【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
72 / 96
九章 遭遇

第七十二話

しおりを挟む
「うっわー! 凄いっすねー! さっきの魔法! めっちゃ格好いい!! しかもドラゴンに銀狼っすか!? スッゲー!!」

 出て来たのは茶色の髪と瞳の男性だった。同い年くらいだろうか? 少し上くらいかな?
 やたらとテンション高いな、と少したじろいだ。

 ディルアスが残りの魔物を消滅させ、こちらに来た。

「誰だ?」
「あ、俺、サクヤって言います! お二人ともめっちゃ凄い魔法っすね! 俺、見とれちゃって!」

 サクヤと名乗った人物はどうやら魔物の気配を追って来たら、私たちが戦っているのを目撃し、入り込む隙がないからと、そのまま見物していたらしい。

「俺も少しは魔法使えるんですけど、お二人程凄くないんで、ほんと格好いいなって思って! 俺もそれくらい使えるようになりて~!」

 テンション高いな。
 しかし何かこの気配……この人の気配……何か気になる。
 チラッとルナを見た。ルナもこちらを向き目を合わせた。
 やっぱり……。

「俺に魔法教えてくれません!?」

 目を輝かせていた。

「無理です、行こう、ディルアス」
「え? あ、あぁ」

 サクヤはキョトンとした顔をしていたが、ハッとして叫んだ。

「またどこかで会ったら魔法教えてくださいね~!」

 大きく手を振っていた。

 私はディルアスの腕を引っ張りながら足早にその場を離れた。
 サクヤから見えなくなると、空間転移でロッジまで一気に帰った。

「ルナ、怪我見せて?」

 魔物に噛み付かれた痕が何ヵ所もあった。

『大したことはない』
「治癒するね。さっきすぐに治癒出来なくてごめんね」

 横たわるルナの横にしゃがみ、治癒魔法をかけた。

『いや、それはいい。それよりも……』
「うん……あの人……」

 ディルアスが治癒をしている私の横に立った。

「さっきのやつがどうかしたのか? 何者だ?」
「うん……多分……多分でしかないけど……」

 治癒が終わりルナは立ち上がり身体を伸ばした。
 私も立ち上がりディルアスの方を向いた。

「あの人……多分、新しい勇者……」
「!! 本当にか!?」
「多分……」
「なぜ分かった?」
『魔力の気配が似ていた』

 ルナが言った。ルナは昔の勇者とも繋がりがあり、私とも繋がりがある。勇者の気配を知っている。
 だからあの時ルナと目を合わせた。きっとルナも何か感じただろうと思って。
 やはりそうだった。

『過去の勇者とも、ユウとも、気配が似ている』
「なるほど、そうか……」

 ディルアスは考え込んでしまった。

「とりあえずアレンとイグリードに報告するか」

 椅子に座りアレンとイグリードを呼び出す。

「アレン、イグリード、聞こえる?」
「ユウか! どうした?」
「今大丈夫?」
「あぁ、ちょっと待ってくれ」

 イグリードはどこかに移動しているようだ。

「すまない、私室に移動して空間隔離をかけていた。良いぞ」
「あ、俺もしとくか」

 アレンは忘れていたようだ。

「ついさっきなんだけど、魔物が大量に出て……」
「魔物が大量!? どうなったんだ!? 今連絡が来てるということは無事なんだな!?」
「あぁ、うん、それは何とか大丈夫」
「はぁ、さすがユウとディルアスだな。余裕な感じか?」

 アレンが笑いながら言った。

「そこまで余裕でもないけどね。大量過ぎたし、ルナは怪我したし」
「ルナが怪我!? 大丈夫なのか!?」
「治癒したから大丈夫だよ」
「そうか、なら良かった」

「で、何かあったんだろ?」

 イグリードが聞いた。

「うん。勇者らしき人にあった」
「!?」
「勇者!?」
「うん」

 なぜ分かったのか、ディルアスに説明した時と同じように説明をした。

 しばらく沈黙が流れた。

「そ、そうか……いずれ現れてユウと接触があるかもとは思っていたが、こうも早々に接触することになるとはな」
「うん……」
「ユウのことはバレてないんだよな?」
「すぐに別れたから大丈夫だと思う」

「だがロッジ近くだったから危ないかもな」

 確かにロッジ近く、森を出てすぐのところだった。

「あの森は国所有だから、一般人は入れないが……用心するに越したことはないな。ユウは出来るだけ一人になるな」
「うん」
「用心しろよ! 何かあったら連絡してくれ。またこちらも何か分かったら連絡するよ」
「分かった」

 通信を終わり、ディルアスと話し合った。

「とりあえず索敵を強化しておこう。今は魔物や敵意のある人間にしかほぼ感知しない。普通の人間もはっきり分かるくらいに強化出来ないか考えよう」
「うん、でもそんな方法あるの?」
「分からない。でも索敵にも高位魔法があるからな、それを応用する方法はあるかもしれない」
「うーん、応用かぁ……図書館で調べてみるとか?」
「あまり街には行きたくないがな……手詰まりになったら行ってみよう」

 対人間に特化した索敵の研究をすることになってしまった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...