もう一度食事を取りに行くといいですよ」

 とても穏やかな声だった。彼は慈愛深い眼差しを生徒に向けていた。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。 聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。 やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。 女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。 素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。  第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。 「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。 「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。  だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。 全43話+番外編です。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

処理中です...