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カナデ編
第二十四話 希実夏さんとデート
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新たなパワースポット「聖冠山」へは一ヶ月後に行くことになった。
全員の予定を合わせ、コテージは蒼汰さんが、レンタカーは一哉さんが予約をしてくれた。何から何まですいません、と思っていたけれど、お二人ともとても楽しそうに段取りをしてくれていた。
一哉さんには洸樹さんとどうなったのかは聞いていない。私が口を挟むことではないし、ここ最近ご機嫌な一哉さんの様子からして仲直り出来たのではないかしら、と期待している。
希実夏さんからはキャンプへ行くために準備をしよう、と買い物に誘ってもらった。奏になってからお友達と一緒に遊びに出かけるということが初めてで何だか緊張したけれど、希実夏さんは色々引っ張って行ってくれ、とても楽しい時間だった。
二人で着替えを買ったり、シャンプーなどの旅行グッズを買ったり、車で食べよう、とお菓子や飲み物を買ったり。そして歩き疲れてはお洒落なカフェに入り、ランチやケーキを食べ……、あぁ、なんて楽しいのかしら。
今まで「リディア」でいたときには自由に行動など出来なかった。好きな時間に好きなように行動出来るということはこんなにも楽しいことなのか、と信じられない気持ちでいた。
リディアでいたときにももっと自分のやりたいことをやれば良かったのかしら、と考えるが、あのときの自分にはそんな行動力はなかった。
唯一、あの魔術士さんに会いに行ったときだけ……、あのときだけは自分の意思で行動した。あれが唯一だなんて、と苦笑した。
希実夏さんと出かけた日はあまりに楽しく、名残惜しい気分になってしまった。
「楽しみだねー」
街中のベンチで休憩しながら身体を伸ばし、希実夏さんが笑顔で言った。
「はい!」
「フフ、奏ちゃん、キャンプ初めてなんだって?」
「は、はい、お恥ずかしながら……」
あまりに楽しみなのがバレたのかしら、恥ずかしくなってしまったわ。
「アハハ! 恥ずかしくなんかないわよ! 私だって一度くらいしか行ったことないし! 全部蒼汰に丸投げよ!」
希実夏さんは自信満々に言ったかと思うとニッと笑い、二人で顔を見合わせると……
「「プッ」」
二人ともアハハと声を上げて笑った。
夕方まで二人でぶらぶらと買い物をし、そしてバイトに向かうために希実夏さんと別れた。
バイトの準備を終え、店に出ると洸樹さんが聞いてくる。
「奏ちゃん、何か良いことでもあった? なんだか凄く楽しそうね」
「え、そ、そんなに顔に出てますか!?」
驚いて頬を両手で押さえた。それを見た洸樹さんが少し驚いた顔をしたかと思うとプッと吹き出す。
「フフ、バレバレよ? 物凄く嬉しそうで楽しそう、フフ」
「そ、そんな、恥ずかしい……」
あまりの恥ずかしさに顔が熱くなるのが分かった。うぅ、そんなにバレバレだなんて。
「あぁ、もしかしてキャンプのこと?」
「え、洸樹さん知ってるんですか?」
「フフ、えぇ。一哉に聞いたわ」
一哉さんに!! ということは仲直り出来たのね! 嬉しい!
そう思ったこともまたしても顔に出ていたようで、洸樹さんがとても嬉しそうに笑った。
「ありがとうね、奏ちゃん。一哉とちゃんと話せて仲直りしたわ」
「そ、そうなんですね! よ、良かったです……」
ぶわっと涙が溢れてしまった。
「え! えぇ!? 奏ちゃん!? ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」
「す、すびばせん……」
あまりにも号泣してしまい、まともに声が出ていなかった。な、なにしているのよ、私は! 私が泣いてどうするのよ! でも……でも、涙が止まらないんですぅ!
「すいません、嬉しくて……うぅ、ずびっ」
だ、駄目だわ……、みっともない!
「フフ、ありがとう、そんなに泣かないで。私が泣かせたみたいじゃない」
そう言い、洸樹さんは笑いながら頭を撫でた。
しばらくしてようやく落ち着き、店を開ける時間まで瞼を冷やしつつ、嬉しそうな洸樹さんの話を聞いた。
二人とも素直に自分の気持ちを言い合うと、お互い誤解ばかりだった、と洸樹さんは笑った。
「だから奏ちゃんも我慢しちゃ駄目よ? 溜め込んじゃ駄目。思うことがあれば口に出さないと。我慢して黙っていてもお互い誤解が生まれる。どんどんこじれていってしまうだけよ? 話しても嚙み合わないことがあるかもれないけれど、言わないと何も伝わらないし始まらないからね」
「って、私がそうだったから説得力ないんですけどね! でも! でも! 経験したからこその助言だからね! 私はもっと早くちゃんと話せば良かったって思ったから……」
フフッと洸樹さんは微笑んだ。
「はい」
私もそうなれるように頑張ろう……。自分の気持ちを素直に……。
「でね、今度キャンプに行くんでしょ? 私も来いって言われてね」
「え、一哉さんにですか?」
「えぇ、車出せって」
「へ?」
意味が分からず変な声が出てしまった。洸樹さんは苦笑しながらもどこか嬉しそうに話す。
「一哉にね、「お前車持ってただろ? 今度キャンプに行くから店閉めて、車出せ」って言われてね」
「あ、ハハハ、そうなんですね」
「もう! 勝手なんだから」
そう言いながらも洸樹さんは嬉しそうだった。二人が本当に仲直りしたんだと思えて心から嬉しかった。
「一哉さんが言っていた、レンタカーは任せろって洸樹さんのことだったんですね」
「レンタカーじゃないってのに、もう!」
洸樹さんと顔を見合わせ、二人で吹き出した。あぁ、本当に良かった。洸樹さんも一哉さんも楽しそうで。
蒼汰さんとは白皇様について図書館で調べたりしながら、情報共有したり、同じ授業を受けている女子に誘われランチを一緒にしたり、直之さんにも誘われ学食で蒼汰さんも含め三人でランチをしたり……、直之さんは何やらブツブツ言っていましたが……、そうこうしているうちに、いよいよキャンプの日となった。
全員の予定を合わせ、コテージは蒼汰さんが、レンタカーは一哉さんが予約をしてくれた。何から何まですいません、と思っていたけれど、お二人ともとても楽しそうに段取りをしてくれていた。
一哉さんには洸樹さんとどうなったのかは聞いていない。私が口を挟むことではないし、ここ最近ご機嫌な一哉さんの様子からして仲直り出来たのではないかしら、と期待している。
希実夏さんからはキャンプへ行くために準備をしよう、と買い物に誘ってもらった。奏になってからお友達と一緒に遊びに出かけるということが初めてで何だか緊張したけれど、希実夏さんは色々引っ張って行ってくれ、とても楽しい時間だった。
二人で着替えを買ったり、シャンプーなどの旅行グッズを買ったり、車で食べよう、とお菓子や飲み物を買ったり。そして歩き疲れてはお洒落なカフェに入り、ランチやケーキを食べ……、あぁ、なんて楽しいのかしら。
今まで「リディア」でいたときには自由に行動など出来なかった。好きな時間に好きなように行動出来るということはこんなにも楽しいことなのか、と信じられない気持ちでいた。
リディアでいたときにももっと自分のやりたいことをやれば良かったのかしら、と考えるが、あのときの自分にはそんな行動力はなかった。
唯一、あの魔術士さんに会いに行ったときだけ……、あのときだけは自分の意思で行動した。あれが唯一だなんて、と苦笑した。
希実夏さんと出かけた日はあまりに楽しく、名残惜しい気分になってしまった。
「楽しみだねー」
街中のベンチで休憩しながら身体を伸ばし、希実夏さんが笑顔で言った。
「はい!」
「フフ、奏ちゃん、キャンプ初めてなんだって?」
「は、はい、お恥ずかしながら……」
あまりに楽しみなのがバレたのかしら、恥ずかしくなってしまったわ。
「アハハ! 恥ずかしくなんかないわよ! 私だって一度くらいしか行ったことないし! 全部蒼汰に丸投げよ!」
希実夏さんは自信満々に言ったかと思うとニッと笑い、二人で顔を見合わせると……
「「プッ」」
二人ともアハハと声を上げて笑った。
夕方まで二人でぶらぶらと買い物をし、そしてバイトに向かうために希実夏さんと別れた。
バイトの準備を終え、店に出ると洸樹さんが聞いてくる。
「奏ちゃん、何か良いことでもあった? なんだか凄く楽しそうね」
「え、そ、そんなに顔に出てますか!?」
驚いて頬を両手で押さえた。それを見た洸樹さんが少し驚いた顔をしたかと思うとプッと吹き出す。
「フフ、バレバレよ? 物凄く嬉しそうで楽しそう、フフ」
「そ、そんな、恥ずかしい……」
あまりの恥ずかしさに顔が熱くなるのが分かった。うぅ、そんなにバレバレだなんて。
「あぁ、もしかしてキャンプのこと?」
「え、洸樹さん知ってるんですか?」
「フフ、えぇ。一哉に聞いたわ」
一哉さんに!! ということは仲直り出来たのね! 嬉しい!
そう思ったこともまたしても顔に出ていたようで、洸樹さんがとても嬉しそうに笑った。
「ありがとうね、奏ちゃん。一哉とちゃんと話せて仲直りしたわ」
「そ、そうなんですね! よ、良かったです……」
ぶわっと涙が溢れてしまった。
「え! えぇ!? 奏ちゃん!? ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」
「す、すびばせん……」
あまりにも号泣してしまい、まともに声が出ていなかった。な、なにしているのよ、私は! 私が泣いてどうするのよ! でも……でも、涙が止まらないんですぅ!
「すいません、嬉しくて……うぅ、ずびっ」
だ、駄目だわ……、みっともない!
「フフ、ありがとう、そんなに泣かないで。私が泣かせたみたいじゃない」
そう言い、洸樹さんは笑いながら頭を撫でた。
しばらくしてようやく落ち着き、店を開ける時間まで瞼を冷やしつつ、嬉しそうな洸樹さんの話を聞いた。
二人とも素直に自分の気持ちを言い合うと、お互い誤解ばかりだった、と洸樹さんは笑った。
「だから奏ちゃんも我慢しちゃ駄目よ? 溜め込んじゃ駄目。思うことがあれば口に出さないと。我慢して黙っていてもお互い誤解が生まれる。どんどんこじれていってしまうだけよ? 話しても嚙み合わないことがあるかもれないけれど、言わないと何も伝わらないし始まらないからね」
「って、私がそうだったから説得力ないんですけどね! でも! でも! 経験したからこその助言だからね! 私はもっと早くちゃんと話せば良かったって思ったから……」
フフッと洸樹さんは微笑んだ。
「はい」
私もそうなれるように頑張ろう……。自分の気持ちを素直に……。
「でね、今度キャンプに行くんでしょ? 私も来いって言われてね」
「え、一哉さんにですか?」
「えぇ、車出せって」
「へ?」
意味が分からず変な声が出てしまった。洸樹さんは苦笑しながらもどこか嬉しそうに話す。
「一哉にね、「お前車持ってただろ? 今度キャンプに行くから店閉めて、車出せ」って言われてね」
「あ、ハハハ、そうなんですね」
「もう! 勝手なんだから」
そう言いながらも洸樹さんは嬉しそうだった。二人が本当に仲直りしたんだと思えて心から嬉しかった。
「一哉さんが言っていた、レンタカーは任せろって洸樹さんのことだったんですね」
「レンタカーじゃないってのに、もう!」
洸樹さんと顔を見合わせ、二人で吹き出した。あぁ、本当に良かった。洸樹さんも一哉さんも楽しそうで。
蒼汰さんとは白皇様について図書館で調べたりしながら、情報共有したり、同じ授業を受けている女子に誘われランチを一緒にしたり、直之さんにも誘われ学食で蒼汰さんも含め三人でランチをしたり……、直之さんは何やらブツブツ言っていましたが……、そうこうしているうちに、いよいよキャンプの日となった。
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