猫と幼なじみ

鏡野ゆう

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帝国海軍の猫大佐 裏話

一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 13

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帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです


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「さてと。和人かずと、そろそろ下におりて見学するか。あとちょっとで見学の時間もおしまいだから、他の場所が見れなくなっちゃうぞ?」
「ここがいいー!」
「いつまでもお前がそこにいたら、艦長が座れなくて困るだろ?」

 後ろで軽い咳ばらいが聞こえた。振り返れば大友おおともさんが入ってくるところだった。

「ほら。艦長が来たぞ? 和人がイスを返してあげないと、艦長が座れなくて、立ったままになっちゃうぞ?」
「ここ、市バスみたいなゆーせんせきー?」

 その言葉に、立っていた人達が変な咳ばらいをする。

「……いや、どうかな。そこまで年はとってないと思うけど」
「和人君から見たら、立派なお年寄りだよね、おじさんは」

 大友さんは笑いながらイスのところにやってきて、おちびさんの頭をなでた。

「こんにちわ!」
「こんにちは。今日は楽しかった?」
「楽しかったー! ペダルこいで、けんすいしたー!」
「ん?」

 大友さんは首をかしげながら修ちゃんに目を向ける。

「お茶会のあいだ、伊勢いせ達とトレーニングルームで遊んでもらっていたんですよ」
「ああ、なるほどね。それが気に入ったのなら、和人君の将来は立検隊たちけんたいで決まりかな」
「さあ、どうでしょう」
「副長の息子なら、将来は護衛艦の艦長になってブイブイいわなきゃダメっしょ」

 山部やまべさんが横で笑った。

「ブイブイってなんだよブイブイって。ほら、本当に行くぞ」

 しゅうちゃんはさっさとおちびさんを抱き上げた。

「では艦長、自分は下にいきます」
「ご苦労さん。和人君、臨時艦長のおつとめ、ご苦労さまでした」
「はい!」

 大友さんとおちびさんが敬礼をしあう。

「では皆さん、お邪魔しました。これで失礼します」

 私も皆さんに挨拶をしながら、修ちゃんについていく。

「気をつけておりてくださいねー」
「また遊びにきてくださいねー」

 その場にいた人達に見送られ、私達は下に降りることにした。

「まこっちゃん、先行して。俺のほうが遅いだろうから」
「わかったー」

 本当にここの階段はやっかいだ。そしてのぼる時よりおりる時のほうが、その厄介さが増す。修ちゃんも階段に慣れているとはいえ、おちびさんを抱っこしている状態だ。その足取りはかなり慎重だった。

「和人、そこ、頭ぶつけるから気をつけて」
「はーい」
「それと、最初のところで止まったら、パパの帽子、ママの頭に乗せて。ツバのせいで階段が見えにくい。まこっちゃん、おりたところでストップ」
「わかったー」

 最初の階段が途切れたところで、私の頭の上に帽子が乗った。そしてそのまま、次の階段をおりていく。

「私より、かず君だっこしてる修ちゃんのほうが早くない? 先に行く?」
「いや、俺は後ろのほうがいい。俺が前になって、万が一まこっちゃんが踏み外して落ちてきたら、三人モロトモだから」
「ああ、それは納得する。私だけなら何とかつかまれそうだけど」
「だろ?」

 二人でモロトモならともかく、おちびさんも含めての三人モロトモは非常にまずい。まずは自分達の子供の安全が第一だ。

「はい、到着。おりて」

 おちびさんをおろすと、目の前のドアを開けた。開けて外に出ると、前のほうの甲板だった。ちょうどドアの前を歩いていた見学者さんが、予想外の場所からの人の出現にギョッとした顔をしている。そしてその横に立っていた隊員さんが、修ちゃんに敬礼をした。

「まこっちゃん、あずけた帽子こっちに」
「ああ、はい、どうぞ」

 帽子をかぶると、おちびさんと手をつないで前を歩いていく。

「和人、さっきまであそこにいたんだぞ?」

 そう言いながら上に見える艦橋をさした。窓越しに、双眼鏡で前のほうを見ている山部さんの姿が見える。途中でこっちに気がついたのか、下に双眼鏡を向けて手を振ってきた。

「たかいねー!」
「けっこうな階段だったもんね」

 見上げたおちびさんも、山部さんに気づいて手をふる。あの場所の窓ふき作業とかもあるらしく、そのための足場と安全帯をつける手すりがあるらしいけど、私にはとてもできそうにないかな。

「あ、パパ、みむろのおめめ!」

 上を見上げていたおちびさんが指でさす。指の先にあるのは、艦橋の下にある、大きな六角形の白いパネルのようなものだ。

「おめめは間違ってはいないかな。あれはこのふねのレーダーだから」

 六角形の白いパネル。その奥にはこの護衛艦の目ともいえるレーダーがあるらしい。でも正直言って、私にはあれは目というより、六角形のサロンパスにしか見えない。だからあれを見るたびに、護衛艦さんも肩こりで大変なんだろうなって思うことにしている。

「まこっちゃんはあれ、サロンパスに見えるんだっけ?」
「そうなの。あのぐらいの大きさがあったら、一生、サロンパスを買わなくてもいいよね」
「あれだけ大きかったらものすごいにおいがして、あっちこっちから苦情が来そうだけどな」

 修ちゃんが笑った。
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