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第9話
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あれから1ヶ月が経った。
スティーブン様は雨の日も風の日も、1日も欠かさずに笑顔で毎朝やって来る。
弟達はボートに乗った話を聞いて、『乗りたい!』と公園に行きたがり、それを聞いたスティーブン様が次の休みにあの大きな公園に弟達を連れて行ってくれた。
ボートに思う存分乗って楽しんで、その後には昼食、デザートまでご馳走になった。
弟達はスティーブン様に懐いて、毎朝会うのをとても楽しみにしている。
そして、絵を描くのが好きなジョンに画材、勉強好きなジャックには文房具、ジャンには子ども用の楽器と、弟達の喜ぶ物をさり気なく渡して、彼らの心を鷲掴みにしている。
「俺は一人っ子だからね。
年は随分と違うけど、兄弟がいればこんなに楽しいんだろうな」
本当に楽しそうだ。
そうして私にはとびっきりの笑顔で、薔薇を1本差し出す。
美形の笑顔にはちっとも慣れない。
スティーブン様とは、公爵家領地の花祭り、隣国の女性のみの劇団の公演に出掛けた。
スマートなエスコートで花祭りを案内され、そしてスティーブン様に誘われてフォークダンスを踊った。
一部では氷の公爵と言われるスティーブン様が、女性を誘ってフォークダンスを楽しそうに踊る姿に、周りはそれは驚いていた。
驚くのも無理はない。
でも、これは一時的な姿だから。
“5倍の給金の務め”
“5倍の給金の務め”
いつの間にか、納得させるように頭で繰り返す自分がいた。
毎朝、欠かさず我が家を訪れて、笑顔で薔薇を私に差し出す姿。
ジャンを肩車して、ジョンとオモチャの剣で戦う遊びをして、ジャックに勉強を教えている姿。
ボートで私を見て微笑む姿。
フォークダンスで手や肩や体が触れた時、エスコートの度に、笑顔を見る度に。
いつからか、スティーブン様を見ただけで、胸がざわつき始めた。
「サーカスといって、このテントの中で楽しいものが見られるんだ」
東の国から世にも珍しい“サーカス団”がやって来て、スティーブン様に連れて来てもらった。
アクロバットから、動物の曲芸、火を吹く男性に驚きのあまり口が開きっぱなしの私を見て、スティーブン様は楽しそうに笑っていた。
テントから出ると、花火というのが夕暮れの空に打ち上がっていた。
「あれ?ジェレミーさんは?」
いつも私達の傍に張り付いているのに、見当たらない。
「お腹が痛くて席を外している」
どうやらジェレミーさんは昔からお腹が弱いらしい。
サーカスを見る前に、東の国の珍しい料理をつまんだのが失敗だったらしい。
美味しかったし、私達は平気なのに。
クスクス笑っていると、スティーブン様に手を取られていた。
「ジョイ、いつもアイツの監視があって言えなかったけどーー
君が好きだよ」
私を見つめる目は真剣で、真っ直ぐで、とても素敵で、誤解してしまいそうになる。
スティーブン様は近いうちに目が覚めるんですよ。
これは、ちょっとしたアクシデントが生んだニセの感情なんですよ。
何か言わなきゃいけないのに、言葉がまるで出てこなかった。
スティーブン様は、私の髪を優しく触り髪飾りをなぞった。
この髪飾りは花祭りでスティーブン様がプレゼントしてくれたものだ。
今日、初めてつけてみた。
「やっぱり、似合ってる」
優しく微笑む顔を見るのがつらかった。
帰りの馬車では、「サーカスは、あとひと月は公演するから今度はみんなで来よう」と、優しいスティーブン様は弟達の喜びそうな提案をしてくれた。
1週間後、新しくオープンした話題のカフェに行く約束をしていた。
お土産を催促する弟達に手を振って、ちょうど子爵家の敷地を出たところだった。
「うっ・・・」
スティーブン様が急に頭を押さえて蹲み込んで、ジェレミー様が慌てて駆け寄った。
これは・・・。
これは・・・・・・。
「ここは、どこだ?」
スティーブン様は、頭を押さえたまま辺りを見渡している。
そして、近くに居た私と目が合った。
「・・・君は?」
「ジェレミーさん、それでは私は失礼します」
それだけ言って、私は子爵家の敷地へ足を進めた。
スティーブン様は、目が覚めた。
私の役目は終わったんだ。
少し冷たさを帯びた、まるで雰囲気が違うスティーブン様。
あれが、本当の姿なんだ。
約束の5倍の給金も手に入る。
本当なら嬉しいはずなのに、なぜか涙が流れていた。
スティーブン様は雨の日も風の日も、1日も欠かさずに笑顔で毎朝やって来る。
弟達はボートに乗った話を聞いて、『乗りたい!』と公園に行きたがり、それを聞いたスティーブン様が次の休みにあの大きな公園に弟達を連れて行ってくれた。
ボートに思う存分乗って楽しんで、その後には昼食、デザートまでご馳走になった。
弟達はスティーブン様に懐いて、毎朝会うのをとても楽しみにしている。
そして、絵を描くのが好きなジョンに画材、勉強好きなジャックには文房具、ジャンには子ども用の楽器と、弟達の喜ぶ物をさり気なく渡して、彼らの心を鷲掴みにしている。
「俺は一人っ子だからね。
年は随分と違うけど、兄弟がいればこんなに楽しいんだろうな」
本当に楽しそうだ。
そうして私にはとびっきりの笑顔で、薔薇を1本差し出す。
美形の笑顔にはちっとも慣れない。
スティーブン様とは、公爵家領地の花祭り、隣国の女性のみの劇団の公演に出掛けた。
スマートなエスコートで花祭りを案内され、そしてスティーブン様に誘われてフォークダンスを踊った。
一部では氷の公爵と言われるスティーブン様が、女性を誘ってフォークダンスを楽しそうに踊る姿に、周りはそれは驚いていた。
驚くのも無理はない。
でも、これは一時的な姿だから。
“5倍の給金の務め”
“5倍の給金の務め”
いつの間にか、納得させるように頭で繰り返す自分がいた。
毎朝、欠かさず我が家を訪れて、笑顔で薔薇を私に差し出す姿。
ジャンを肩車して、ジョンとオモチャの剣で戦う遊びをして、ジャックに勉強を教えている姿。
ボートで私を見て微笑む姿。
フォークダンスで手や肩や体が触れた時、エスコートの度に、笑顔を見る度に。
いつからか、スティーブン様を見ただけで、胸がざわつき始めた。
「サーカスといって、このテントの中で楽しいものが見られるんだ」
東の国から世にも珍しい“サーカス団”がやって来て、スティーブン様に連れて来てもらった。
アクロバットから、動物の曲芸、火を吹く男性に驚きのあまり口が開きっぱなしの私を見て、スティーブン様は楽しそうに笑っていた。
テントから出ると、花火というのが夕暮れの空に打ち上がっていた。
「あれ?ジェレミーさんは?」
いつも私達の傍に張り付いているのに、見当たらない。
「お腹が痛くて席を外している」
どうやらジェレミーさんは昔からお腹が弱いらしい。
サーカスを見る前に、東の国の珍しい料理をつまんだのが失敗だったらしい。
美味しかったし、私達は平気なのに。
クスクス笑っていると、スティーブン様に手を取られていた。
「ジョイ、いつもアイツの監視があって言えなかったけどーー
君が好きだよ」
私を見つめる目は真剣で、真っ直ぐで、とても素敵で、誤解してしまいそうになる。
スティーブン様は近いうちに目が覚めるんですよ。
これは、ちょっとしたアクシデントが生んだニセの感情なんですよ。
何か言わなきゃいけないのに、言葉がまるで出てこなかった。
スティーブン様は、私の髪を優しく触り髪飾りをなぞった。
この髪飾りは花祭りでスティーブン様がプレゼントしてくれたものだ。
今日、初めてつけてみた。
「やっぱり、似合ってる」
優しく微笑む顔を見るのがつらかった。
帰りの馬車では、「サーカスは、あとひと月は公演するから今度はみんなで来よう」と、優しいスティーブン様は弟達の喜びそうな提案をしてくれた。
1週間後、新しくオープンした話題のカフェに行く約束をしていた。
お土産を催促する弟達に手を振って、ちょうど子爵家の敷地を出たところだった。
「うっ・・・」
スティーブン様が急に頭を押さえて蹲み込んで、ジェレミー様が慌てて駆け寄った。
これは・・・。
これは・・・・・・。
「ここは、どこだ?」
スティーブン様は、頭を押さえたまま辺りを見渡している。
そして、近くに居た私と目が合った。
「・・・君は?」
「ジェレミーさん、それでは私は失礼します」
それだけ言って、私は子爵家の敷地へ足を進めた。
スティーブン様は、目が覚めた。
私の役目は終わったんだ。
少し冷たさを帯びた、まるで雰囲気が違うスティーブン様。
あれが、本当の姿なんだ。
約束の5倍の給金も手に入る。
本当なら嬉しいはずなのに、なぜか涙が流れていた。
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