【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
27 / 96
三章 依頼

第二十七話

しおりを挟む
 街の外でルナとオブの気配を探る。
 ちょっと離れたところだなぁ。人目のない所へ移動し飛翔する。

「ルナ、オブ、聞こえる?」
『あぁ、聞こえる』
『きこえるよ~』
「今どこ? 一応気配探りながらそっち向かってるんだけど、分かりやすい場所に移動してくれる?」

 二人(二匹?)共、分かったと言って移動し始めたのが気配で分かる。
 しばらく飛翔していると森が見えた。
 なるほど、森だと人間の目に付きにくいよね。森を横目に少し拓けた場所まで来たら、眼下にルナとオブの姿が見えた。
 ルナとオブの元に降りる。

『おかえり~』

 オブが嬉しそうに近付いて来た。

「ただいま」

 オブにしがみついて頭をなでなでしたら、オブはとても嬉しそうな顔をした。

「ルナもただいま、お待たせ」

 ルナの首元にもしがみついて、もふもふを堪能した。ルナは普通の狼よりもだいぶと大きい。私が立った状態でようやく首にしがみつける。
 だからもふもふが半端なく堪能出来て気持ち良いのよ!
 もふもふもふもふもふもふ……

『おい、いつまでしている』
「あ、ごめん」

 何かこのやり取り前もしたような……。

「でもそのもふもふたまらないんだもん!」
『可笑しな奴だ』

 ルナはフッと笑った、ように見えた。
 オブがぼくも~とばかりにルナとの間に割り込んで来た。

『それより魔導具は?』
「あ、そうだった」

 魔導具である銀色の腕輪を取り出した。

『これがまどうぐ?』
「そうだよ」

 ルナとオブの左手に(左脚?)に付けた。小さい腕輪は付けられるのか、と疑問に思ったが、指先を通そうとすると自然に大きくなりすんなり通った。そして最初から付けていたかのように、二人の手首に収まった。

「まずはオブね。オブ小さくなって!」

 オブはキョトンとしていたが、魔導具に付いた石が光だしオブを包む。その光が段々小さくなり、ルナの仔犬型のときと同じくらいの大きさの光になると、ポン! と消えた。
 オブは小さくなっていた。なってたんだけど、これって……

「か、可愛いー!!」

 ルナの仔犬型も可愛いが、オブも可愛い!!
 何せ小型になったんじゃなく、赤ちゃん!
 ドラゴンの赤ちゃん!

 抱き締めむぎゅーっとしてみた。ルナのようなもふもふはないけど、、ぷにぷに! 硬い鱗がなくてぷにぷになのよ! これはこれで気持ち良いー!

『ユウ、くるしい……』
『ユウ、離してやれ』
「あ、ごめん」

 何回このやり取り。

 オブを高い高いするように持ち上げ凝視する。
 赤ちゃん……。

「これって成功なの?」
『どうだろうな。我もドラゴンの小型化は見たことがないから分からない』
「うーん、まあ良いか。可愛いし!」

 ルナは少し呆れた顔をしていた。

「次はルナね。後ろ向いとくから人間化してみて?」
『? なぜ後ろを向いておくのだ? 見ておかないと成功しているのか分からないのではないのか?』
「いやいやいや! 無理だから! 見れないから! 結果だけ知らせてくれたら良いから!」
『? まあ良い。分かった』

 ルナは人間化を始めた。靄がルナを包み、段々と人型になっていく。

『ユウ』

 背後から気配を感じ、耳元でルナの低い声が聞こえてゾクッとした。思わず声のほうに振り向くと、間近にルナの顔があり固まった。
 そう、もう、いわゆる、カチーンと。効果音が出そうなくらい固まった。
 鼻先が触れあいそうなくらい近い。金色の瞳がキラキラと宝石のようだ。

『ユウ?』

 そう呼ばれてハッとした。息がかかる! ようやく動けたと思ったら腰が抜けそうになり、思わず前のめりに。
 背後からルナに左手とお腹を支えられ、抱き戻された。

「ご、ごめん!」

 鼻血が出そうだー! ダメだ、やっぱりこの人! いやこの魔獣! の人間化! 危険!

『これはユウの好みか?』

 え、と思って振り向いた。
 ルナは服を着ていた。良かった! 成功した?
 騎士風の服だ……。うん、成功だよね? 私の好み……だけど良いでしょ。

「私の好み! 良いでしょ? 動きやすいでしょ?」

 と、言い切ってみたが、ルナの反応が気になった。

「ダメ?」

 小さく聞いてみた。

『いや? 動きやすいし、良いのではないか? 今まで着たことがない服だと思っただけだ』

 あ、着たことないよね。そうだよね。完全に私の趣味です。ごめんなさい。

「一応色んな服をイメージしてみたから、その時々で相応な服になるんじゃないかな?」
『分かった』

 ふむ、とルナは服を触ったり身体を伸ばしてみたりと確かめる。

「さて、魔導具も無事装着出来たし、街に戻ってみようか!」
『まち?』
「うん、人間がたくさんいるところだよ」
『にんげんたくさん? こわいとこ?』

 あぁ、そうか、オブは人間に襲われているから、人間が怖いよね。どうしよう。

『ユウや我が守るから大丈夫だ。しかも今のお前はドラゴンには見えない』

 ルナが足元のオブを見て言った。
 確かに赤ちゃん化したオブはとてもドラゴンには見えない。何せ可愛いもの! じゃなくて。

「そうだよ、オブのことは私たちが絶対守るから大丈夫だよ」

 オブを抱き上げ言った。

「どうしても怖かったら、上からマントとか被せてあげるし」
『わかった~、ぼくがんばる』
「ありがとう、オブ」

 オブの額にキスをした。

『さて、では行くか』
「待って、ルナは人間化じゃなくて、仔犬化で!」
『ん? せっかく魔導具で服も手に入ったのにか?』
「う、うん。必要なとき以外は仔犬化でお願いします……」

 やれやれ、とばかりにルナは溜め息を吐いて、今度は仔犬化した。

『そもそも仔犬ではないからな』
「分かってるよ~!」

 そう言いながらも仔犬化したルナを抱き上げ、もふもふもふもふ……。あぁ、気持ち良い。
 左腕には赤ちゃんドラゴン、右腕には仔犬化狼、もふもふぷにぷに最高! 癒されるわ~!

『街に行くんだろう?』
「そうでした」

 ルナに怒られ、街まで……二人を連れていると重たいし、ちょっとだけ手抜きで。
 空間転移魔法を。一度訪れたことのある場所なら移動出来るんだよね。初めて使うけどやってみよう。

 キシュクの入り口をイメージし、空間転移魔法を発動。足元に魔法陣のようなものが光出す、それと同時に一瞬でキシュクの入り口にまで移動した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...