【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
47 / 96
六章 勇者

第四十七話

しおりを挟む
 昼食を食べ終わり、ルナとオブを部屋に戻したら禁書庫へ。

 こうやってしばらく禁書庫通いが続いた。
 何日も通い続けるとようやく何冊か勇者が記載された本が見付かった。

 一冊はアレンも言っていた、勇者は異世界人でケシュナの森、石碑の側に召還される、という話。
 これは今まで現れた勇者の証言を基に書き残したもののようだ。
 ケシュナの森は四国に挟まれた丁度中心に当たる場所にある。勇者が現れる国は決まっていないため、ケシュナの森は四国で不可侵条約が結ばれた。どの国に勇者が現れたとしても、魔物の殲滅にはそれを遮ることは出来ないとも協定が結ばれたようだ。

 この国の勇者に関する記載の一番古いものは千年程前くらいのものだった。
 それ以前から勇者は存在したのかもしれないが、書物として残すようになったのが千年程前のようだった。

 始まりは異世界から来たと思われる人物が魔物を殲滅させた、ということ。
 そういった人物が現れる度に記載されていく、その歴史から百年に一度くらいの周期で、魔物を殲滅することの出来る人物が現れるということが分かった。

 そして徐々に魔物の中でも異常な強さを持つ魔物が現れることが分かっていく。
 その後それは魔王と呼ばれるようになり、勇者が使う特殊な魔法でしか倒せないらしいということが分かってきた。

 しかしどう言った理由で魔物や魔王が現れるのかは分からなかった。同じように勇者も異世界から現れる、ということしか、はっきりした内容は分からなかった。


「やっぱりこれ以上詳しくは分からないね。ほとんどアレンやルナに聞いたことだけだね」
「そうだな」
「うーん」

 とりあえずアレンに報告した。

「ほとんど分からずか……勇者の使える聖魔法とやらをユウは使えるのか?」
「どんな魔法か分からないから何とも……」
「ディルアスと二人で発動させていた結界魔法は違うんだよな?」
「違うと思うけどな……二人で発動とか書いてなかったし」
「うーん、本当に何も分からんな」

 アレンは天井を見上げた。

「他国の情報も調べさせてもらったらどうでしょう?」

 リシュレルさんが言った。

「他国?」
「えぇ」
「あ、ガイアスか!」
「ガイアス?」
「このエルザイアの隣国だ。ガイアスとは友好国で、昔から長い付き合いだ。あそこの息子とは幼なじみみたいなもんだしな」

 息子……王子か。王子同士なら幼なじみでも可笑しくはないね。

「第一王子のイグリード・サフィロ・ガイアス殿下です」
「あぁ、リードなら事情を話せば禁書庫を見せてもらえるかもな。行ってみるか?」
「う……ん、そうだね。他に情報がありそうなら……」
「よし、じゃあリードに連絡を取ってみよう。少し待て」

 アレンは魔導具を取り出した。魔導具を握り締め声を掛けた。

「リード、リード、聞こえるか?」

 通信をし始めた。相手の声は聞こえない。

 久しぶりだな、と他愛ない話をしながら本題に入った。

「近々そっちに行っても良いか? 頼みたいことがある。あぁ。その時に話す。分かった。ではな」

 通信が終わったのかアレンはこちらを見た。

「面会の約束はしたぞ。いつ出発する?」
「まさかあなたも行かれるおつもりですか?」

 リシュレルさんが真顔で聞いた。

「行くぞ。当たり前だろ。勇者の事は俺も知るべきだろうし、そもそも他国の者にいきなり禁書庫を見せろと言われても向こうも見せられないだろうしな。俺が行くことで通る事柄もあるだろう」

 確かに。リシュレルさんの顔が怖い。

「はぁ、仕方ないですね」
「後の事は任せた」

 ニッとアレンは笑った。リシュレルさんの深い溜め息が聞こえる。申し訳ない。

「諸々処理したいこともあるから出発は明後日で良いか?」
「あ、それなら一度キシュクに戻って来て良い? あれから一度も連絡してないし」
「ん? あぁ、そう言えばそうだな。キシュクの者と通信はしてないんだな」
「うん。やろうとしてて忘れてた」
「ハハ、意外と抜けてるな」

 アレンに笑われたくないんだけど、とか思ったけど、グッと堪えた。

「そう言えば俺たちも繋げとくか」
「?」
「通信だよ」
「あぁ。私、やったことないんだけどどうするの?」
「自分の魔導具に相手の魔力を入れてもらうんだ。やってみよう」

 アレンが魔導具を出した。

「これにユウの魔力を注いでくれ」

 言われた通りに手を翳して魔力を注いだ。
 そして同じように私が身に付けている魔導具にもアレンの魔力を。

「俺も」

 ディルアスが言った。

「あ? あぁ、そうだな、ディルアスも繋げとくか。それなら全員同時にも話せるしな」
「へー、全員同時にも話せるんだ」

 しかしディルアスの最近の言動が謎過ぎる。初めて会ったときに比べるとあまりに違う。
 野生動物が懐いた感じ? そんな表現は失礼か、と一人で苦笑した。

 アレンとディルアスと通信を繋げ、試しにと、部屋に戻って話してみた。

 まず話したい相手を念じてから声をかけていく。

「アレン、ディルアス、聞こえる?」
「あぁ」
「聞こえるぞー!」
「おぉ、凄いね。便利!」
「ハハ、他にもっと凄い魔法使えるくせに」
「だって今まで知らなかったんだもん」
「まあこれで今後別行動でも連絡は取れるから、何かあったら連絡しろよ」
「分かった! じゃあとりあえず明日はキシュクに行って来るね」
「俺は少し街に出る」

 ほとんど発言のなかったディルアスが突然喋った。

「あれ、そう言えばディルアスはガイアスに一緒に行くのか?」

 そう言えばディルアスがどうするのか聞いてなかった。

「俺も行く」
「ま、そりゃ行くか、ここまで関わったら最後まで知りたいよな!」
「あぁ」
「じゃあとにかく明後日にな!」

 そう言って通信を終えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...