「恋もお付き合いもまだいいかなって思ってるんです~」と言いながら婚約者を盗んでいった聖女には、そいつ以外のすべてを盗み返してさしあげますわ

松ノ木るな

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① オトコって、かよわい女子に弱いですよね

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 いつもと変わらない王立学院、学生食堂での昼下がり。各自の“職種ジョブ”に適したデザイナーズ制服に身を包む生徒たちが、和気あいあいと昼食をとっている。

 その一角で騒動の幕開けだ──。

「アネモネ、私は卒業試験実技・ダークレッドドラゴン討伐のパートナーを君ではなく、このミルアと出撃することにした」

 周囲はざわめいた。わざわざみんなの集まる学生食堂でそんな高らかに宣言するからだ。そのあなたの後ろにちょこんと隠れた聖魔ヒーラー女にそそのかされたのだろう。大勢の前で発表しなくては信じられないとかなんとか。

「アドニス。よろしいの? このパートナー契約“ダブル”を無効にするとは、私との婚約を破棄するも同然なのよ」

「我々は親同士が決めた許嫁。これを破談にしたことで両家から責苦を受けるのは覚悟の上だ」

 いやいやいや、その後ろの女がそこまで好きなわけないでしょ。ちょっと冷静になりなさいよ。

「6年間、ずっと君に言いそびれていたことがある」

「あら、何かしら」

「はっきり言って君は強すぎるんだ!」

 ああ、やっぱり薄々感じていたけれど、私への劣等感か。

 この学院には「“男のプライド”を傷つけられた婚約者の対処法」なんて講義ないから、どうしたらいいのかさっぱり分からないわ。

「そうですわ! アネモネ様はお強すぎます……女性なのに野蛮です!」

 あんたは黙らっしゃい! 散々私を「利用」して今その場に立ってるくせに!!

 私は大きくため息を吐いた。自身の長い赤髪をかき上げ、舐められないよう腕組みをし、刺すように婚約者、かつ我がクラスの級長アドニス・オルタを見た。

「剣士が強すぎて何が悪いの? あなたは雷魔法の使い手。分業できているではないの」

「完全に剣士ならともかく、君はいつも魔力依存武器“サンダーソード”を振り回しているではないか!」

 だって私、剣士と雷魔のハーフで魔法も使えるのだもの。魔法が腕力より強くなってしまったのは半分あなたのせいよ。


 ここルデスダーク王国は屈強な戦士・魔術師を多く抱えた、他国の侵略などモノともしない戦闘民族国家だ。牽制が効いていて国家間の戦争は起こりえないが、少し田舎にいけば人を糧とする魔物がわんさか巣食っている。その討伐パーティーを指揮するのはもちろん貴族階級である。

 この学院には、潜在能力を持つ選りすぐりの若者が国中から集まる。

 それらは入学時、剣・槍などの物理攻撃に長けた者のクラス、または攻撃魔法・回復魔法を扱う者のクラスに分かれる。

 私は国で有数の上位剣士を輩出したヴァレロ侯爵家の娘。剣の腕は同年代の中で誰にも引けを取らないと自負のあった私だが、魔法クラスを希望し入学した。なぜなら、国で有数の上位魔術師を輩出したオルタ侯爵家の嫡男アドニスと婚約済みで、彼を支えるのが婚約者としての責務であったから。

 ここで6年学び、このたび卒業の運びとなった。

 卒業に際して、この学院にはジンクスがある。「卒業試験でダブルを組み、無事合格して卒業した男女の間には永遠の愛が保証される」、というものだ。というか、卒業後、魔物討伐、遺跡発掘など職務上大いに関わり合うふたりの相性を確かめる試験でもあるのだ。暗黙の了解で“将来の相手”と組まなくてはいけない。

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