αで上級魔法士の側近は隣国の王子の婚約者候補に転生する

結川

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第1章

第1話(6)ルイス・シュトラールの死

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「アデルもハルトも、素敵な女性と結ばれるといいね」

僕は心の内の葛藤を隠すように笑った。
その時、遠くからアデルを呼ぶ声が聞こえた。

「アデル王子、シュナイダー辺境伯が探しておりましたよ」
「シュナイダーが?」
「はい、お伝えしたいことがあると」
「分かった。行くよ」

探しにきた官吏とアデルはこの場を去ろうとする。
官吏と一緒なら僕がお供する必要はない。
その場にハルトと一緒に留まっていると、振り返ったアデルに名前を呼ばれた。

「ルイス、今夜空いてる?」
「え?」
「今夜は時間が取れそうなんだ。久しぶりに星でも見ながらルイスと話がしたいなって」

突然の誘いに僕は不思議に思いながらも快諾する。
アデルは僕の返答に満足した表情をして、建物の中へと消えていった。
遠ざかる背を見送って僕はハルトに声をかけた。

「ハルトはいつまで滞在するの?」
「この後すぐ出国する予定だ。婚約者の件もあるし、今国内が少しゴタついてるからな」
「そっか」

ハルトがじっと僕を見る。
急になんだと顔をしかめると、ハルトは口を開いた。

「ルイス、お前アデルのこと好きだろ」

予想もしてなかった発言に、体も思考も固まった。
否定を口にしようにも、真っ白になった頭では言葉が何も出てこない。

「やっぱりな」
「いや、別に、僕は…」
「お前らのことはずっと見てきて、そうなんじゃないかって思うこともあったが確信はなかった。けど、アデルの結婚話でそんな無理して笑われちゃな」
「無理して、笑ってたのか」
「自覚なしか」

ぽんぽんとハルトが肩を叩く。
きっとハルトなりの励ましのつもりなんだろう。
アデルへの気持ちを肯定も否定もしないでいてくれるのが有り難かった。

「アデルのことは好きだよ。でも恋愛対象として好きなんだと気付いたのつい最近のことなんだ」

ぽつりとこぼすとハルトはそのまま黙って聞いていてくれる。

「小さい頃から、アデルと2人で一緒にいることが多かった。思い込みかもしれないけど、お互いにお互いのことが特別で、一番大切に思っている気がした。でも、アデルにお見合い話が来るようになって、アデルが自分以外の誰かのものになる実感が急に湧いて、そこで初めて気付いたんだ。アデルのことが好きなんだって」

急に気付いてしまったこの気持ちを、ずっと誰かに言いたかったのかもしれない。
否定もせず黙って聞いてくれるハルトに僕は全て打ち明けていた。

「ありがとう、ハルト。アデルにお見合いの話を聞いてくれて」
「え?」
「ずっとアデルと恋愛や結婚の話をすることを避けていたんだ。アデルとは絶対結ばれないと分かっている反面、もしかしたらって思える余地が欲しくて。でもさっきのアデルの言葉で目が覚めた。アデルのことを諦められそうだ」
「…いや、俺はただ興味本位で聞いただけだったから」

ハルトは気まずそうに頭を掻くと、僕の背中を力強く叩いた。
あまりの強さに盛大に咳き込む。
咎めようと顔を上げると、ハルトは優しく僕の頭を撫でた。

「お前は良い奴だから、良い奴と出会えるさ!だからまあ、良いと思える相手と出会えるまでは無理に諦めようとせず想い続けててもいいんじゃないか?お前の気持ちはきっとあいつの迷惑になんてなんねーからよ!」

ハルトの顔は自信に満ち溢れていた。
絶対にそうだと信じて疑わない顔に、僕は何だかおかしくなって笑ってしまう。

「ありがとう、ハルト」
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