【完結】異世界で婚約者生活!冷徹王子の婚約者に入れ替わり人生をお願いされました

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
123 / 136
カナデ編

第二十五話 出発!

しおりを挟む
 この日は緊張のあまり早くに目が覚めた。なんせお友達と一緒に泊まりで旅行へ行くのなんて初めてだ。「カナデ」の記憶にすらそういった経験はない。もちろん「リディア」にも。
 人生で完全なる初めてなのだ。
 昨夜は緊張してなかなか寝付けなかったというのに、今朝は早くに目が覚めてしまった。子供みたいね、と自身がおかしくて笑った。

 昨夜のうちに用意しておいた荷物を再び確認し、朝食を終え食器を片付けているとインターホンが鳴った。確認すると蒼汰さん! 驚いて慌てて扉を開ける。

「おはよう! 水嶌さん! 準備出来た?」
「お、おはようございます! はい、終わってますが、何かありましたか?」

 確か、今日は洸樹さんのお店前で集合のはず。洸樹さんが車を出してくれることになったので、皆、お店に集合しようとなったのだ。

「あぁ、ごめん、特に何もないんだけど、楽しみ過ぎて迎えに来ちゃった」

 そう言いながら蒼汰さんははにかんだ。

「フフ、私も楽しみ過ぎて、早くに起きてしまいました」
「ハハ、水嶌さんも? 僕も久しぶりの遠出で、しかも大勢でワイワイ行けるのが楽しくて。なんせいつも真崎さんと二人か、僕一人だしね」

 そういえばそんなことを言っていた気がする。いつもは希実夏さんも直之さんも来ないから一哉さんと二人だけのイセケンだと。

「水嶌さんのおかげだね! 水嶌さんがイセケンに来てくれてから、佐伯も直之も来るようになったから賑やかだよ」
「そ、そんな! 私は何も……」

 言葉通り、本当に私は何もしていない。しかも最初の動機は不純だし……、今はイセケンを楽しんでますけどね! 不思議なことが色々あって面白いですし!
 でも……、蒼汰さんがにこにこととても嬉しそうだから、まあ、いいかしら……。

「じゃあ一緒に行こう! 荷物は?」
「あ、はい!」

 慌てて部屋に荷物を取りに行き、部屋の戸締りをしっかりとし、洸樹さんのお店へ。

 部屋の鍵を閉めている間に、私の荷物を蒼汰さんが持ってくれ、そのまま歩き出してしまった。
 慌てて蒼汰さんに駆け寄る。

「蒼汰さん! に、荷物を!自分で持てますので!」

「ん? 良いよ良いよ、そこまでだし」

 にこにこと蒼汰さんはそのまま私の荷物も持ったまま行ってしまう。あうぅ、こういうときどうしたら良いのか分かりません……、無理矢理奪い取るのもおかしい気がするし、何もせず持たせたままなのもおかしい気がするし……、どうしたら!!

「リディア」でいたころは何でも持っていただくのが当たり前、自分で荷物を持ったことなどない。だからと言って今「奏」としては当たり前に持ってもらう訳にはいかない。どんな厚かましい女なのよ、と自分でがっくりしてしまう……。あぁ、どうしたら良いのかしら。

「あ、あの……、蒼汰さん、やはり申し訳ないですし……、自分で……」

 どうしたら良いのか分からず、おずおずと控えめにもう一度言ってみた。

「アハハ、水嶌さんは本当にしっかりした子だね。そんな気にしなくて良いのに、こういうときは「ありがとう」って一言言ってくれるだけで、男は頑張るもんだよ?」

 そう言いながら蒼汰さんはアハハと笑った。

「そ、そうなんですか?」
「そうそう」

 なんか適当にあしらわれているような……、本当なのかしら……。

「あの……、では、すいません、ありがとうございます」
「うん」

 フフ、と蒼汰さんは笑いながら嬉しそうに歩いて行く。これは……、その、今日が楽しみ過ぎて勢いで荷物を持ってくれた感じですかね。わ、分かりませんが、そう思うことにしておきます。

 ウキウキの蒼汰さんと一緒に洸樹さんのお店へ着くと、すでに洸樹さん以外の皆が待っていた。

「おっそいよ、蒼汰!」
「え、そんな遅い!? みんなが早過ぎでしょ!」

 希実夏さんに突っ込まれている蒼汰さん。確かに皆やたらと早いです……。それが何だかおかしくてクスッと笑った。皆楽しみだったのね。フフ。

「蒼汰だけ奏ちゃんと一緒に来たのズルい!」

 直之さんが蒼汰さんに詰め寄った。

「だって水嶌さんと同じアパートだし」
「普通だな」
「直之が馬鹿なのは前からだから」

 一哉さんにも希実夏さんにも突っ込まれる直之さん……、不憫です……。

「むっきー! みんなで俺を馬鹿にする! 奏ちゃ~ん」

 そう言いながら振り向き私のほうへ一歩進む前に、一哉さんにガッと腕で首を抑えられていた。

「うぐっ、早いよ、真崎さん! 俺、まだ何もしてないじゃん!」
「お前が何をしようとしているかなんて見なくても分かるんだよ」
「ひ、酷い……」

 そんな二人の漫才のようなやり取りを見て笑っていると、一台の白いワンボックスカーが現れた。
 洸樹さんが運転席から顔を覗かせる。

「朝っぱらから何やってんのよ、仲良しねぇ」

 洸樹さんは店の前に車を停めると、運転席から降り、後部座席とトランクの扉を開けた。

「荷物は後ろに積み込んでちょうだいね。助手席は一哉で良いかしら? 降りやすい二列目に女性陣ね。一番後ろは男二人で乗りなさい」

「な、なんかここでも差別……」

 直之さんが不満気だった。

「あら、何? 文句でもあるの? 最後列の少し乗り降りしにくいところに女性を乗せようっていうのかしら?」

 洸樹さんが直之さんに顔を近付けニコリと笑った。な、なにやら威圧感を感じます……。

「い、いえ! とんでもございません!」

 美形の洸樹さんにすごまれると迫力があります……。直之さんは顔を引き攣らせながら従っていた。

「あ、あの、私は三列目でも大丈夫ですが……」

 なんだか申し訳なくなり、そう声を掛けてみたが……、あまり意味はなかったようです。

「い、いや! 大丈夫! 奏ちゃんは二列目座りな! 俺、三列目で良いから!」

 慌てて直之さんがそう言ってくれる。本当に良いのかしら……。

「奏ちゃん、気にしなくて良いのよ。女性のほうが色々何かと大変でしょう、二列目のほうが乗り降りしやすいんだから」

 そう言った洸樹さんは急にハッとした顔になった。

「あらやだ! これもセクハラかしら!?」

 蒼汰さんのほうにぐりんと向いた洸樹さん。

「え? あ、あー、セーフ?」
「良かったわ!」

 なんだか不思議なやり取りで思わず笑ってしまいました。洸樹さんのほうがだいぶと年上なのに、蒼汰さんが先生みたいな関係で少しおかしかった。

「もー! ちょっと! 馬鹿なことやってないで、早く出発しようよ」

 希実夏さんが痺れを切らしたようです。

「だな、早く出発しないと着いたら夜だぞ」
「あぁ! そうね! じゃああんたたち乗り込みなさい!」

 一哉さんにも促され、全員荷物を積み込み終わると座席に乗り込んだ。

「じゃあ聖冠山に出発するわよ」
「「「おー!!」」」

「ほら、奏ちゃんも!」

 皆さんの気合いを微笑ましく見ていたら、希実夏さんに小突かれた。えぇ、私もですか!?

 なんだか恥ずかしく小さく控え目に……

「お、おぉ……」

「フフ、奏ちゃんにも気合いをもらったわ! じゃあ出発!!」

 は、恥ずかしいぃ……
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...