【完結】悪役を脱却したい白豚王子ですが、黒狼王子が見逃してくれません ~何故かめちゃくちゃ溺愛されてる!?~

胡蝶乃夢

文字の大きさ
42 / 127
本編

40.光り輝く砂糖と不穏な影

しおりを挟む
「…………第一王子? …………」

 誰かの声がして、僕は自分が呼ばれたのだと気付く。

「…………ぶ? ……ひ!? …………」

 僕がハッと我に返ると、目の前には食べ尽くし、食い荒らされたような惨状が広がっていた。

 部屋の扉の前には、こちらを見て全員が呆然と立ち尽くしている姿が見える。
 皆が立ち尽くす中、最初に声を上げ笑い出したのは宰相だった。

「……はは……やはり、卑しく汚らわしい第一王子は、どうしようもない白豚王子ですな……くくくく……皆、騙されていたんです……私が言った通りではないですか……くくくくく……なんて滑稽こっけいだ……」
「……これは……まさか、第一王子がやったんですか? 全部、食べてしまったんですか? ……」

 バニラ王子は部屋の惨状を見回して、信じ難いといった様子で僕に質問した。
 僕が食べてしまったスイーツは、バニラ王子が騎士達の為に用意したものだったのだろう。
 言い逃れができる筈もなく、ごくりと唾を飲み込み、なんの言葉も出てこないまま僕は頷く事しかできなかった。

「…………」

 騎士団員達の白い目が一斉に向けられ、僕は睨み付けられる。

「……やはり、第一王子は白豚王子でしかなかったのか……我々を揶揄って遊んでいたのか!?」
「俺たちはまんまと騙されていた訳か……なんて性悪な、白豚王子め!」
「見直していたのに、弄ばれていただけだったとは……馬鹿にしやがって、白豚王子が!」
「バニラ殿下の心遣いを台無しにして、何もかも踏み躙られた気分だ! ……なんて意地汚い、食い意地の張った暴食の豚だ!!」

 一時いっとき前まで、温かく感じられていた視線が、冷たく軽蔑するものへと変わってしまった。
 憎悪の罵声を浴びせられて、僕は竦み上がりぷるぷると震えてしまう。

「………………」

 おろおろと目を彷徨わせた僕は、無言のまま立ち尽くしていた騎士団長と目が合った。
 その目に浮かんでいたのは、怒りでも軽蔑の色でもなく、落胆と失望の色だった。

「……ひぅ……ご、ごめん……なさぃっ……」

 期待を裏切ってしまった罪悪感に堪えきれなくなり、僕は部屋から飛び出して逃げた。


 ◆


 僕は泣いた、大泣きした。

「バカバカバカ! 僕のバカアアアア!! 強制力のバカアアアアアアアア!!!」

 今更ながら、思い出してしまった。
 ゲームでも、バニラ王子が騎士達へと用意した菓子を白豚王子が奪い取り食べてしまうという、バニラ王子が語るちょっとした過去談があったのだ。
 僕は自分の不甲斐なさを憎み、謎の強制力を心底恨んだ。

「僕はもう己に打ち勝つまでスイーツを食べない! 絶対にスイーツを食べない!! スイーツ断ちをする!!!」

 その時、僕はスイーツ断ちをする事を強く強く決意したのだ。
 給仕係に置手紙をして、スイーツの一切を断った。
 甘い物の気配を少しでも察知したら、避けて逃げて回避した。

 もう、後ろめたくて騎士団の訓練を覗きに行く事もできない。
 もう、騎士団に交じって訓練する事もできない。
 そう思ったら、また涙が滲んでくる。
 涙が零れると余計に惨めになるから、僕は必死に堪えていた。

 そんな風にスイーツ断ちをしようと決意して二日が過ぎた。
 僕はなんとかスイーツ断ちができている、そう思っていた。


 ◆


 三日目の夜、僕はハッと我に返る。

「……ぶひっ!? ……」

 そこは、僕の知らないどこかの部屋だった。
 貯蔵庫のようなその場所で、僕は地べたに座り込み瓶に手を突っ込んでいた。
 瓶にはキラキラと光り輝く粉の粒が僅かに残っていて、同じように僕の手の平にもキラキラする粉が付いていた。

 キラキラを目にすると、僕は反射的にペロリとそれを舐めてしまう。
 甘くて美味しい甘味料、それは砂糖のようだった。
 そして、僕の周りには空になった瓶が大量に散らばっていた。

 スイーツ断ちできてると思い込んでいた僕は、スンと遠い目をしてしまう。
 僕は我慢すれば我慢するほど、夢遊病のように夜な夜な歩き回り、スイーツの原料である砂糖にまで手を出して食べてしまっていたのだ。
 何となくそんな気はしていた――それまで食べていた大量のスイーツを全く食べなくなり、ほとんど物を口にしなくなっていたのに、僕のお腹は一向に変化する様子が無かったのだから。

 がっかりと肩を落とし、僕はとぼとぼと、否、ぽよぽよと自分の部屋へと帰って行った。


 ◆


 白豚王子が隠し部屋のようなその場所から出て行き、しばらく経った頃、何者かがその部屋へと訪れた。
 そして、白豚王子が食べ尽くしてしまった瓶の中身を見て、その者は舌打ちし怒りに打ち震える。

「……ちっ、白豚王子め! ……毎度、毎度、邪魔ばかりしてくれる!!」

 悪態をつき、苛立った勢いのまま瓶を蹴り散らかし、踏みつけて粉々に砕いていく。

「……何故、いつも、いつも、上手くいかない!? ……早々に始末できる筈だったのに! …………くっ……だが、次こそは逃がさん、必ず始末してくれる!! ……くくく、くくくくく……」

 その者は不気味な笑い声を響かせて、その部屋にある物の全てを消し去る。
 部屋自体をも魔法で消滅させて、その者は立ち去って行った。


 ◆
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】星に焦がれて

白(しろ)
BL
気付いたら八年間囲われてた話、する? わんこ執着攻め×鈍感受け 「お、前、いつから…?」 「最初からだよ。初めて見た時から俺はお前のことが好きだった」  僕、アルデバラン・スタクにはどうしても敵わない男がいた。  家柄も、センスも、才能も、全てを持って生まれてきた天才、シリウス・ルーヴだ。  僕たちは十歳の頃王立の魔法学園で出会った。  シリウスは天才だ。だけど性格は無鉄砲で無計画で大雑把でとにかく甘えた、それに加えて我儘と来た。それに比べて僕は冷静で落ち着いていて、体よりも先に頭が働くタイプだったから気が付けば周りの大人たちの策略にはめられてシリウスの世話係を任されることになっていた。  二人組を作る時も、食事の時も、部屋だって同じのまま十八で学園を卒業する年まで僕たちは常に一緒に居て──そしてそれは就職先でも同じだった。  配属された辺境の地でも僕はシリウスの世話を任され、日々を慌ただしく過ごしていたそんなある日、国境の森に魔物が発生した。それを掃討すべく現場に向かうと何やら魔物の様子がおかしいことに気が付く。  その原因を突き止めたシリウスが掃討に当たったのだが、魔物の攻撃を受けてしまい重傷を負ってしまう。  初めて見るシリウスの姿に僕は動揺し、どうしようもなく不安だった。目を覚ますまでの間何をしていていも気になっていた男が三日振りに目を覚ました時、異変が起きた。 「…シリウス?」 「アルはさ、優しいから」  背中はベッドに押し付けられて、目の前には見たことが無い顔をしたシリウスがいた。  いつだって一等星のように煌めいていた瞳が、仄暗い熱で潤んでいた。とても友人に向ける目では、声では無かった。 「──俺のこと拒めないでしょ?」  おりてきた熱を拒む術を、僕は持っていなかった。  その日を境に、僕たちの関係は変わった。でも、僕にはどうしてシリウスがそんなことをしたのかがわからなかった。    これは気付かないうちに八年間囲われて、向けられている愛の大きさに気付かないまますったもんだする二人のお話。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

処理中です...