「恋もお付き合いもまだいいかなって思ってるんです~」と言いながら婚約者を盗んでいった聖女には、そいつ以外のすべてを盗み返してさしあげますわ

松ノ木るな

文字の大きさ
2 / 6

② えっ、デキなさすぎない??

しおりを挟む
「あくまで私のメインは剣豪ソードマスターの専用スキルを発動することで繰りだす剣技。サブスキルの雷で本職のあなたが負けるというのなら、それはあなたが恥じるべきことだわ」
「ぐっ」

 ちなみに彼が級長、私が副長。私はクラス運営においても、いつも彼を立ててきた。見物中の周りの者らからすればこれは、魔法クラス最高学年級長と副長のケンカなのである。

「私がアドニス様をこの聖なる力で精一杯お助けします! きっと合格しますわ! 私たちで力を合わせれば」
「ミルア……そうだな。大丈夫だ、力を合わせれば」

 可愛いな~~やっぱカノジョにするなら聖魔だよなぁ~とか言ってそうなアホヅラ。

 その子、3ヶ月前私に泣きついて来たんですよ。ここらで私の脳内思い出ビジョンを食堂前方の幕に投影したいわ。


 さかのぼること3ヶ月前、校内図書館にて。

「先パァイ! 課題提出が迫ってるんですぅ」
「……あなた誰?」

「魔法クラス4年に所属してまぁす! ミルア・ロネスと申しますっ。私、回復魔法ヒールだけは得意ですので、ご同伴いただけないでしょうかぁ?」

 今思えば面識のない学年2個上の、しかも副長である私にチョクで来れる根性は並大抵のモノではなかった。

「ヒールが得意なだけじゃ、4年を修了することは難しいのではないかしら……」

 まぁ私が助力することで、彼女に“気付き”が芽生えればね。後輩を導くのも先輩の役目でしょう。

 私は近場の森ダンジョンに彼女を連れていった。



「現れたわね! 先生が配置した練習用ボスモンスター!」
「私っ、後ろから先輩にヒールかけまくりますからっ! 心置きなくどうぞっ!」

「それじゃあなたの特訓にならな……ああっ向かってきたわ! 仕方ないわねっ、さくっといくわよ!! てやぁああ!」

「きゃぁ先輩かっこいぃ♡」

 巨大モンスターが洞窟内で倒れ泡を吹く。練習用モンスターだが凝った作りだ。

「はい、提出用のドロップアイテム」
「ありがとうございますぅ! もぉもぉアネモネ先輩がハーレム作るなら入りたいですぅ!」



 そして2ヶ月半前のある日。

「先パァイ! あたしぃ、追試受けなきゃいけなくってぇ……」
「追試はどこで?」
「カンブリア平原ですぅ。モンスター退治60匹なのですぅ……」
「夕方までに終わらせましょう」


 カァーカァー……? カラスが鳴いてるわね。

「せんぱぁい……もうカラスが鳴いてますよぉ」
 見りゃ分かるわ。

「はい、提出用モンスターのしっぽ60個……って、岩に座って何してるの?」
「ネイルが剝がれちゃって♪」
「……はい、60個」
「80個ですってばぁ~~。話聞いててくださいよぉ」
 60匹って言ったよ?

「……あなた何してるの?」
「ネイル塗ってます、見て分かりませんか?」
「いや、追試でコレ80個集めなきゃいけないんでしょ?」
「ヒールでモンスター倒せるわけないじゃないですかぁ! 先生ってば横暴すぎますぅ」
 いやあなたどうやって4年まで上がったの?



 2ヶ月前。

「せぇん輩ぃ。座学の宿題、困ってしまってぇ。ところで先輩は国の上層と戦力値魔力値の相関関係についてどういったご意見をお持ちです?」

「そうね。より強い戦力魔力を保持し、その力で人民を支配するのは資本主義、実力主義の世界でおかしいことだと思わないわ。ただ現状の世襲制には異を唱えざるを得ないわね。上位権力を持つ一族に生まれただけのボンクラなんて云々……であるからして……私が思うに……──というわけなの。まぁ私の改善案は理想論でしかないことも分かっているわ。でも一歩ずつ打開してゆかないとね」

「はいっ。そうですよね!」
「で、宿題がどうしたの?」
「あ、もういいです~~ではではぁ~~」



 1ヶ月前。

「先輩ぃぃ~~! 今日はちょっとやる気を出して課題を先取りしちゃいまぁす! カルディア砦に行きましょ~?」
「私、卒業制作の締め切り間際で忙しいのだけど……」
「気分転換ですよぉ~~」


**

「とりゃぁ!」
 ミルアは魔導士の基礎スキル“エナジーボルト”で、今までなら倒せなかったモンスターを倒した。

「……あなた前より魔力増したわね」
「えへへっ。頑張りましたぁ。2ヶ月に及ぶ先輩のご指導のおかげですぅ」

「なら、もう心配いらないわね。あなたも特定のパートナーとこういうのは行った方が、将来のためよ」
「特定のパートナーですか?」

「ええ、あなたもいいところのお嬢様だと思うけど、婚約者はいないの?」
「あたしぃ、そういうのまだいいと思ってるんですぅ。もっと自分の修行に専念したくてぇ……」

「う、うん、ご実家の方で急かされていなければ、あなたの自由だけれど」

「それにぃ、男の子のコトばーっかり考えてるのって~、私のクラスにもいるんですけどぉ、ちょっと……みっともないですよねぇ!?」

 ?? 男のことばかりって、そんなつもりで言ったのではないけど……そう聞こえてしまったのかしら?

「んー……なら、女性のパートナーでもいいんじゃない? 戦友として長く一緒にいられるような」

「女のコはやっぱり女のコ同士ですよねぇ~。考えておきまぁす!」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。 彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。 ――その役割が、突然奪われるまでは。 公の場で告げられた一方的な婚約破棄。 理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。 ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。 だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。 些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。 それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。 一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。 求められたのは、身分でも立場でもない。 彼女自身の能力だった。 婚約破棄から始まる、 静かで冷静な逆転劇。 王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、 やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。 -

『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』

鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」 王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。 感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、 彼女はただ――王宮を去った。 しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。 外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、 かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。 一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。 帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、 彼女は再び“判断する側”として歩み始める。 やがて明らかになるのは、 王国が失ったのは「婚約者」ではなく、 判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。 謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。 それでも―― 選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。 これは、 捨てられた令嬢が声を荒げることなく、 世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

私を捨てた婚約者へ――あなたのおかげで幸せです

有賀冬馬
恋愛
「役立たずは消えろ」 理不尽な理由で婚約を破棄された伯爵令嬢アンナ。 涙の底で彼女を救ったのは、かつて密かに想いを寄せてくれた完璧すぎる男性―― 名門貴族、セシル・グラスフィット。 美しさ、強さ、優しさ、すべてを兼ね備えた彼に愛され、 アンナはようやく本当の幸せを手に入れる。 そんな中、落ちぶれた元婚約者が復縁を迫ってくるけれど―― 心優しき令嬢が報われ、誰よりも愛される、ざまぁ&スカッと恋愛ファンタジー

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

ご愁傷様です~「冴えない女」と捨てられた私が、王妃になりました~

有賀冬馬
恋愛
「地味な君とは釣り合わない」――私は、婚約者の騎士エルマーにそう告げられ、婚約破棄された。病弱で目立たない私は、美しい妹と比べられ、家族からも冷遇されてきた。 居場所を失い、ひっそり暮らしていたある日、市場で助けた老人が、なんとこの国の若き国王陛下で!? 彼と私は密かに逢瀬を重ねるように。 「愚かな男には一生かかっても分かるまい。私は、彼女のような女性を誇りに思う」妃選びの場で告げられた国王陛下の一言に、貴族社会は騒然。

処理中です...