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◆運命が変わる前
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彼女は12歳までしか生きられなかった。病でもなく、魔物に命を散らされた訳ではない。
「死因は毒でしょう。お持ちのグラスの中身はジュースでしたがその中に。」
執務室で彼女の専属につけた青年からの報告が、耳を通り抜ける。
私は、辺境地を預かっているが借りの身分だ。本分は騎士であった。
王都で学び、騎士となったものの出世争いに意欲など出ず、燻っていた私はその時に交流があった男の出生地の辺境まで着いてくる事にした。
剣の腕を使える上に、辺境の地を継ぐ事になった男に不安があったからだ。
魔術科に在籍する偏屈な男で、交流も狭く研究漬けで目の下にクマを作っていた。貴族らしい所と言えば尊大な態度くらいか。3男だったそうだが後継ぎの長男と父親が死に、次男は負傷して魔物とは戦えなくなったそうだ。
騎士にもある、恐怖で戦えなくなり去る者はな。
辺境の地は四家が護りを堅める地域だ。王都から西南に広がる森には、時折り大規模な魔物が発生する。
あの男の家は、その発生の兆候を掴む調査をする家柄が貴族に上がったらしい。
祖父の代まで魔導具を研究する方向性だったが、父親の代で武力を重用した。その結果戦場で亡くなったと受け取った男は、研究道具を抱えて生家に帰る事になった。
それについて来た形だ。かなり強引だったが、男だけでは魔物の出る森を抜けられるか心配するほどの準備だった。見かけ通りに、体力も腕力もない。頼りない戦力だが、冒険者を雇い帰れる算段はついた。
休みながら行けば、5日かかる。道行きの馬車や休む時に男から聞き出した事情はと言うと。
「何から手をつけたら良いのか。」
まず、雇った者への支払い。依頼主が亡くなったとはいえ払う物はある。男の家の離れの屋敷では住み込みの戦力がいたそうだが、当主が代わることで離れる心積りの者が多くいた。
引き止めるのは難しいだろう。
その采配を振るうべき男は、さっさと書庫に入り出てこない。鍵は開かないようだが執事は入れるらしいので頼んだ。
全くもって書類の処理や後始末をする気がなかった男だ。
流石に、父と兄の葬式には首根っこ掴んで引っ張り出したが、この男に領主は務まらないと思う。やる気もない物に覚えさせる手間ヒマもなかった。
騎士での書類仕事を思い出しながら、家に居た執事と共に書類を捌く。
長年仕えているという執事の男から信用は得られ、代理を務める事でなんとか言えるは成り立った。
男は研究を続け、調査に使える魔導具を作ったが王都に暮らしを移す。領主の役目など知らないとばかりだった。
そんな男が母親の知れぬ子供を置いて、消息が分からなくなる。目の前の仕事は減らず、魔物の脅威も待ってはくれない。子供とは縁のない私には、育て方など分からなかったが私をオジサマと呼んで慕ってくれる…
「良い子だった。」
青年の執事に下がるよう言い、私は目を押さえる。
「まだ子供、たった12歳…。」
その子は、殺されたのだ。まだ守られる年齢の少女だったのに。
「死因は毒でしょう。お持ちのグラスの中身はジュースでしたがその中に。」
執務室で彼女の専属につけた青年からの報告が、耳を通り抜ける。
私は、辺境地を預かっているが借りの身分だ。本分は騎士であった。
王都で学び、騎士となったものの出世争いに意欲など出ず、燻っていた私はその時に交流があった男の出生地の辺境まで着いてくる事にした。
剣の腕を使える上に、辺境の地を継ぐ事になった男に不安があったからだ。
魔術科に在籍する偏屈な男で、交流も狭く研究漬けで目の下にクマを作っていた。貴族らしい所と言えば尊大な態度くらいか。3男だったそうだが後継ぎの長男と父親が死に、次男は負傷して魔物とは戦えなくなったそうだ。
騎士にもある、恐怖で戦えなくなり去る者はな。
辺境の地は四家が護りを堅める地域だ。王都から西南に広がる森には、時折り大規模な魔物が発生する。
あの男の家は、その発生の兆候を掴む調査をする家柄が貴族に上がったらしい。
祖父の代まで魔導具を研究する方向性だったが、父親の代で武力を重用した。その結果戦場で亡くなったと受け取った男は、研究道具を抱えて生家に帰る事になった。
それについて来た形だ。かなり強引だったが、男だけでは魔物の出る森を抜けられるか心配するほどの準備だった。見かけ通りに、体力も腕力もない。頼りない戦力だが、冒険者を雇い帰れる算段はついた。
休みながら行けば、5日かかる。道行きの馬車や休む時に男から聞き出した事情はと言うと。
「何から手をつけたら良いのか。」
まず、雇った者への支払い。依頼主が亡くなったとはいえ払う物はある。男の家の離れの屋敷では住み込みの戦力がいたそうだが、当主が代わることで離れる心積りの者が多くいた。
引き止めるのは難しいだろう。
その采配を振るうべき男は、さっさと書庫に入り出てこない。鍵は開かないようだが執事は入れるらしいので頼んだ。
全くもって書類の処理や後始末をする気がなかった男だ。
流石に、父と兄の葬式には首根っこ掴んで引っ張り出したが、この男に領主は務まらないと思う。やる気もない物に覚えさせる手間ヒマもなかった。
騎士での書類仕事を思い出しながら、家に居た執事と共に書類を捌く。
長年仕えているという執事の男から信用は得られ、代理を務める事でなんとか言えるは成り立った。
男は研究を続け、調査に使える魔導具を作ったが王都に暮らしを移す。領主の役目など知らないとばかりだった。
そんな男が母親の知れぬ子供を置いて、消息が分からなくなる。目の前の仕事は減らず、魔物の脅威も待ってはくれない。子供とは縁のない私には、育て方など分からなかったが私をオジサマと呼んで慕ってくれる…
「良い子だった。」
青年の執事に下がるよう言い、私は目を押さえる。
「まだ子供、たった12歳…。」
その子は、殺されたのだ。まだ守られる年齢の少女だったのに。
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