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先ずは美味しく御馳走さま♪
第十一話 ニヤニヤ狼が現れた
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お日様の匂いがするお布団にくるまれて、いつの間にか熟睡してしまったらしく、目が覚めると部屋は薄暗かった。病院のように騒がしくもないし、薬っぽい匂いもしない静かな部屋。あ、かすかにお味噌汁の匂いがしているような気がする。そう言えばここ、葛城さんの御実家なんだよね。ってことは、この匂いはお母さんが、夕飯の準備を始めているってことなのかな……。
「???」
あと、何だか背中が温かい。それと何か重たいものが、体にまとわりついているのと、足の間に何か挟まってる。それから、耳元で人の呼吸する音が聞こえくる。視線をそちらに向ければ……。
「葛城さん?」
「ああ、起きちゃったか。残念、抱き心地良かったのに」
「何してるんですか」
「さっき、起きてるかなって様子を見にきたら寝苦しそうにしていたから、添い寝してあげてた」
「あげてた」をやけに強調しているのは何故?
「……なんで足の間に、葛城さんの足が……」
「足がだるそうだったから高くするため。覚えてないんだろ? どうした?って尋ねたら、足がだるいってブツブツ言ってたんだぞ。だから結果的に、添い寝するハメに」
私のお馬鹿。なんでそんな馬鹿正直に答えるのよぅ……。確かに病院でも足がだるくて、抱き枕が欲しいとは思っていたけどさ、だったら自分の足だけ置いていくとか、枕か座布団を持ってきてくれるとか? そんな感じにしてくれても良かったのに。お世話になっている身で、あれこれ文句を言うのもあれだけど。
「すみません。起きましたので、もう添い寝は結構です」
「もう少しこのままでいさせてくれると、嬉しいんだけど」
それって結局のところ、私のために添い寝をしたんじゃなくて、自分のためにしたのでは?
「お母さんが呼びに来られるんじゃ?」
耳元でクスクスと笑う声。何がそんなにおかしいんだろ。
「これ、見てみなよ」
そう言って、私の体にまわされていた葛城さんの片腕が一瞬だけ離れて、目の前に携帯電話が差し出された。
「うちの母親って、変なところで理解があるって言うか何ていうか。わが母ながらユニークだなって思うことが何度もあるんだが、今回のこれもなかなかのものだと思う」
画面にはメールの文章が。
『槇村さんまだ寝たまま』
『だったらそのまま起こさないであげて』
『なんか寝苦しそうにうなってる』
『さっさと降りてこないと踏み込むわよ』
『しばらく様子見で添い寝するだけ。誓って何もしない』
『だったら夕飯までは見逃してあげる』
親子で何をしているのやら。
「なに自宅内でメールしてるんですか」
「それなりに気を遣ってるんだと思うよ、母親なりに。俺が高校生だったら、また違ったやり口で攻めてくるんだろうが、今はいい年の大人だからさ。ま、いきなり踏み込んでくることは無いと思う」
「ちょっと待ってください。お母さんは私と葛城さんが、部屋でなにかしてると思ってるんですか?!」
焦って起きようとしたのに、後ろからしがみついている?葛城さんに邪魔されて引き戻され、彼の胸の上に仰向けに倒れ込むような恰好になる。
「俺は添い寝するって、書いてあるじゃないか」
「それを額面通りに受け取って良いんですか?」
「その通り。あれ、じゃあ槇村さん、添い寝以上のことをさせてくれる気があるってわけ?」
「なに嬉しそうな声を出しているんですか、ちょっ」
足の間に挟まっていた葛城さんの足が動いて、私の太ももの辺りをこすり始めた。膝が足の間の奥まったところに当たって、何やら妖しげな雰囲気になってきたので、それをやめさせようと、膝頭を手で押さえて動きを封じる。
「何もしないって、お母さんに返信してるのにっ」
「誘われちゃったら上げ膳に据え膳でしょ」
「誘ってなんていませんっ、やあっ」
後ろから回されていた手が、Tシャツの中に潜り込んできて胸に触れる。
「へえ、槇村さんって意外と胸が大きいんだ。この感じだとDカップぐらいかな?」
「なに勝手に人の胸の大きさ測ってるんですかっ、Cですっ」
って何を言ってるんだ私。
「せっかく、一目惚れした子を自分のテリトリーに連れ込んだんだ。本来なら時間をかけてゆっくりと攻略するんだけど、俺もそんなに休暇が取れるわけじゃないから。だから先に槇村さんをいただいておいて、気持ち的な盛り上がりは、あらためてゆっくりと」
いやいや、それ絶対に順序がおかしいですよ、お兄さん。気持ちとか色々と盛り上がってから、エッチするってのが普通では?
「あの、普通は逆じゃ?!」
「そうなんだけどさ、こうやって添い寝して槇村さんの体の感触を知ったら、我慢できなくなった。俺って駄目って言われると、チャレンジしたくなる人なんだよね」
触れていた手が胸をゆっくりと揺すって、太い指が先端を円を描くようにこすってくる。こっちは気持ちがついていてけないのに、体の方は葛城さんの愛撫が気に入ったようで、彼の手の動きに反応し始めていた。
「気持ち良い? ここが硬くなってきたし、ドキドキしているみたいだけど」
「下にお母さんがいるのにっ」
「だから派手な声はあげないように」
片方の手がゆっくりと下へと下がっていき、ウエストの辺りの肌を指でなぞっている。わあ、本当に始めちゃう気?!
「ダメですよ、もう夕飯の時間なんじゃ?!」
「だからダメって言われたら、チャレンジしたくなるって言ったよな? ってことは、スタンバイOKってことだよな。ちなみにうちの夕飯の時間は、最近だいたい七時頃らしい。ってことは、あと一時間ぐらいはあるか。大丈夫、ゆっくりできる」
「何がゆっくり……っ」
首筋をペロリと舐められてビクッと体が震えた。ダメと言ったらOKなんていう無茶苦茶な理論に対して、どうやってやめされば良いのか分からない。逆にOK? いやいや、そんなこと言ったら更に歯止めが効かなくなるんじゃ? って言うか、今更やめてくれそうにないし。
「葛城さん、せめてお風呂の後に……」
そりゃ昨日の夜にお風呂に入って綺麗にしているけど、やっぱりこういう時ってせめてシャワーぐらい浴びたい。はっ、そんなこと言ったらますますその気だって思われちゃうじゃない!! そういう意味じゃなくて!! いや、そういう意味? あああ、もう頭がパニックだよ!!
「それにですね、仮にも私は怪我人で、こちらのお世話になる訳ですよ? すぐに活動的になるのは無理だって、葛城さんも言ってたじゃないですか。そんな私になにするおつもりで」
「なにって、おいしくいただくんですよ、槇村さんを♪」
なに語尾に音符をつけてるんだか!
「それにこんな状態で放り出したら、俺も辛いけど槇村さんも辛いんじゃ?」
「そそそそんなこと、ないですよっ」
「嘘つきだあ、槇村さん」
スルリと下着の中に入り込んできた指が触れたのは、葛城さんの足が挟まっているせいで閉じることができない、秘めやかな女性の部分。い、いきなりこんなことしてくるなんて、本当に気持ち的な盛り上がりは、後回しにしちゃうつもりらしい。
「か、葛城さん?!」
「うーん、そろそろ名前で呼んでもらいたいかなあ……そりゃ、俺も槇村さんって呼んでいるんだから、強制はできないんだけどさ」
ゆるゆると撫でられて、思考が飛びそうになるのを必死でつなぎとめる。
「そ、そういうことも後回し?!」
「ま、いいか。槇村さんに呼んでもらうと、他の人から呼ばれるのとはちょっと違った感じがするから。で、何だい?」
「……人の話、本当に聞いてないんだから」
「槇村さんの体の声はちゃんと聞いてるから心配ない。さて、そろそろ覚悟は良いかな、メガネちゃん」
「え? っ……や……あっ……」
つぷりと少しだけ入り込んできた指の感触に、声を上げると静かにしないと下に聞こえちゃうよ?って、笑いを含んだ声が耳元でささやかれる。一体だれのせいだと思ってるだあ!
「中、すごく熱いね」
「そんなこと言わなくてもいいです! はぅっ」
深く貫かれる感触に、体が跳ねて思わず葛城さんの腕にしがみついた。
「そんな意地悪なこと言ったら、手加減せずにやっちゃうぞ?」
「意地悪なのは葛城さんですっ、こんなことしてっ、やぁ、動かさないでっ」
自分の中で葛城さんの指がうごめく感触に、頭を左右に振ってやめてってお願いするのに、耳元では笑い声がするだけ。取材の時、私の酸素マスクの留め金を止めてくれたり、定食屋さんで男の人にしては意外と上手にお箸を使っていた葛城さんの指が、自分の中に入ってると思うと、何だか妙な気分になってくる。妙な気分は、そのまま気持ち良いっていう気分に流されていっちゃって、いつの間にか下にお母さんがいることなんて、頭から消えてしまっていた。そうなってしまうと、もう体は葛城さんが生み出す感覚にどこまでも正直だ。
「急に素直になったね、もう降伏?」
「だって、葛城さんが……あっ、んんっ」
更にもう一本の指が入り込んでくる。ちょっと辛くて腰が引けてしまったのを感じたのか、中で動いていた指の動きが止まった。
「痛かった?」
「少し……」
そう答えると、まるでそのことを詫びるように、首筋を這っていた唇が耳の下で音を立てる。肌を吸われたとたん、何故か背中に電気が通ったような痺れが走り、それを感じとった葛城さんが笑ったのを首筋で感じた。
「へえ、槇村さん、ここが弱いんだ」
「え……?」
「だってここにキスしたとたん、中が反応して凄い絞めつけてきた」
「ややや、そんなこと言わないでくださいっ」
「事実だし、ほら」
「ひゃっ」
そう言って葛城さんが同じところに舌を這わせると、今度は甘い痺れが背中から腰の辺りにかけて走った。
「な? 胸よりもこっちの方が感じるんじゃないかな?」
「そんなこと、な……っ、ああ、だめっ」
動きを止めていた指に中をこすられて、思わず声が大きくなってしまい、葛城さんに静かにしないと下に聞こえるよって、再び笑いを含んだ声で言われてしまう。呆れた、絶対にこの状況を楽しんでいるよ……。そんなことを考えられたのは一瞬で、激しくなってきた動きに翻弄されて頭の中は真っ白、ただただ葛城さんの腕に縋りついて快感に耐えるしかなくて。
「足、痛くない?」
いかされてしまった後、しばらく黙って私の体を撫でていた葛城さんが声をかけてくる。その優しげな声に、逆にムッとしてしまった。
「何を今更……」
「いや、体勢を変えるから確認しただけ。そんな喧嘩調子で口答えできるってことは、今は薬のお蔭で痛くないってことか」
「これでも私、一応は怪我人……わっ」
いきなり視界がグルンと回って、気がつけば葛城さんの腰にまたがって彼を見下ろす姿勢になっていた。しかもいつの間にか、下にはいていたものが全部無くなっているし。一体どんな早技、魔法の手? 自衛官の人達って皆こんな感じで、色々な意味で手が早い人ばかりなの?
「槇村さんが俺の操縦桿を握ったらどんな感じなんだろうな?って想像していたんだが、まあそれは日を改めてってことで、今は搭乗してくれるだけで良いか」
「さらっとパイロットみたいな下ネタ言わないでください」
「俺、パイロットだし」
葛城さんはそう言うと、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「きっと槇村さんなら俺のこと上手に乗りこなせると思うんだけど?」
「だから飛行機は嫌いだって言ってるじゃないですか」
「飛行機じゃなくて戦闘機」
「どっちも大して変わらな……っ、んっ……」
後頭部に当てられた葛城さんの手に引き寄せられて、唇をふさがれる。それと同時に熱いものが触れてきた。
「あまり大きな声は出さないように。いくら俺のことを理解してくれているオフクロでも、二階ではしゃいでいる声が聞こえちゃったら、いろいろと拙いだろ?」
「何がはしゃ……っ……んあっ、んんんっ」
熱くて硬いものが体の奥に入ってくる感触に思わず声を上げると、静かにしないと下に聞こえるよって言いながら、葛城さんは自分の唇で声を封じてくる。そして再びクルリと体の位置が反転し、シーツに縫いつけられるように押さえつけると、そのままゆったりとしたリズムで動き始め、私は葛城さんを乗りこなすどころか、彼に翻弄され続けることになってしまったのだ。
「???」
あと、何だか背中が温かい。それと何か重たいものが、体にまとわりついているのと、足の間に何か挟まってる。それから、耳元で人の呼吸する音が聞こえくる。視線をそちらに向ければ……。
「葛城さん?」
「ああ、起きちゃったか。残念、抱き心地良かったのに」
「何してるんですか」
「さっき、起きてるかなって様子を見にきたら寝苦しそうにしていたから、添い寝してあげてた」
「あげてた」をやけに強調しているのは何故?
「……なんで足の間に、葛城さんの足が……」
「足がだるそうだったから高くするため。覚えてないんだろ? どうした?って尋ねたら、足がだるいってブツブツ言ってたんだぞ。だから結果的に、添い寝するハメに」
私のお馬鹿。なんでそんな馬鹿正直に答えるのよぅ……。確かに病院でも足がだるくて、抱き枕が欲しいとは思っていたけどさ、だったら自分の足だけ置いていくとか、枕か座布団を持ってきてくれるとか? そんな感じにしてくれても良かったのに。お世話になっている身で、あれこれ文句を言うのもあれだけど。
「すみません。起きましたので、もう添い寝は結構です」
「もう少しこのままでいさせてくれると、嬉しいんだけど」
それって結局のところ、私のために添い寝をしたんじゃなくて、自分のためにしたのでは?
「お母さんが呼びに来られるんじゃ?」
耳元でクスクスと笑う声。何がそんなにおかしいんだろ。
「これ、見てみなよ」
そう言って、私の体にまわされていた葛城さんの片腕が一瞬だけ離れて、目の前に携帯電話が差し出された。
「うちの母親って、変なところで理解があるって言うか何ていうか。わが母ながらユニークだなって思うことが何度もあるんだが、今回のこれもなかなかのものだと思う」
画面にはメールの文章が。
『槇村さんまだ寝たまま』
『だったらそのまま起こさないであげて』
『なんか寝苦しそうにうなってる』
『さっさと降りてこないと踏み込むわよ』
『しばらく様子見で添い寝するだけ。誓って何もしない』
『だったら夕飯までは見逃してあげる』
親子で何をしているのやら。
「なに自宅内でメールしてるんですか」
「それなりに気を遣ってるんだと思うよ、母親なりに。俺が高校生だったら、また違ったやり口で攻めてくるんだろうが、今はいい年の大人だからさ。ま、いきなり踏み込んでくることは無いと思う」
「ちょっと待ってください。お母さんは私と葛城さんが、部屋でなにかしてると思ってるんですか?!」
焦って起きようとしたのに、後ろからしがみついている?葛城さんに邪魔されて引き戻され、彼の胸の上に仰向けに倒れ込むような恰好になる。
「俺は添い寝するって、書いてあるじゃないか」
「それを額面通りに受け取って良いんですか?」
「その通り。あれ、じゃあ槇村さん、添い寝以上のことをさせてくれる気があるってわけ?」
「なに嬉しそうな声を出しているんですか、ちょっ」
足の間に挟まっていた葛城さんの足が動いて、私の太ももの辺りをこすり始めた。膝が足の間の奥まったところに当たって、何やら妖しげな雰囲気になってきたので、それをやめさせようと、膝頭を手で押さえて動きを封じる。
「何もしないって、お母さんに返信してるのにっ」
「誘われちゃったら上げ膳に据え膳でしょ」
「誘ってなんていませんっ、やあっ」
後ろから回されていた手が、Tシャツの中に潜り込んできて胸に触れる。
「へえ、槇村さんって意外と胸が大きいんだ。この感じだとDカップぐらいかな?」
「なに勝手に人の胸の大きさ測ってるんですかっ、Cですっ」
って何を言ってるんだ私。
「せっかく、一目惚れした子を自分のテリトリーに連れ込んだんだ。本来なら時間をかけてゆっくりと攻略するんだけど、俺もそんなに休暇が取れるわけじゃないから。だから先に槇村さんをいただいておいて、気持ち的な盛り上がりは、あらためてゆっくりと」
いやいや、それ絶対に順序がおかしいですよ、お兄さん。気持ちとか色々と盛り上がってから、エッチするってのが普通では?
「あの、普通は逆じゃ?!」
「そうなんだけどさ、こうやって添い寝して槇村さんの体の感触を知ったら、我慢できなくなった。俺って駄目って言われると、チャレンジしたくなる人なんだよね」
触れていた手が胸をゆっくりと揺すって、太い指が先端を円を描くようにこすってくる。こっちは気持ちがついていてけないのに、体の方は葛城さんの愛撫が気に入ったようで、彼の手の動きに反応し始めていた。
「気持ち良い? ここが硬くなってきたし、ドキドキしているみたいだけど」
「下にお母さんがいるのにっ」
「だから派手な声はあげないように」
片方の手がゆっくりと下へと下がっていき、ウエストの辺りの肌を指でなぞっている。わあ、本当に始めちゃう気?!
「ダメですよ、もう夕飯の時間なんじゃ?!」
「だからダメって言われたら、チャレンジしたくなるって言ったよな? ってことは、スタンバイOKってことだよな。ちなみにうちの夕飯の時間は、最近だいたい七時頃らしい。ってことは、あと一時間ぐらいはあるか。大丈夫、ゆっくりできる」
「何がゆっくり……っ」
首筋をペロリと舐められてビクッと体が震えた。ダメと言ったらOKなんていう無茶苦茶な理論に対して、どうやってやめされば良いのか分からない。逆にOK? いやいや、そんなこと言ったら更に歯止めが効かなくなるんじゃ? って言うか、今更やめてくれそうにないし。
「葛城さん、せめてお風呂の後に……」
そりゃ昨日の夜にお風呂に入って綺麗にしているけど、やっぱりこういう時ってせめてシャワーぐらい浴びたい。はっ、そんなこと言ったらますますその気だって思われちゃうじゃない!! そういう意味じゃなくて!! いや、そういう意味? あああ、もう頭がパニックだよ!!
「それにですね、仮にも私は怪我人で、こちらのお世話になる訳ですよ? すぐに活動的になるのは無理だって、葛城さんも言ってたじゃないですか。そんな私になにするおつもりで」
「なにって、おいしくいただくんですよ、槇村さんを♪」
なに語尾に音符をつけてるんだか!
「それにこんな状態で放り出したら、俺も辛いけど槇村さんも辛いんじゃ?」
「そそそそんなこと、ないですよっ」
「嘘つきだあ、槇村さん」
スルリと下着の中に入り込んできた指が触れたのは、葛城さんの足が挟まっているせいで閉じることができない、秘めやかな女性の部分。い、いきなりこんなことしてくるなんて、本当に気持ち的な盛り上がりは、後回しにしちゃうつもりらしい。
「か、葛城さん?!」
「うーん、そろそろ名前で呼んでもらいたいかなあ……そりゃ、俺も槇村さんって呼んでいるんだから、強制はできないんだけどさ」
ゆるゆると撫でられて、思考が飛びそうになるのを必死でつなぎとめる。
「そ、そういうことも後回し?!」
「ま、いいか。槇村さんに呼んでもらうと、他の人から呼ばれるのとはちょっと違った感じがするから。で、何だい?」
「……人の話、本当に聞いてないんだから」
「槇村さんの体の声はちゃんと聞いてるから心配ない。さて、そろそろ覚悟は良いかな、メガネちゃん」
「え? っ……や……あっ……」
つぷりと少しだけ入り込んできた指の感触に、声を上げると静かにしないと下に聞こえちゃうよ?って、笑いを含んだ声が耳元でささやかれる。一体だれのせいだと思ってるだあ!
「中、すごく熱いね」
「そんなこと言わなくてもいいです! はぅっ」
深く貫かれる感触に、体が跳ねて思わず葛城さんの腕にしがみついた。
「そんな意地悪なこと言ったら、手加減せずにやっちゃうぞ?」
「意地悪なのは葛城さんですっ、こんなことしてっ、やぁ、動かさないでっ」
自分の中で葛城さんの指がうごめく感触に、頭を左右に振ってやめてってお願いするのに、耳元では笑い声がするだけ。取材の時、私の酸素マスクの留め金を止めてくれたり、定食屋さんで男の人にしては意外と上手にお箸を使っていた葛城さんの指が、自分の中に入ってると思うと、何だか妙な気分になってくる。妙な気分は、そのまま気持ち良いっていう気分に流されていっちゃって、いつの間にか下にお母さんがいることなんて、頭から消えてしまっていた。そうなってしまうと、もう体は葛城さんが生み出す感覚にどこまでも正直だ。
「急に素直になったね、もう降伏?」
「だって、葛城さんが……あっ、んんっ」
更にもう一本の指が入り込んでくる。ちょっと辛くて腰が引けてしまったのを感じたのか、中で動いていた指の動きが止まった。
「痛かった?」
「少し……」
そう答えると、まるでそのことを詫びるように、首筋を這っていた唇が耳の下で音を立てる。肌を吸われたとたん、何故か背中に電気が通ったような痺れが走り、それを感じとった葛城さんが笑ったのを首筋で感じた。
「へえ、槇村さん、ここが弱いんだ」
「え……?」
「だってここにキスしたとたん、中が反応して凄い絞めつけてきた」
「ややや、そんなこと言わないでくださいっ」
「事実だし、ほら」
「ひゃっ」
そう言って葛城さんが同じところに舌を這わせると、今度は甘い痺れが背中から腰の辺りにかけて走った。
「な? 胸よりもこっちの方が感じるんじゃないかな?」
「そんなこと、な……っ、ああ、だめっ」
動きを止めていた指に中をこすられて、思わず声が大きくなってしまい、葛城さんに静かにしないと下に聞こえるよって、再び笑いを含んだ声で言われてしまう。呆れた、絶対にこの状況を楽しんでいるよ……。そんなことを考えられたのは一瞬で、激しくなってきた動きに翻弄されて頭の中は真っ白、ただただ葛城さんの腕に縋りついて快感に耐えるしかなくて。
「足、痛くない?」
いかされてしまった後、しばらく黙って私の体を撫でていた葛城さんが声をかけてくる。その優しげな声に、逆にムッとしてしまった。
「何を今更……」
「いや、体勢を変えるから確認しただけ。そんな喧嘩調子で口答えできるってことは、今は薬のお蔭で痛くないってことか」
「これでも私、一応は怪我人……わっ」
いきなり視界がグルンと回って、気がつけば葛城さんの腰にまたがって彼を見下ろす姿勢になっていた。しかもいつの間にか、下にはいていたものが全部無くなっているし。一体どんな早技、魔法の手? 自衛官の人達って皆こんな感じで、色々な意味で手が早い人ばかりなの?
「槇村さんが俺の操縦桿を握ったらどんな感じなんだろうな?って想像していたんだが、まあそれは日を改めてってことで、今は搭乗してくれるだけで良いか」
「さらっとパイロットみたいな下ネタ言わないでください」
「俺、パイロットだし」
葛城さんはそう言うと、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「きっと槇村さんなら俺のこと上手に乗りこなせると思うんだけど?」
「だから飛行機は嫌いだって言ってるじゃないですか」
「飛行機じゃなくて戦闘機」
「どっちも大して変わらな……っ、んっ……」
後頭部に当てられた葛城さんの手に引き寄せられて、唇をふさがれる。それと同時に熱いものが触れてきた。
「あまり大きな声は出さないように。いくら俺のことを理解してくれているオフクロでも、二階ではしゃいでいる声が聞こえちゃったら、いろいろと拙いだろ?」
「何がはしゃ……っ……んあっ、んんんっ」
熱くて硬いものが体の奥に入ってくる感触に思わず声を上げると、静かにしないと下に聞こえるよって言いながら、葛城さんは自分の唇で声を封じてくる。そして再びクルリと体の位置が反転し、シーツに縫いつけられるように押さえつけると、そのままゆったりとしたリズムで動き始め、私は葛城さんを乗りこなすどころか、彼に翻弄され続けることになってしまったのだ。
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