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第1章
第1話(7)ルイス・シュトラールの死
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ルイスと解散した俺は、城門を目指し歩き始めた。
その時、庭園に植えられた大樹の奥から見覚えのある外套の裾がはみ出ているのが見えた。
「アデル、何やってるんだ?」
驚いたように裾が揺れる。
大樹に隠れていたその人は、観念したように姿を現した。
「なんで分かったの?」
「服が見えてたぞ」
「目ざといなぁ」
魔法で身を隠せばよかったか、とアデルはひとりごちた。
ここからルイスと会話していた場所まではそう遠くない距離だ。
聞き耳を立てれば、会話の内容は聞こえていただろう。
隠れていたと言うことは、つまり。
「立ち聞きはよくねーな」
「私だってそのつもりはなかったよ。この後入っていた会議が急遽延期になったんだ。シュナイダーから列車の緊急運休で会議に出られない人が多数いるから延期にしてほしいって。だからルイスとハルトのところに戻ろうとしたら、話が聞こえて」
アデルはそこまで言うと口篭った。
様子から察するに、ルイスのアデルへの気持ちは聞こえていたんだろう。
気まずそうに俯いた表情から、ルイスの恋心への返答を否が応でも察してしまう。
「アデルはルイスのこと、好きではないのか?」
「好きだよ。けれど、恋情の意味としてなら違う、のかな。いや、今まで考えたことがなかった。少し混乱してる」
「ふーん、俺はてっきりお前はルイスと同じ気持ちなのかと思ってた」
「家族を度外視すれば、ルイスは誰よりも大切で、ずっと傍にいてほしいと思っている。その気持ちはルイスと同じだよ」
真剣な瞳でアデルは告げた。
思いの丈は同じでも、ベクトルが異なれば、それは違うのと同じだというのに。
勉学と公務ばかりの少年期を過ごしたアデルは、それに気付いているのだろうか。
「これはアドバイスなんだが、ルイスが誰かと付き合うまでは、"ずっと傍にいてほしい"なんてあいつに言うなよ。その言葉はきっとあいつの足枷になる」
アデルにそうお願いされたら、きっとルイスは快諾する。
恋心を捨て切れないまま、想い人が結婚相手と幸せそうにしているのを傍で見ていなければいけないのは可哀想だ。
アデルは俺の言葉に黙り込んだ。
もう少しアデルとの会話を続けたかったが、時間が足りない。
乗船する船の出港時間が近づいている。
「そろそろ行くわ。またな、アデル」
アデルは頷いた。
けれど、その顔はどこかパッとしない。
何かに思考を奪われているようだった。
その時、庭園に植えられた大樹の奥から見覚えのある外套の裾がはみ出ているのが見えた。
「アデル、何やってるんだ?」
驚いたように裾が揺れる。
大樹に隠れていたその人は、観念したように姿を現した。
「なんで分かったの?」
「服が見えてたぞ」
「目ざといなぁ」
魔法で身を隠せばよかったか、とアデルはひとりごちた。
ここからルイスと会話していた場所まではそう遠くない距離だ。
聞き耳を立てれば、会話の内容は聞こえていただろう。
隠れていたと言うことは、つまり。
「立ち聞きはよくねーな」
「私だってそのつもりはなかったよ。この後入っていた会議が急遽延期になったんだ。シュナイダーから列車の緊急運休で会議に出られない人が多数いるから延期にしてほしいって。だからルイスとハルトのところに戻ろうとしたら、話が聞こえて」
アデルはそこまで言うと口篭った。
様子から察するに、ルイスのアデルへの気持ちは聞こえていたんだろう。
気まずそうに俯いた表情から、ルイスの恋心への返答を否が応でも察してしまう。
「アデルはルイスのこと、好きではないのか?」
「好きだよ。けれど、恋情の意味としてなら違う、のかな。いや、今まで考えたことがなかった。少し混乱してる」
「ふーん、俺はてっきりお前はルイスと同じ気持ちなのかと思ってた」
「家族を度外視すれば、ルイスは誰よりも大切で、ずっと傍にいてほしいと思っている。その気持ちはルイスと同じだよ」
真剣な瞳でアデルは告げた。
思いの丈は同じでも、ベクトルが異なれば、それは違うのと同じだというのに。
勉学と公務ばかりの少年期を過ごしたアデルは、それに気付いているのだろうか。
「これはアドバイスなんだが、ルイスが誰かと付き合うまでは、"ずっと傍にいてほしい"なんてあいつに言うなよ。その言葉はきっとあいつの足枷になる」
アデルにそうお願いされたら、きっとルイスは快諾する。
恋心を捨て切れないまま、想い人が結婚相手と幸せそうにしているのを傍で見ていなければいけないのは可哀想だ。
アデルは俺の言葉に黙り込んだ。
もう少しアデルとの会話を続けたかったが、時間が足りない。
乗船する船の出港時間が近づいている。
「そろそろ行くわ。またな、アデル」
アデルは頷いた。
けれど、その顔はどこかパッとしない。
何かに思考を奪われているようだった。
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