【完結】悪役を脱却したい白豚王子ですが、黒狼王子が見逃してくれません ~何故かめちゃくちゃ溺愛されてる!?~

胡蝶乃夢

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本編

101.黒狼王子の出立と白豚王子の祈願

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 翌日、応援部隊である魔法騎士団の支度が整い、黒狼王子一行及び獣人兵は帰国する為、王城を出立しようとしていた。

 要人が見送りに立ち会う中、黒狼王子は辺りを見回して白豚王子の姿を探したが、見つける事はできなかった。
 代わりに、久しく顔を見せていなかった国王が姿を現し、体調が芳しくない様子でありながらも見送りに立ち会っていた。

 黒狼王子は国王へと礼を執り、謝辞を述べる。

「急な申し出にも関わらず、迅速な対応と協力、誠に感謝する」
「隣国は同盟国にとって防衛の要でもある。集中攻撃を受けているとなれば、事態は急を要する。支援物資についても出来る限り早急に送付しよう」
「それは有難い、心遣い痛み入る」

 国王への挨拶を終えると、続いて宰相と第二王子も黒狼王子に言葉を送る。

「道中も敵対兵が潜伏していないとも限りませんからな、重々お気を付け下さい」
「どうか、ご無事で……ご武運をお祈りしています」
「ああ、有難う」

 黒狼王子は礼を言うと、バニラ王子に声をかけて近付いて行く。

「第二王子、一つ話したい事がある」
「はい、なんでしょう?」

 黒狼王子はバニラ王子の側まで行き、耳元に屈み小声で話す。

「第一王子は悪役を演じているだけで、悪辣な者ではない」

 バニラ王子は黒狼王子の言葉に思案して、耳を傾けて聞き入る。

「真に悪辣な者は善良な顔をしている。悪辣な者達の巧みな話術に惑わされてはいけない」

 黒狼王子はバニラ王子の目を見据えて、最後の忠告をする。


「本当に守るべきものは何か、信じるべきものは誰か、その目で見極めるんだ」


 バニラ王子は暫し思案して、強い意志を持った眼差しで頷き返した。

「……はい、分かりました」

 黒狼王子はバニラ王子の返事を聞き、微笑んで頷いた。

 正義感の強いバニラ王子ならば、きっと白豚王子の誤解さえ解ければ味方になってくれる筈だと確信し、黒狼王子はバニラ王子に託したのだ。


「これより、本国ショコラ・ランド王国へ帰還する。出立だ!」


 黒狼王子の号令と共に、一行と獣人兵並びに応援部隊は王城を出立した。


 ◆


 早馬に騎乗する黒狼王子一行と支援物資の荷馬車が、王都のはずれにある関所へと到着する。
 開門の手続きを終え、黒狼王子一行が王都を出て行こうとしたところで――

「王子様ーーーー! 待ってーーーー!!」

 ――大声で呼び止められ、黒狼王子は振り返り声の方へ視線を向ける。
 すると、そこには荷物を持って見送りに駆け付けた難民達の姿があり、息を切らせながら言う。

「はぁ、はぁ……良かった、なんとか間に合ったようじゃな」
「王子様、これ持って行ってくださいね。貧民街の人達と一緒に用意したんですよ」
「すごく元気になれる魔法の食べ物なんだよ。これで悪い奴等をやっつけてね!」

 難民達が差し出した荷物は、貴重な食料物資が沢山持ち寄せられた物だった。
 祖国の困窮する状況を少しでも改善できればと、余裕がある訳ではないのに難民達は自ら差し出してくれたのだ。

 そんな難民達の献身を無下にする事などできる筈もなく、黒狼王子は躊躇いつつも受け取る事にした。

「……そうか、では有り難く頂戴しよう」

 難民達が生活に困苦しないようにと黒狼王子は願うばかりで、早々に紛争を終わらせねばと強く決意し宣言する。

「必ず祖国を救い、紛争を終結させて迎えに来る。それまでは、どうか耐えてくれ」

 難民達は黒狼王子の力強い言葉を聞き、笑顔を向け励ましの言葉を送る。

「ここまで連れて来てもらったんですから、十分ですよ。あたし達は大丈夫ですからねぇ」
「ここで儂等も祖国の為にできる事を頑張りますじゃ。じゃから、王子様も頑張ってくだされ」
「美味しい食べ物、たぁーっくさん作って送るからね!」

 少し離れた場所で見送りを見守っていた貧民達が、黒狼王子に任せろと言うように頷いて見せる。

 そして、黒狼王子の目の前に難民の子供が一人歩いて来て、黒い何かを差し出して言う。

「コレ、そっくりさんから王子様にって、渡して欲しいって頼まれたの。はい!」
「そっくりさんから? 有難う……」

 白豚王子から贈られた何かを黒狼王子は受け取り、布状のそれを広げて見る。
 黒狼王子が目を見開き刮目するそれは、黒い旗だったのだ。

(ああ、どんなに離れていても、俺の真意は共に在り続ける。そう、満月に誓った)

 強い意志を瞳に宿らせ、黒狼王子は黒い旗を高々と掲げた。

 風に靡く黒い旗には、金色の満月を背にする勇猛な狼の影が描かれていた。
 それは、まるで満月に誓った想いを表しているかのように、または、国旗にも匹敵するほどの黒狼王子ダークの類稀なる武勇を予期し称えているかのようにも見えた。

 黒狼王子は黒い旗を部隊の旗として掲げ、本国へと向かい前進していった。



 遠く離れた場所からは、白豚王子がその光景を見守っていた。
 戦地となる隣国へ向かう黒狼王子を見送りながら、白豚王子は手を組み黒狼王子達の無事を一身に祈っていたのだ。


 ◆
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