もう一度、私に恋させて!

かわた

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10:お買い物とクリームあんみつ

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昨日は魔の出現もあって家に帰ってもあまり勉強は進まず
希樹は気が重くなりながらも一歩一歩踏みしめつつ登校の道を歩く。

気が重い原因は勉強が進まなかったこともそうだが
魔について気になる点があるからだ。

(――魔が弱すぎる…。)

魔はウイルスのように最初は弱くてもどんどん強さが増していく。
そして色んな型に別れるのだ。
動物型、人型、植物型、精霊型など、形や大きさに種類ができていって
そこからまた進化が進み、旅の中で倒しづらくなった。

だけれど昨日の魔は初期のなにも形をとらないタイプ
一番弱いとされる魔である。

希樹が帰還する時にはこの型の魔はとっくの昔に絶滅させていて、万が一にもこちらに紛れ込むことはないのだ。
もし紛れ込むならば、進化が進んだタイプだろう。

昨日から悶々と考えているのだけれど、そもそもこちらに入り込んだ理由がわからないので
考えたところで全て『もしかして』になってしまう。
希樹はそのこまで考え付くと少しため息をついて、ずっと気配がする後ろを振り向く。

三つめの気が重い原因だ。

留香くんが女の子と複数人と一緒に登校しているからだ。
朝からきゃっきゃうふふ、と女の子が頑張って留香の気をひこうとしているけれど
留香はいつも通りクールな薄い反応で受け答えしている。

時折自分のほうに視線を向けてはなにか言いたげにしているように感じられて
気になるけれどそれを気づかないふりをして希樹は足早にクラスへと入っていく。


(――留香くん、変わっちゃったなぁ…)



◇◆◇


その週の休日セフィラの家で魔についての議論をする予定だったが
セフィラは隣駅の大きめの繁華街にいきたいと希樹に言い出した。
呆れつつもこの人がマイペースなのはいつものことだ、と言い聞かせ
なにを買いたいのかを訊ねることにした。

「なにか買うのですか?」

「炊飯器、というものを購入したいのです。」

こちらに来てから日本食にはまってしまったセフィラは自宅でも米を炊けると知ったらしい。
頬を染め、家電量販店のチラシを握りしめるセフィラに異世界の司祭の威厳を感じることはない。

「テレビを買ったときに一緒に買わなかったのですか?」

「その時はそんなすごい機械だとは思わなかったのです…あんなにお米がおいしいなんて…!
土鍋でもいいのですが、いきなり魔が出たときにお米をそのままに出るわけにはいきませんし…」

「それもそうですねぇ…」

しょんぼりとするセフィラに希樹もしょんぼりとうなだれる。
多分元の世界の仲間がいたのならば誰かしら「そこかよ!!」とツッコミを入れただろうが
ここには誰もツッコミをいれるものはいない…。

ふと、なにかに気づいた希樹はスマホを取り出しポチポチと検索をいれる
セフィラもそれに気づき、希樹の隣に近づいて大きい体を曲げつつ小さい携帯画面をのぞき込む。

「ふっふっふ、セフィラ様逆にラッキーですよ」

「ど、どういうことですか…!勇者様…!!」


希樹は自分の財布からチラシの家電量販店のカードを取り出し、シャキーンとセフィラへと高々と見せた。
セフィラはわくわくと目を輝かせつつ希樹の言葉を待った。


「なにせ今日はポイント増量キャンペーン中ですからね!!」

「さすが勇者様!!」

「お得に買い物できますよ!!!」

どこから取り出したのかセフィラはクラッカーとタンバリンを取り出し鳴らした。
キャーキャーと騒ぐ天然2人を止める者はここにはいない。

そしてこの興奮したテンションのまま2人は隣駅の家電量販店へとむかった。

◇◆◇



「これすべて電気を使って動くのですよね?」

「はい」

「ほう、本当になにもかも違うのですね…あちらとは」

感心したようにセフィラは頷き、しげしげと電化製品を眺め希樹や店の人に熱心に質問をする。
店員さんは2mの外国人に話しかけられて、萎縮していた。

セフィラは買った炊飯器をほくほく顔で『これで美味しいお米が炊けます!』と喜んでいた。
パソコンや携帯にも興味をもってしげしげと眺めていたが今回は買わず質問をするだけにとどめたようだ。

それにしても2mの長身にあの美貌、そして変なTシャツ姿のセフィラは注目の的だった。
皆が皆しげしげと彼を遠慮なく眺めてはうっとりしたり、頬を染めたりしている。

ちなみにセフィラの今日着ているTシャツは『I Love いちご大福』である。


「勇者様お昼にしましょう」

「どこも混んでいますね…
あ!ファミレスでいいならば入りましょうか」

「ふぁみれす!ファミレスとは…?」

目的のものを買い2人は遅めのランチを食べようと近くのファミレスに立ち寄る。
ガラス越しに飾られた食品サンプルにセフィラはキラキラと目を輝かせる。

「うどん…そば…はんばーぐ…おむらいす…!!!!
なんですか!クリームにあんこが入った食べ物は…!!!?」

「クリームあんみつですよ。透明の寒天と入っているので甘さは控えめになります。おいしいです!!!」

「かんてん!!!おいしそうです…」

若干興奮を隠し切れない2人はファミレスに入り待つことなく席へと通された。
セフィラはわくわくとメニューをみてお子様ランチといちごパフェとクリームあんみつを頼んだ。
希樹は無難にパスタランチと小さいバナナチョコパフェを注文する。
…セフィラがお子様ランチを頼んだ時は店員から二度見された。


「この価格でこのように美味しいデザートを食べれるとは…夢のようです…」

「そういえばあちらですとスイーツは女子しかいないカフェとかにしかなかったですよね」


お腹も満たし目的のものも買い、夕日が落ちて薄暗くなってきたので帰宅することにした。
一駅なので帰りは腹ごなしに歩くことにして、車通りの少ない大きな道路をてくてくと2人は普通の速度で歩く。

「セフィラ様、今度洋服買いましょうか」

今日希樹は何回か勧めてみたが、のらりくらりと買わされてしまったのではっきりといった。
そういうとセフィラはショックを受けた顔をし、手を広げてオーバーなリアクションを取った。

「いやです!あの重苦しいマントから解放されたのです!
もうTシャツとジャージを一度きたら最後、もう他の服は着れません…
あんな体を締め付けるような重い服など…」

憂いを帯びた顔でうるうると瞳を潤ませてはいるが演技だと希樹はわかるので
しら~とした冷たい瞳を向ける。

(――というかセフィラ様がどんどんこの世界で堕落してっている感じがするんだけど…)

ていうかあの真っ白な洋服そんなに身体締め付けねーじゃんというツッコミを
彼らの仲間がここにいたのならばしていたところだろう。

―――――!

そんなくだらないやりとりをしていると、2人はピタリと一斉に歩みを止めた。

「悲鳴ですね…」

ゆったりと声を漏らしたセフィラに希樹は声もなく頷く。
2人のいる位置からは常人では微かな音しか聞こえないだろうがこのマイペース師弟にはしっかりと聞こえたようだ。

希樹はセフィラと目配らせして、声の方向へと向かった。
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