【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ

文字の大きさ
10 / 110

10

しおりを挟む
目が覚めても、現実は変わらない。当主不在の家、その内情は崖っぷちの綱渡り。

何事も決めるのも、権限は便利で必要。当主がいないという不信で離れていく人々。
根本的な問題は、結局“当主が居ない”なんだよ。

(私にどーしろっていうのさ!)

今後10年は、顔を見ない当主様。オジサマとはやり取りがあったかもしれないけど。
私にやれる事、その範囲は少ない。

そう考えだすと。イライラして魔法を乱発している。

「今日は激しいなー。」
「いつ終わるのよ!洗濯物にかけたら、しょうちしないから!」

庭で壁に向かってだ。人の被害はないと思う。
弟子庭師と若いメイドが、様子見している。赤ん坊の癇癪代わりと見学者がいながらも、最大出力。

小さい盥ほどの水の量、勢いは髪の汚れを洗い流す程度か。
当たったらちょっとびっくり!の魔法は、魔力の限界まで続けている。

「ほっほ。元気な子だの。」
「元気どころじゃないですよ。危ないじゃないですか。」

「そうか?あの壁にしか向かっていない上に水魔法だ。危ない目にでもあったかい?」

「いや、そういえば。」
「けど!洗濯物がっ」

(あ、お爺ちゃん来てた。)
「あうあ~」

「終わったか、まったく凄い魔力量だな。冒険者なら数日分の給水できる量だな。」
「泥々!最悪っ」

「やあ、セリちゃん。凄いなあ。」
「きゃっきゃっ!」

「貴族様の跡継ぎには十分な魔力だと思うぞ。」
「冒険者でも、まあまあやってけるんじゃないかな。」

「貴族のが良いに決まってるじゃない!贅沢に暮らせるでしょ?」

「この家で、か?」

そう、残念。この辺境じゃ貴族になったって大変なだけです。メイドの仕事を代わりにして、勉強漬けの日々、弓の師匠が来てから冒険者と動くことが多くなった。

私、何を目指していたんだろう。

ただ、オジサマを手伝えると思った。これまで成長してきたんだから家業を手伝うのは普通の流れだと考えてた。かなり特殊で、貴族でありながら、冒険者の活動にも似ている。

水魔法、年齢の割には体力があって森の動き方も学んだ。
結局、魔導具の整備に屋敷にこもりきりになって。

(森と屋敷以外に、街に行った記憶はないなあ。)

自由な冒険者に憧れた事はある。でも、1人で旅に出るには色々と後ろ髪を引かれる思いで。

今は、まっさら。
けど、私を当主にしたいと思い、認めない者が増えていく。


その状況に、どう私が振る舞うのか?

これからきっと、魔力量が上がる。このペースで鍛錬すれば前よりもっと、増えるだろう。
そうなったら、魔導具を起動しよう。書庫にある埃を被った魔導具の手入れと魔力を込めて、起動する。
前できなかった、修理と観察ができる。

(前にできなかったことと、しなかった事をやってみようか?)

街に住んでみるとか、王都に行ったこともなかった。冒険者としてギルドに通って、みるとか。
ちょっと楽しくなってくる。

お爺ちゃん庭師に抱っこされて、すごくゆっくり、畑を周りながら。
ちょろり、ちょろりと水をかけていく。

褒められながら、魔物除けの道具の点検をしている歩みに眠りを誘われる。


雑多になっている本を並べ直して、好きなだけ読もう。
(やってみたかった事、今は思い出せなくても見つけ出せる筈!)

魔物達の襲来が何歳の時だったか?屋敷の人達の名前、文通をしていた友人の事。
寝る直前の思い浮かぶように、屋敷内の人の会話が見れる。

オジサマと師匠執事さんが、仕事をしている。この後、師匠執事さんは王都で活動するようになる。その時になんとか着いていく方法を考えよう。



イライラしても12歳でできなかった事を、赤ん坊が心配していても無駄だ。



とりあえず、ひとつ絶対やる事を決めた。

(あの当主、絶対しめる!)
赤ん坊は誓った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。 この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ 知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

処理中です...