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幸せだった日々1
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西の空が、燃えるような橙色から柔らかな茜色へとその表情を変え始める頃。
獣人王国アストリアの王都の郊外、騎士団の官舎が立ち並ぶ通りは、家路につく人々の穏やかな活気と、家々から漏れ聞こえる夕餉の支度の音に満たされていた。
その一軒、若き騎士団長である狼獣人ガロウ・シュヴァルツとその番、ミミが暮らす家のキッチンは、ことさらに温かな光と幸福な香りに包まれていた。
「ふんふふーん、ふふーん♪」
小柄な猫獣人の少女、ミミはご機嫌な鼻歌を歌いながら、大きな煮込み鍋の前に立っていた。彼女のふわふわとした銀色の髪が、西日を受けてきらきらと輝いている。亜麻色のエプロンをきゅっと結び、木べらで鍋の底が焦げ付かないように、ことことと優しくかき混ぜる。
鍋の中で踊っているのは、たっぷりの野菜と、こんがりと焼き目をつけた大ぶりの肉塊。今日は夫であるガロウの好物、特製のビーフシチューだ。数時間前から丁寧に煮込んでいるそれは、赤ワインと香味野菜の芳醇な香りをあたり一面に漂わせていた。
「よし、いい感じ。あとはガロウ様がお帰りになるまで、弱火でゆっくり…」
味見をしたスプーンをぺろりと舐め、満足げに微笑むミミの背後で、感情を表すようにぴこ、と銀色の尻尾が楽しげに揺れる。普段は生活の邪魔にならないように魔法で隠している猫耳と尻尾も、一人の時や、こうして心からリラックスしている時には、つい姿を現してしまうのだった。
今日は、ただのシチューではない。
先日、ガロウが騎士団の分隊長から、史上最年少での騎士団長就任という快挙を成し遂げた。その、ささやかなお祝いなのだ。
もちろん、盛大な祝賀会は王城で開かれたし、上級貴族である狼族のシュヴァルツ家でも親族を招いてのパーティーがあった。けれど、ミミがしたかったのは、誰にも邪魔されない二人だけの食卓で、「おめでとうございます」と「お疲れ様です」の気持ちを込めた手料理を、お腹いっぱい食べてもらうことだった。
「ガロウ様、きっと喜んでくださるわ」
彼の喜ぶ顔を想像するだけで、ミミの胸はぽかぽかと温かくなる。
彼女は、この国ではごくありふれた、何の力も持たない一般市民階級の猫獣人だ。片やガロウは、国の武力を担う騎士団の中でも特に名門とされる、上級貴族・狼族の嫡男。本来であれば、決して交わるはずのない身分だった。
それがどうだろう。今、自分は彼の「番」として、この腕の中に余るほどの幸せを抱きしめている。
獣人にとって「番」とは、魂で結ばれた唯一無二の伴侶。神が定めた運命の相手。
数年前、初めてガロウに出会ったあの日、魂が震えるような感覚と共に、彼こそが自分の番だとミミは直感した。そして、彼もまた、自分を番として選んでくれた。それは、奇跡以外の何物でもなかった。
「この幸せが、ずっとずっと続きますように」
祈るような気持ちで呟きながら、ミミはオーブンを覗き込む。中では、ふっくらと膨らんだ丸いパンが、香ばしい焼き色をつけていた。シチューには、やはり焼き立てのパンが一番だ。
ふと、壁にかけられた時計に目をやる。もうすぐ、ガロウが帰ってくる時間だった。
ミミは急いでエプロンを外し、玄関へと続く廊下を念入りに掃除し直す。埃ひとつない床をさらに磨き上げ、玄関マットの角度をきっちりと揃えた。愛する夫が、一日の激務を終えて帰ってくる最初の場所だ。いつも清潔で、心地よい空間にしておきたかった。
準備を終え、リビングのソファにちょこんと腰を下ろして彼の帰りを待つ。
窓の外では、最後の夕陽が官舎の屋根を金色に染め上げていた。静かな部屋に響くのは、壁時計が時を刻む音と、キッチンから微かに聞こえるシチューが煮える音だけ。
それは、ミミにとって世界で一番安らげる、幸福の音だった。
カチャリ、と遠くで門扉の開く音がした。
続いて、石畳を規則正しく踏みしめる、聞き慣れた軍靴の足音。
「!」
ミミの隠していた猫耳が、ぴょこんと頭の上に飛び出す。尻尾もソファの陰から現れ、ぱたぱたと嬉しそうに床を叩いた。
間違いない。彼だ。
ミミは弾かれたようにソファから立ち上がると、ぱたぱたと軽い足音を立てて玄関ホールへと駆け出した。
重厚な木製のドアが開き、待ちわびた人の姿が現れる。
「ただいま、ミミ」
そこに立っていたのは、黒狼獣人らしい野性的な精悍さと、貴族としての気品を併せ持った、美しい青年だった。艶やかな黒髪に、鋭さを秘めた灰色がかった瞳。騎士団長の地位を示す豪奢な肩章のついた純白の制服は、彼の鍛え上げられた体躯をより一層引き立てている。
一日の公務の疲れを滲ませながらも、ミミの顔を見ると、彼はふっと表情を和らげた。
「お帰りなさいませ、ガロウ様!お仕事、お疲れ様でした」
満開の花が綻ぶような笑顔でミミが駆け寄ると、ガロウは大きな腕を広げ、その華奢な体を優しく、しかし力強く抱きしめた。
彼の胸に顔をうずめると、陽光と、彼自身の持つ落ち着く匂いに混じって、騎士団の練兵場の微かな土埃の匂いがした。それがミミには、彼が今日も一日、この国のために懸命に働いてきた証のように思えて、たまらなく愛おしかった。
「ああ。今日も疲れた。だが、こうしてお前の顔を見ると疲れも吹き飛ぶな」
「まあ、お上手なんですから」
「本心だ。…ん?何かいい匂いがするな。今日の夕飯は、もしかして…」
くん、と鼻を鳴らす仕草は、狼獣人ならではのものだろうか。ガロウはミミの肩越しにキッチンの方へ視線を送り、期待に満ちた声を出した。
「はい!ガロウ様がお好きなりんごと蜂蜜を隠し味にした、特製ビーフシチューです。騎士団長就任の、ささやかなお祝いです」
「そうか、覚えていてくれたのか。嬉しいな。ありがとう、ミミ」
ガロウはミミの体を離すと、その銀色の髪をくしゃりと優しく撫でた。大きな手のひらの感触が心地よくて、ミミはもっと、とねだるように彼の胸にすり寄る。そんな彼女の様子に、ガロウは愛おしそうに目を細めた。
「さあ、冷めないうちに。すぐにご準備しますね」
名残惜しそうに彼から離れ、ミミは再びキッチンへと向かう。ガロウが制服から部屋着に着替えている間に、温め直したシチューを深皿にたっぷりと盛り付け、焼き立てのパンと、彩りの良いサラダをテーブルに並べた。
やがて、ラフなシャツ姿に着替えたガロウがダイニングにやってくる。騎士団長の制服を纏った凛々しい姿も素敵だけれど、こうして家でくつろいでいる時の、少しだけ気の抜けた表情もミミは大好きだった。
「うわあ、すごいな。まるでレストランのようだ」
「ふふ、腕によりをかけましたから」
テーブルに並べられた料理を見て、ガロウが感嘆の声を上げる。
湯気の立つシチューからは、食欲をそそる香りが立ち上っていた。こんがりと焼かれたパンは、手でちぎればふわりと小麦の甘い香りが広がるだろう。
「「いただきます」」
二人で声を揃えて手を合わせ、食事を始める。
ガロウはまず、スプーンでシチューを一口すすると、ほう、と感嘆のため息を漏らした。
「…うまい。本当にうまいぞ、ミミ。肉は驚くほど柔らかいし、野菜の甘みもよく出ている。店のどんな高級料理より、俺はお前の作るこのシチューが一番好きだ」
「本当ですか?よかった…!」
彼の心からの賞賛に、ミミの顔がぱっと輝く。この瞬間のために、彼女は手間暇を惜しまなかったのだ。
ミミも自分の皿に口をつけながら、彼の話に耳を傾ける。
獣人王国アストリアの王都の郊外、騎士団の官舎が立ち並ぶ通りは、家路につく人々の穏やかな活気と、家々から漏れ聞こえる夕餉の支度の音に満たされていた。
その一軒、若き騎士団長である狼獣人ガロウ・シュヴァルツとその番、ミミが暮らす家のキッチンは、ことさらに温かな光と幸福な香りに包まれていた。
「ふんふふーん、ふふーん♪」
小柄な猫獣人の少女、ミミはご機嫌な鼻歌を歌いながら、大きな煮込み鍋の前に立っていた。彼女のふわふわとした銀色の髪が、西日を受けてきらきらと輝いている。亜麻色のエプロンをきゅっと結び、木べらで鍋の底が焦げ付かないように、ことことと優しくかき混ぜる。
鍋の中で踊っているのは、たっぷりの野菜と、こんがりと焼き目をつけた大ぶりの肉塊。今日は夫であるガロウの好物、特製のビーフシチューだ。数時間前から丁寧に煮込んでいるそれは、赤ワインと香味野菜の芳醇な香りをあたり一面に漂わせていた。
「よし、いい感じ。あとはガロウ様がお帰りになるまで、弱火でゆっくり…」
味見をしたスプーンをぺろりと舐め、満足げに微笑むミミの背後で、感情を表すようにぴこ、と銀色の尻尾が楽しげに揺れる。普段は生活の邪魔にならないように魔法で隠している猫耳と尻尾も、一人の時や、こうして心からリラックスしている時には、つい姿を現してしまうのだった。
今日は、ただのシチューではない。
先日、ガロウが騎士団の分隊長から、史上最年少での騎士団長就任という快挙を成し遂げた。その、ささやかなお祝いなのだ。
もちろん、盛大な祝賀会は王城で開かれたし、上級貴族である狼族のシュヴァルツ家でも親族を招いてのパーティーがあった。けれど、ミミがしたかったのは、誰にも邪魔されない二人だけの食卓で、「おめでとうございます」と「お疲れ様です」の気持ちを込めた手料理を、お腹いっぱい食べてもらうことだった。
「ガロウ様、きっと喜んでくださるわ」
彼の喜ぶ顔を想像するだけで、ミミの胸はぽかぽかと温かくなる。
彼女は、この国ではごくありふれた、何の力も持たない一般市民階級の猫獣人だ。片やガロウは、国の武力を担う騎士団の中でも特に名門とされる、上級貴族・狼族の嫡男。本来であれば、決して交わるはずのない身分だった。
それがどうだろう。今、自分は彼の「番」として、この腕の中に余るほどの幸せを抱きしめている。
獣人にとって「番」とは、魂で結ばれた唯一無二の伴侶。神が定めた運命の相手。
数年前、初めてガロウに出会ったあの日、魂が震えるような感覚と共に、彼こそが自分の番だとミミは直感した。そして、彼もまた、自分を番として選んでくれた。それは、奇跡以外の何物でもなかった。
「この幸せが、ずっとずっと続きますように」
祈るような気持ちで呟きながら、ミミはオーブンを覗き込む。中では、ふっくらと膨らんだ丸いパンが、香ばしい焼き色をつけていた。シチューには、やはり焼き立てのパンが一番だ。
ふと、壁にかけられた時計に目をやる。もうすぐ、ガロウが帰ってくる時間だった。
ミミは急いでエプロンを外し、玄関へと続く廊下を念入りに掃除し直す。埃ひとつない床をさらに磨き上げ、玄関マットの角度をきっちりと揃えた。愛する夫が、一日の激務を終えて帰ってくる最初の場所だ。いつも清潔で、心地よい空間にしておきたかった。
準備を終え、リビングのソファにちょこんと腰を下ろして彼の帰りを待つ。
窓の外では、最後の夕陽が官舎の屋根を金色に染め上げていた。静かな部屋に響くのは、壁時計が時を刻む音と、キッチンから微かに聞こえるシチューが煮える音だけ。
それは、ミミにとって世界で一番安らげる、幸福の音だった。
カチャリ、と遠くで門扉の開く音がした。
続いて、石畳を規則正しく踏みしめる、聞き慣れた軍靴の足音。
「!」
ミミの隠していた猫耳が、ぴょこんと頭の上に飛び出す。尻尾もソファの陰から現れ、ぱたぱたと嬉しそうに床を叩いた。
間違いない。彼だ。
ミミは弾かれたようにソファから立ち上がると、ぱたぱたと軽い足音を立てて玄関ホールへと駆け出した。
重厚な木製のドアが開き、待ちわびた人の姿が現れる。
「ただいま、ミミ」
そこに立っていたのは、黒狼獣人らしい野性的な精悍さと、貴族としての気品を併せ持った、美しい青年だった。艶やかな黒髪に、鋭さを秘めた灰色がかった瞳。騎士団長の地位を示す豪奢な肩章のついた純白の制服は、彼の鍛え上げられた体躯をより一層引き立てている。
一日の公務の疲れを滲ませながらも、ミミの顔を見ると、彼はふっと表情を和らげた。
「お帰りなさいませ、ガロウ様!お仕事、お疲れ様でした」
満開の花が綻ぶような笑顔でミミが駆け寄ると、ガロウは大きな腕を広げ、その華奢な体を優しく、しかし力強く抱きしめた。
彼の胸に顔をうずめると、陽光と、彼自身の持つ落ち着く匂いに混じって、騎士団の練兵場の微かな土埃の匂いがした。それがミミには、彼が今日も一日、この国のために懸命に働いてきた証のように思えて、たまらなく愛おしかった。
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「まあ、お上手なんですから」
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くん、と鼻を鳴らす仕草は、狼獣人ならではのものだろうか。ガロウはミミの肩越しにキッチンの方へ視線を送り、期待に満ちた声を出した。
「はい!ガロウ様がお好きなりんごと蜂蜜を隠し味にした、特製ビーフシチューです。騎士団長就任の、ささやかなお祝いです」
「そうか、覚えていてくれたのか。嬉しいな。ありがとう、ミミ」
ガロウはミミの体を離すと、その銀色の髪をくしゃりと優しく撫でた。大きな手のひらの感触が心地よくて、ミミはもっと、とねだるように彼の胸にすり寄る。そんな彼女の様子に、ガロウは愛おしそうに目を細めた。
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やがて、ラフなシャツ姿に着替えたガロウがダイニングにやってくる。騎士団長の制服を纏った凛々しい姿も素敵だけれど、こうして家でくつろいでいる時の、少しだけ気の抜けた表情もミミは大好きだった。
「うわあ、すごいな。まるでレストランのようだ」
「ふふ、腕によりをかけましたから」
テーブルに並べられた料理を見て、ガロウが感嘆の声を上げる。
湯気の立つシチューからは、食欲をそそる香りが立ち上っていた。こんがりと焼かれたパンは、手でちぎればふわりと小麦の甘い香りが広がるだろう。
「「いただきます」」
二人で声を揃えて手を合わせ、食事を始める。
ガロウはまず、スプーンでシチューを一口すすると、ほう、と感嘆のため息を漏らした。
「…うまい。本当にうまいぞ、ミミ。肉は驚くほど柔らかいし、野菜の甘みもよく出ている。店のどんな高級料理より、俺はお前の作るこのシチューが一番好きだ」
「本当ですか?よかった…!」
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ミミも自分の皿に口をつけながら、彼の話に耳を傾ける。
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