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第1章 ファスティアの冒険者
第38話 アイデンティティ
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エルスとアリサが部屋を出た直後のこと――。
木彫りの守護符を手の中で転がしながら、ナナシは窓の外へ目を向けていた。視界に入るのは広々とした農地や木々ばかり。特に感情を動かすようなものもなく、何も思い出すこともない。
記憶が無いのは確かに不便だが――目覚めたばかりのナナシには、不安や恐怖といった気持ちはなかった。体が少し怠いのもあり、まだ夢の中に居るような感覚だ。
ふと、手元のアミュレットへ視線を落とす。目に映る景色には何の思い入れも懐かしさも感じない一方で、これを眺めているとナナシの心は騒ついた。
「これは、僕のだった?」
切れた鎖は小さな輪を少し弄れば繋ぐことが出来そうだ。
嵌められている水晶は見るからに安物だろう。
血液のような汚れは拭き取った方がいいか。
これが誰の血なのか調べる方法があれば――
――次々と考えを巡らせていると、不意に外から窓を叩く音が聞こえた。
ナナシは、そちらへ顔を向ける。
窓の外には黒いマントを纏った男が立っていた。
男は軽く口元を上げ、小さく手を振ってみせる。逆立った深い青色の髪に、黄色の瞳。見た目こそ怪しいが、なんとなく彼からは敵意を感じない。
「はい?」
気怠い体を少し起こし、ナナシは窓の留め金を外す。そして窓を開けた。男が何者なのかはわからない。だが、話し相手にでもなってくれのるならば、退屈な景色を眺めているよりはいいだろう。
「よう、突然すまないな」
「いえ……。えっと、どなたですか?」
「オレはニセル・マークスター。エルスたちの仲間さ」
ニセルは気さくに言い、軽く左手を挙げる。その手には、小手だろうか――銅のような金属で出来た、グローブを着けているようだ。
「僕はナナシです――といっても、さっき決まったんですけどね。名前」
まだ慣れない自らの名を、ナナシは照れ臭そうに名乗る。
「――あ、外で待ってるエルスの仲間って……」
「ふっ、オレのことだな。こっちも野暮用があったんでね。まっ、別行動ってヤツさ」
「そうなんですね。でもエルスたちなら、さっき出て行きましたけど」
「ああ、すぐに合流する。その前に――ナナシ、お前さんに話がある」
「……僕に? 何でしょう?」
ニセルは窓の内側――つまり室内まで身を乗り出し、耳打ちをするような仕草をする。重要な話なのだろうか。ナナシは思わず、息を呑んだ。
「あまり時間がない。手短に話すぞ? 今は理解できないかもしれないが――お前さんにとって、重要なことだ」
「えっと……。もしかして、忠告とか警告ってやつですか?」
「そんなところだ。もし消されたくなければ、今から言うことを覚えておいてくれ」
「消される?……僕が……?」
ナナシの言葉に、ニセルは黙って頷く。
彼の目が、真剣さを物語っていた。
「いいか? まず一つめだ。もうすぐ、この辺り一帯に霧が出る。この話が終わったら、すぐに窓を閉めろ。そして、霧が出ている間は外に出ないようにするんだ」
「はい」
「よし、二つめだ。お前さんの記憶が無いことは黙っておけ。特に、自警団長のカダンや、神殿騎士には絶対にな。カダンはイイ奴だが、仕事に真面目すぎてな。少々融通がきかん」
「記憶喪失のこと……。カダン団長と神殿の騎士?――あ、はい」
「三つめ、最後だ。この家のドワーフの旦那に、〝エインシャント〟について訊いてみるんだ。彼なら、なぜオレがこんな話をしたのかを丁寧に教えてくれるはずだ」
「えっ、カルミドさんに?……わかりました」
「――以上だ。まっ、いきなり変なオッサンに意味不明なことを言われて驚いただろうが、最後のだけでも覚えておいてくれ」
そう言うとニセルは、ニヤリと口元を上げた――。
「あはは、確かに驚いてます。わかりました。ありがとう、マークスターさん」
「……ふっ、見事な記憶力だ。〝ニセル〟でいいぜ」
「はい、ニセルさん。でも、ひとついいですか?」
「なんだい?」
「どうして、僕にそんな警告を?」
ナナシの疑問に、ニセルは「ふっ」と息を吐く。
それが彼の癖なのだろう。
「ただのお節介さ。オレは――もう、誰にも消えてもらいたくなくてね」
「消える……ですか」
「ああ、それ以外に言い表せないのさ。まっ、あの旦那ならオレよりも巧く説明してくれるだろう」
「わかりました。あとで訊いてみます」
「おう。それじゃまたな。すぐに窓を閉めておいてくれ」
「はい。ありがとうございました」
ニセルは片手を挙げ、玄関の方向へ去って行った。それを見送り、ナナシは言われた通りに窓を閉め、留め金を掛ける。ガラスの向こうの空を見上げると、太陽が霞んでいるのが見えた。
「あっ、太陽が……。あれが〝霧〟か……」
ナナシは枕元に置いた、木彫りの守護符に目を遣る。ニセルの話、エルスがくれた守護符。自分は何者なのだろうかと考えを巡らせるが、やはり何ひとつ答えは出ない。
「まあ、いいや。良い人とたくさん知り合えたし、このままでも――」
何も思い出さない方が幸せかもしれない――
ナナシの頭を、そんな言葉が過ぎった。
「……僕は、ナナシだ……。たとえ僕が誰であっても――もう、それだけは譲らないよ……」
外の世界は、霧に包まれている。
真っ白な窓に映る青年に向かって、ナナシは力強く宣言した――。
木彫りの守護符を手の中で転がしながら、ナナシは窓の外へ目を向けていた。視界に入るのは広々とした農地や木々ばかり。特に感情を動かすようなものもなく、何も思い出すこともない。
記憶が無いのは確かに不便だが――目覚めたばかりのナナシには、不安や恐怖といった気持ちはなかった。体が少し怠いのもあり、まだ夢の中に居るような感覚だ。
ふと、手元のアミュレットへ視線を落とす。目に映る景色には何の思い入れも懐かしさも感じない一方で、これを眺めているとナナシの心は騒ついた。
「これは、僕のだった?」
切れた鎖は小さな輪を少し弄れば繋ぐことが出来そうだ。
嵌められている水晶は見るからに安物だろう。
血液のような汚れは拭き取った方がいいか。
これが誰の血なのか調べる方法があれば――
――次々と考えを巡らせていると、不意に外から窓を叩く音が聞こえた。
ナナシは、そちらへ顔を向ける。
窓の外には黒いマントを纏った男が立っていた。
男は軽く口元を上げ、小さく手を振ってみせる。逆立った深い青色の髪に、黄色の瞳。見た目こそ怪しいが、なんとなく彼からは敵意を感じない。
「はい?」
気怠い体を少し起こし、ナナシは窓の留め金を外す。そして窓を開けた。男が何者なのかはわからない。だが、話し相手にでもなってくれのるならば、退屈な景色を眺めているよりはいいだろう。
「よう、突然すまないな」
「いえ……。えっと、どなたですか?」
「オレはニセル・マークスター。エルスたちの仲間さ」
ニセルは気さくに言い、軽く左手を挙げる。その手には、小手だろうか――銅のような金属で出来た、グローブを着けているようだ。
「僕はナナシです――といっても、さっき決まったんですけどね。名前」
まだ慣れない自らの名を、ナナシは照れ臭そうに名乗る。
「――あ、外で待ってるエルスの仲間って……」
「ふっ、オレのことだな。こっちも野暮用があったんでね。まっ、別行動ってヤツさ」
「そうなんですね。でもエルスたちなら、さっき出て行きましたけど」
「ああ、すぐに合流する。その前に――ナナシ、お前さんに話がある」
「……僕に? 何でしょう?」
ニセルは窓の内側――つまり室内まで身を乗り出し、耳打ちをするような仕草をする。重要な話なのだろうか。ナナシは思わず、息を呑んだ。
「あまり時間がない。手短に話すぞ? 今は理解できないかもしれないが――お前さんにとって、重要なことだ」
「えっと……。もしかして、忠告とか警告ってやつですか?」
「そんなところだ。もし消されたくなければ、今から言うことを覚えておいてくれ」
「消される?……僕が……?」
ナナシの言葉に、ニセルは黙って頷く。
彼の目が、真剣さを物語っていた。
「いいか? まず一つめだ。もうすぐ、この辺り一帯に霧が出る。この話が終わったら、すぐに窓を閉めろ。そして、霧が出ている間は外に出ないようにするんだ」
「はい」
「よし、二つめだ。お前さんの記憶が無いことは黙っておけ。特に、自警団長のカダンや、神殿騎士には絶対にな。カダンはイイ奴だが、仕事に真面目すぎてな。少々融通がきかん」
「記憶喪失のこと……。カダン団長と神殿の騎士?――あ、はい」
「三つめ、最後だ。この家のドワーフの旦那に、〝エインシャント〟について訊いてみるんだ。彼なら、なぜオレがこんな話をしたのかを丁寧に教えてくれるはずだ」
「えっ、カルミドさんに?……わかりました」
「――以上だ。まっ、いきなり変なオッサンに意味不明なことを言われて驚いただろうが、最後のだけでも覚えておいてくれ」
そう言うとニセルは、ニヤリと口元を上げた――。
「あはは、確かに驚いてます。わかりました。ありがとう、マークスターさん」
「……ふっ、見事な記憶力だ。〝ニセル〟でいいぜ」
「はい、ニセルさん。でも、ひとついいですか?」
「なんだい?」
「どうして、僕にそんな警告を?」
ナナシの疑問に、ニセルは「ふっ」と息を吐く。
それが彼の癖なのだろう。
「ただのお節介さ。オレは――もう、誰にも消えてもらいたくなくてね」
「消える……ですか」
「ああ、それ以外に言い表せないのさ。まっ、あの旦那ならオレよりも巧く説明してくれるだろう」
「わかりました。あとで訊いてみます」
「おう。それじゃまたな。すぐに窓を閉めておいてくれ」
「はい。ありがとうございました」
ニセルは片手を挙げ、玄関の方向へ去って行った。それを見送り、ナナシは言われた通りに窓を閉め、留め金を掛ける。ガラスの向こうの空を見上げると、太陽が霞んでいるのが見えた。
「あっ、太陽が……。あれが〝霧〟か……」
ナナシは枕元に置いた、木彫りの守護符に目を遣る。ニセルの話、エルスがくれた守護符。自分は何者なのだろうかと考えを巡らせるが、やはり何ひとつ答えは出ない。
「まあ、いいや。良い人とたくさん知り合えたし、このままでも――」
何も思い出さない方が幸せかもしれない――
ナナシの頭を、そんな言葉が過ぎった。
「……僕は、ナナシだ……。たとえ僕が誰であっても――もう、それだけは譲らないよ……」
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真っ白な窓に映る青年に向かって、ナナシは力強く宣言した――。
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